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 南側(L4-S)では、他の側線に比較してサンゴが多い。また、水深が3〜5mと比較的深く、波浪の影響が小さいため、やや大型のサンゴの瓦礫に混じって砂も多い。地形が複雑なため海底から突出した岩礁上にはサンゴも着生しており、被度も他の側線に比べて高い。
 イボハダハナヤサイサンゴ(Pocilloporaverrucosa)、ハナヤサイサンゴ(P. damicornis)コブハマサンゴ(Porites lutea)、キクメイシ科のフカトゲキクメイシ(Cyphastrea serailia)、ホシキクメイシ(Favia stelligera)、コモンキクメイシ(Goniastrea retiformis)、ウスチャキクメイシ(F. pallida)、ナガレサンゴ(Leptoria phrygia)およびミドリイシ科(Acropola sp.)がサンゴ瓦や砂で覆われないような高さの岩盤上に分布していた。
 今回の調査の目的の一つに、1998年に世界的に発生した白化現象の影響を把握することがあった。これについては、よく分からないのが結論である。
 ハマサンゴを除く大型のサンゴは見られなく、ミドリイシは総じて小型の群体である。写真11を見ても大型のミドリイシは死んでいる。このことから可能性としては、ミドリイシが白化の影響を受け、現在は回復途中なのかもしれない。
 しかし、旧建設省の調査でも、この海域のサンゴ群体は小型のものが多いと指摘していることから、このテーブル状のサンゴは寿命で死んだもので、この島は物理的外力が大きいので、なかなか大型のミドリイシは成長しにくいのかもしれない。図5と図7の比較から、少なくとも、過去のサンゴの分布に比べて大規模に衰退しているところは見られない。
 
写真10
L4-Sでの調査状況
 
 
写真11
L4-S付近はサンゴが多い。クシハダミドリイシと見られる長径約2mのテーブル状サンゴがいくつか見られたが、死んだ群体であった
 
 
写真12
L4-S付近には長径約2mのハマサンゴも確認された
 
3−2.底質分布
 L4ラインやL6ラインの調査測線において、岩盤が突出した場所ではサンゴが分布し、平坦で比較的平滑な岩礁が続く海底では、サンゴ瓦礫や砂は薄く堆積している程度で層厚は数cm以下と薄い。このような海底では、局所的に窪んだ場所や岩礁の陰の部分にサンゴ瓦礫や砂が堆積していた。
 サンゴのライン調査とともに、3ラインから砂や瓦礫を各2サンプル採取した。また、北小島の東側のテトラポッドの周りにはサンゴ瓦礫が堆積していたので、これも採取した。これらの底質の粒径加積曲線を図9に示す。
 
図9 L4-N、C、Sの底質の粒径加積曲線
 
No.1(L4-N) D50=2.00mm
 
No.2(L4-N) D50=1.43mm
 
No.3(L4-C) D50=1.10mm
 
No.4(L4-C) D50=0.80mm
 
No.5(L4−S) D50=0.96mm
 
No.6(L4-S) D50=0.70mm
 
 各図には中央粒径D50を示したが、北の位置ほど粒径が大きく、南になるにつれて中央粒径が小さくなる傾向がある。やはり、北側からの波浪の侵入による底質移動が生じ、北側ほど流動が大きいので、中央粒径が大きくなるものと考えられる。
 北小島の東側に堆積していたサンゴ瓦礫の粒径加積曲線(図10)を見ると2mm以下の砂はなく、中央粒径は9.97mmと大きい。これから、北小島周辺では波浪の影響が非常に強く、砂はほとんど堆積できないものと考えられる。
 
図10 北小島に堆積していたサンゴ瓦礫の粒径加積曲
北小島の堆積物 D50=9.97mm







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