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3 分析器の校正に使用するガス
 すべての校正ガスについて、製造者が推奨する保存期間を超えていないことの確認を行う。
3.1 純ガス
 試験台における計測に使用する各々の純ガスは、下記に示す不純物の制限値に適合すること。
(1)純窒素(不純物≦1 ppm C, ≦1 ppm CO, ≦400 ppm CO2, ≦0.1ppm NO)
(2)純酸素(純度>99.5% 容積O2
(3)水素・ヘリウム混合ガス(40±2%水素、平衡ヘリウム)、(不純物≦1 ppm C, ≦400 ppm CO)
(4)純合成空気(不純物≦1 ppm C, ≦1 ppm CO, ≦400 ppm CO2, ≦0.1ppm NO)、(酸素含有量18-21%体積)
 
3.2 校正ガス及びスパンガス
1)校正ガス及びスパンガスは、下記の化学成分をもつ混合ガスであること。なお、その他のガスの組み合わせであっても、相互に反応しないことが確認される場合には使用して差し支えない。
(1)CO及び純窒素
(2)NOx及び純窒素(この校正ガスに含まれるNO2の量は、NO含有率の5%を超えてはならない。)
(3)O2及び純窒素
(4)CO2及び純窒素
2)校正ガス及びスパンガスの真の濃度は、呼び値の±2%以内であること。なお、ガスの濃度は、体積ベース(体積百分率又は体積ppm)で示されること。
3)ガス分割装置を使用して校正ガス及びスパンガスを得る場合、当該装置の精度は希釈された校正ガスの濃度が±2%以内となるような精度であること。
 
4 分析器の校正
 各分析器への校正ガスの導入により得られる校正曲線を用いて、当該分析器が適切に校正されていることを確認すること。
4.1 校正間隔
 排気ガスの計測に使用する分析器は、計測時において3ヶ月以内、又は、校正に影響を及ぼすような修理又は改造を行った場合に校正されていること。
4.2 校正の準備
1)漏れ試験
 排気ガス系統の漏れ試験は、サンプリングプローブを系統から外した状態で行うこととし、真空側の最大許容漏れ率は使用時流量の0.5%以内であること。
2)慣らし時間
 慣らし時間は分析器製造者の推奨に従うこととするが、特に指定がない場合には最低2時間とすること。
3)NOx変換器効率の試験
 NO2をNOに変換するために使用する変換器については、NOx分析器の校正前に、以下の図に示す試験装置(別紙4の3(4)参照)及び以下に示す手順に従った試験を行うこと。
(1)試験条件
 CLD及びHCLDは、製造者の仕様書に従い、ゼロガス及びスパンガスを使って、通常使用される作動範囲で校正を行い、この時の指示濃度を記録すること。校正ガスのNO濃度は作動範囲の約80%とし、又、NO2濃度はNO濃度の5%未満とすること。なお、本工程の間は、NOx分析器をNOモードとし、校正ガスが変換器を通らないようにすること。
(2)試験の手順
ア. 酸素の付加
 上記(1)に示す校正ガスの指示濃度より約20%少ない濃度とした酸素又は合成空気を、試験装置のT型管を経由して連続的に付加した時の指示濃度を“c”として記録する。なお、本工程の間は、分析器をNOモードとし、オゾン発生器を不作動状態とすること。
イ. オゾン発生器の作動
 次に、オゾン発生器を作動させ、NO濃度を上記(1)に示す校正ガスの濃度の約20%まで(最小10%)下げるのに十分なオゾンを発生した時の指示濃度を“d”として記録する。なお、本工程の間は、分析器をNOモードとすること。
ウ. NOxモード
 次に、NO分析器をNOxモードに切り替え、混合ガス(NO, NO2, O2及びN2で構成)が変換器を通るようにした時の指示濃度を“a”として記録する。なお、本工程の間は、分析器をNOxモードとすること。
エ. オゾン発生器の不作動
 次に、オゾン発生器を不作動とする。上記ウ. に示す混合ガスが変換器を通って分析器に入るようにした時の指示濃度を“b”として記録する。なお、本工程の間は、分析器をNOxモードとすること。
オ. NOモード
 最後に、オゾン発生器を不作動のままNOモードに切り替え、酸素又は合成空気も遮断した時のNOxの指示濃度は、上記(1)によって計測した濃度との偏差が±5%以下であること。なお、本工程の間は、分析器を、NOxモードとすること。
(3)NOx変換機効率の算出
 NOx変換器の効率は次式によって算出することとし、その効率は90%以上であること。
 
 
 ただし、a = 上記ウ. によるNOx濃度
   b = 上記エ. によるNOx濃度
   c = 上記ア. によるNO濃度
   d = 上記イ. によるNO濃度
 
<参考>分析器を最も一般的な範囲にした状態で、NOx変換器が上記(1)により80%から20%まで下げることができない場合、減少できる最高範囲を使用しなければならない。
 
図 NO2変換器効率の試験装置の概略図
 
4.3 校正の手順
1)純合成空気(又は窒素)を使用し、CO、CO2、 NOx及びO2分析器の零点設定を行うこと。
2)適切な校正ガスを分析器に導入しその計測結果から、以下に従って校正曲線を確定すること。なお、使用する校正ガスは、計測範囲の最大目盛りの80%より大きい呼び値をもつゼロガス及びスパンガスを使用すること。また、校正範囲は、通常使用されるすべての計測範囲とする。
(1)校正曲線は、できるだけ均等な間隔にした5点以上の校正点(零点を除く)により確定すること。なお、校正点の数(零点を含む)は、計算結果の多項式の次数が3より大きい場合には、その次数に2を足した数以上とすること。また、最大呼び濃度の校正点は、最大目盛りの90%以上であること。
(2)校正曲線は、最小自乗法で計算すること。
(3)校正曲線の許容偏差は、零点を除く各校正点の呼び値から±2%以内であること。また、零点の場合には、最大目盛りの±1%以内であること。
(4)上記(1)から(3)の規定にかかわらず、最大目盛りの15%未満の校正を行う場合には、校正点の50%が最大目盛りの10%未満になるように配置された10点以上の校正点(零点を除く)により、校正曲線を確定すること。また、校正曲線の許容偏差は、零点を除く各校正点の呼び値から±4%以内であることとし、零点の場合には、最大目盛りの±1%以内であること。
(5)上記(1)から(4)の規定にかかわらず、例えば、コンピュータその他の方法により本項の規定による手順と同等以上の精度で校正曲線の確定ができると船舶検査官が判断する場合には、当該方法の使用を認めて差し支えない。また、校正曲線の確定については、すべての校正点のうちの2点の許容偏差が±4%以内である場合には、当該校正データの修正を認めて差し支えない。
3)分析器の校正が適切に行われたことを確認するために、校正曲線及び校正点の情報のうち、特に以下の特性についての確認を行う。
(1)計測範囲
(2)感度
(3)校正の実施日
 
4.4 CO、CO2、NOx及びO2分析器の干渉の影響に対する補正
 分析器を最初に使用する前、及び大きな稼働間隔の後には、以下に規定する各分析器のクエンチチェックを行うこと。
<参考>
 CO、CO2、NOx及びO2の各排気ガス成分の濃度分析において、分析対象のガス成分以外のガス成分が計測値に影響を与えることがある。このような状態は干渉(クエンチ)と呼ばれ、クエンチは可能な限り低く抑えなければならない。
1)CO分析器のクエンチチェック
 CO分析器への干渉に対しては、水及びCO2を考慮する必要がある。従って、試験中に使用する最大作動範囲の最大目盛りの80から100%の濃度のCO2スパンガスは、室温で水中に泡排出し、かつ、分析器の反応を記録する。分析器は、300ppm以上の範囲については、最大目盛りの1%以下とし、又、300ppm未満の範囲については3ppm以下とすること。
 
2)NOx分析器のクエンチチェック
 CLD(及びHCLD)分析器への干渉に対しては、CO2と水蒸気を考慮する必要がある。これらのガスに対するクエンチ反応はその濃度に比例する。
I. CO2によるクエンチチェック
(1)チェックの手順
ア. 最大作動範囲の最大目盛りの80から100%の濃度をもつCO2スパンガスは、NDIR分析器に通し、そのCO2値を“A”として記録する。
イ. 次にそのガスをNOスパンガスでほぼ50%に希釈し、NDIR及びCLD(HCLD)に通し、CO2及びNOの値を、それぞれ“B”及び“C”として記録する。
ウ. 次に、CO2を遮断し、NOスパンガスだけをCLD(HCLD)に通し、NO値を“D”として記録する。
(2)クエンチの算出
 クエンチは次式によって算出することとし、この値は最大目盛りの3%以下であること。
 
 
 ここで、A = NDIRで計測した希釈しないCO2濃度(%)
    B = NDIRで計測した希釈CO2の濃度(%)
    C = CLD(HCLD)で計測した希釈NOの濃度(ppm)
    D = CLD(HCLD)で計測した希釈しないNO濃度(ppm)
 
(3)動的な混合や配合のような、CO2及びNOスパンガス値の希釈及びクエンチの代替方法については、その内容が適当であると船舶検査官が判断する場合には、当該方法の使用を認めて差し支えない。


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