8.4 オートトリガーワイヤロープのからみについて
現状品に対するオートトリガーワイヤロープの取り回し方法は大きく3種類に分類できる。(表10参照)また、ロープの絡みに対して現在取られている対策の概要を同表に示す。
8.4.1 確認方法
試験用救命艇を用いて、種類A及びBについて、ロープのからむ可能性及び防止対策の効果等を観察する。また、種類Cとした場合のメリット、デメリットを検討する。
8.4.2 検討結果
試験用救命艇の船首部及び船尾部にオートトリガーワイヤロープ用のラッシングガイドが取り付けられており、各々の場所で、先端にリンクを付けたワイヤロープを滑らせて、絡む可能性があるかどうかを観察した。下から外れるタイプ(A)及び上から外れるタイプ(B)共に、ラッシングガイドが有効に働き、絡むことなく外れる状況が確認された。但し、船首部及び船尾部共に、リンクが離脱フックの付近を通過するため、リンクの形状、大きさによっては絡む危険性がないとはいえない状況と考えられる。
その観点から見ると、タイプCは離脱フックとの干渉が少なく、絡む可能性は低いと考えられる。但し、タイプCの場合は、艇体の重心付近の1点で押さえる構造のため、タイプA及びBに比べて、艇体を固定する力は劣ると考えられる。
表10 オートトリガーワイヤロープのからみ
種類 |
取り回し方法 |
からみの可能性 |
からみ防止対策 |
A |
艇体の前後部ハッチ付近2カ所で固縛、下から外れるタイプ。 |
ラッシングガイドがハッチ上部左右、船側及び船底部にあり、外れる時に先端リンクが引っ掛かる。
離脱フックのリンクストッパーに先端リンクが引っ掛かる。 |
(1)ラッシングガイドの形状
(2)先端リンクの小型化
(3)先端リンクの固縛
(4)リンクストッパーの形状 |
B |
艇体の前後部ハッチ付近2カ所で固縛、上から外れるタイプ。 |
ラッシングガイドがハッチ上部左右、船側及び船底部にあり、外れる時に先端リンクが引っ掛かる。
離脱フックのリンクストッパーに先端リンクが引っ掛かる。 |
(1)ラッシングガイドの形状
(2)先端リンクの小型化
(3)先端リンクの固縛
(4)リンクストッパーの形状 |
C |
艇体の前後端部にボビンを設け、固縛 |
ボビンに先端アイ(Hard eye)が引っ掛かる。 |
(1)先端アイの大きさ変更 |
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8.5.1 基本概念の検討
救命艇の進水・回収作業全体を考えた場合、最も困難で危険を伴うと考えられる海上における回収作業について、作業をより容易にすると考えられる離脱・回収機構について検討した。
水面に浮遊する物体と本船とを連結する場合、波による水面の上下と船体のローリングやピッチングによる相対水位の変化を考慮する必要がある。通常の2点吊り救命艇の海上におけるフック連結作業が困難な理由はこの点にある。また、高速救助艇やミランダ式ダビット等の相対水位の変化に対応する特殊な機構を備えている場合ですら、作業に困難や危険が生じている理由は、離脱及び回収用フックと本船からのリンクを1カ所または2カ所のピンポイントで合わせる必要があるためと考えられる。(1)
ここで検討した回収機構は、相対水位の変化をフロートによる海面浮遊で上下運動を吸収すると共に、本船からのリンクをピンポイントで合わせるのではなく、フレーム内に操船すればガイドに従って連結される構造であり、底面にスリングベルトを備え、フレーム内に入った救命艇(救助艇)をすくい上げるものである。
8.5.2 基本構造の検討
現在の2点吊りダビットの使用を想定し、救命艇の前後2カ所から吊り上げる構造とする。フレームは浮力体を有し、海面上に浮遊するため、ワイヤーがたるんだ時の絡みを防止するため、フレーム上部の屋根に吊り上げ部を設ける。可能であれば、ワイヤーのたるみを吸収する急速巻き取り装置の付いたダビットを使用することが望ましい。
フレームの両側面に円筒形フロートを垂直に配置し、自由に回転させることにより、救命艇がフレームに出入りする際のガイドローラーの役目を果たす。
船首部1カ所に離脱フックを設け、対応するフレーム前端のリンクと結合及び離脱するものとする。フレーム式離脱・回収装置モックアップの概要を図5に示す。
8.5.3 進水・回収模擬試験
(1)確認方法
フレーム型離脱・回収装置モックアップを作成し、海上で、模擬的に救命艇の進水及び回収作業を行い、作業の状況をビデオ記録した。
(2)試験結果
試験場所が港内であるため、波による影響はみられなかったが、スムーズな進水及び回収状況が確認された。今回は概念的なモックアップを使用した試験であり、このまま実用性を目的としたものではないが、特に回収の問題を解決する可能性をもつ新たな機構が実現可能であることの一例として提案した。試験の状況を写真5に示す。
参考文献
(1)ミランダ式ダビットの荒天時揚収機能の向上に関する調査研究、海上保安庁装備技術部船舶課
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図5 フレーム式離脱・回収装置の概要
(拡大画面:71KB)
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写真5 フレーム式離脱・回収装置
降下状況
着水直前の状況
進水・離脱状況
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