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8.3 救命艇降下時の視界の改善及び降下高さの表示等
 救命艇で降下進水時にどのくらい降下したかがわからない。また、あとどのくらいで着水するのかが知りたいとの意見に対して、下記に示すように、窓を増やして視界を広げた場合や降下した距離を表示する機構を検討し、降下試験を実施した。
a. コクピット計器盤の穴開け及び前部ハッチの透明化による前方視界、コクピット側面窓による視界の拡大(写真2及び写真3に示す)
b. ダビット吊り索シーブの回転数をマイクロスイッチで感知してコクピットに表示する機構(図4及び写真4に示す)
 
8.3.1 試験方法
 各被験者が乗艇した救命艇をクレーンで吊り上げ、水面上を約2m上下させた時の下方視界及び降下距離の感覚についてアンケートを行う。
 試験の順序は、(1)現状のままでの吊り上げ、降下、(2)前方及び側面の窓を利用して、吊り上げ、降下、(3)距離センサー及び前方及び側面の窓を利用して、吊り上げ、降下とする。
 被験者は救命艇による進水作業経験者2名、未経験者5名の計8名で実施した。
 
8.3.2 試験結果
 アンケート結果を表9に示す。操縦席から見て、水面からどのくらいの高さにいるかどうかについては、実際の降下経験がないと単に視界を少し広げた程度では効果はないようである。但し、前方や側面に窓を設けることにより、他の乗員がのぞくことができて有効との指摘があった。
 距離センサーについては、その効果はある程度確認されたが、マイクロスイッチ等の電気部品をシーブに恒久的に取り付けることは、耐久性等に問題が生じる可能性があることが指摘された。実行上、より単純な方法により同様な機能を実現する機構を検討することが望ましい。
 
図4 シーブ回転センサーの概要
 
写真2 コクピットの計器板を通しての前方視界
 
写真3 コクピット側面窓
 
写真4 降下距離センサー
 
シーブに取り付けられたマイクロスイッチ
 
操縦席に置かれた表示部
 
表9 視界の改善アンケート結果
質問内容 回答 
進水未経験者グループ(5名) 進水経験者グループ(2名)
1.進水作業の経験 経験がない:5 操縦席で進水:1
操縦席以外で進水:1
2.現状品による視界 水面からの高さがまったくわからない:5 水面からの高さがまったくわからない:1
水面との位置がだいたいわかる:1
3.前方、側方の窓による視界 水面との位置がだいたいわかる:4
経験を積めば、だいたいわかる感じがする:1
水面からの高さがまったくわからない:1
水面との位置がだいたいわかる:1
4.距離センサーについて 降下する感覚が良くわからない:1
降下する感覚が良くわかる:3
距離センサーは有った方がよい:1
5.視界試験の感想
1. 窓は有ったほうが分かり易いと思う。
2. 実際の降下速度より遅い、せめて前方、側方の窓は必要
3. 水面からの高さは経験がないとまったくわからない。側面の窓は、操縦者以外の人でも確認できるので必要
4. 側方の窓からは距離感覚がわからない。前方窓のほうが分かり易い。操縦者の判断だけでなく、同乗者の合図でも良いかもしれない。
1. 前方、側方の窓の有り無し共に、海面位置がわからない。
着水するとわかる。
2.水面上1mより上がると良くわからない。


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