8.2.2 試験方法
救命艇の離脱装置について、現在使用されている代表的な離脱装置(現用型)及び改良された離脱装置(改良型)の各モックアップを作成し、被験者による操作実験を行うことにより操作状況を比較した。試験は平成15年12月15日及び平成17年2月7日の2回にわたり(株)信貴造船所(大阪府堺市石津西町2-1)において実施した。
(1)現用型離脱装置を用いた操作試験
平成15年度に、現在使用されている離脱フック(SRS-37)及び操作ハンドルを陸上に設置し、3名1チームとしてA、B2チームの参加者により、オフロード離脱、オンロード離脱及びフックリセット操作を行った。試験参加者はいずれも救命艇の操作に熟練していないものとし、試験開始前に操作マニュアルを読んだ後に実施した。1チームの3名は操舵席、前部フック部及び後部フック部に各1名を配置して行い、各々役割を交代しながら3回繰り返して行った。この間、各操作の状況をビデオ記録した。また、試験終了後、操作の分かり易さ及び操作し易さに関するアンケート調査を行った。
(2)改良型離脱装置を用いた操作試験
平成15、16年度の2年度にわたり、改良された離脱フック及び操作ハンドルを組み込んだ救命艇を水上に浮かべ、3名1チームとしてA、B2チームの参加者により、オフロード離脱、オンロード離脱及びフックリセット操作を行った。参加者及び実施方法は(1)と同様とした。
平成16年度は、平成15年度に作成した離脱装置(改良品)について、さらに以下の改善を行った後、未経験者グループ3名と経験者グループ3名の計6名について、操作試験を行った。改善個所を写真1に示す。
(1)安全ピンを入れる穴の分かり易い表示(緑色のシール貼り等)
(2)インターロックレバー保護カバーのロック位置変更(見易い手前側に移動)
(3)離脱フックリセットレバーの操作方向の表示(矢印シール貼り等)
(4)離脱フック引き起こし用手掛けの形状改善(引っかかりを防止する形状)
(5)操作マニュアルの修正
8.2.3 試験結果
(1)現用型離脱装置を用いた操作試験
離脱操作について、安全ピン及びインターロックレバーが操作者から見えない側に位置しているため、それらの操作を手探り状態で行うことになり、操作に手間取る状況が観察された。また、安全ピンを回転してから抜くという操作について、アンケート調査において、少しわかりにくい(6名中4名)、少し操作しにくい(6名中4名)との回答があった。さらに操作対象が見えないことは問題であるとの指摘もなされている。
リセット操作について、前後フックをリセットする連絡ケーブル2本が操舵席の操作ハンドルに連結された構造である。従って、操作ハンドルをもどす時に、前後のフック共に同時に引き起こされた状態になっていることが必要である。Aチームの場合に両方のフックが同時にリセット位置になるまで時間を要する状況が観察された。
(2)改良型離脱装置を用いた操作試験
平成15年度における操作試験では、モックアップの一部が不完全だったため、現状品との比較で明確な有効性は示されなかったが、安全ピン及びインターロックレバーを操作者の見える位置に移動したこと、フック引き起こし用の手掛けを設けたこと、また、フックのリセットレバーを大きくしたことは、操作を分かり易く、容易に確実にできることを目指した改良であり、それらに対して一定の評価が得られた。
平成16年度における試験では、さらに改良された離脱装置を使用して、事前に十分な操作説明を行った後に操作状況を観察した。その結果、表8のアンケート結果より明らかなように、今まで離脱装置の操作をしたことがない未経験グループの3名共に、正しい操作が実行されており、分かりやすく、操作が容易な機構であることが実証された。
表8 離脱装置操作試験アンケート結果
質問内容 |
回答 |
未経験者グループ(3名) |
経験者グループ(3名) |
1.離脱装置についての知識 |
まったく知らない:1
少しは知っている:2 |
良く知っている:3 |
2.離脱操作の経験 |
操作したことがない:3 |
操作したことがある:3 |
3.事前説明について |
だいたい理解できた:2
良く理解できた:1 |
良く理解できた:3 |
4.実物を用いた説明について |
操作が良く理解できた:3 |
操作が良く理解できた:3 |
5.操作試験の感想 |
ほぼ思い通りの操作ができた:2
自信を持って、思う通りの操作ができた:1 |
ほぼ思い通りの操作ができた:1
自信を持って、思う通りの操作ができた:2 |
6.その他感想 |
1. 船内の足場が悪く感じたが、操作に支障はなかった。
2. 始めて操作したが思ったより易しかった。
3. 事前の説明があり、良く理解できた。前回より改善されたと思う。
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1. 操作手順の熟知が必要である。
2. 改良型の手掛け(船尾)の方が引き起こし易かった。
(フックが倒れていても手掛け部が見える)
3. 安全ピン挿入孔のグリーンマークが見えにくいのでもっと大きくしたい。
4. 操作がシンプルで、リセットのタイミングを合わせる必要がなく、取り扱い易い機構と思われる。
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写真1 離脱装置の改善(平成16年度)
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