第3編 情報アラカルト
海運・港湾
PILコンテナ船内で死亡したインドネシア人乗組員、SARS疑惑消える
3月28日にPILのコンテナ船Kota Hasil号船上で死亡した37歳のインドネシア人乗組員について、SARS(重症急性呼吸器症候群)の疑いが持ち上がっていたが、検死の結果、同乗組員の死亡原因は肺膿瘍だったことがわかった。同乗組員は死亡する5日前から高熱を出していた。同乗組員の遺体はインドネシアの自宅に送られた。
(2003年4月2日 マリタイムアジア)
4月8日以降シンガポールに寄港する船舶 乗組員の健康状態申告求められる
新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)対策として、4月8日以降シンガポールに寄港する貨物船は、到着の12時間前に全ての乗組員及び乗客の健康状態を申告する必要がある。これは、感染症法のもと施行されるもので、今後数週間に数千人の船員に影響を及ぼすとみられる。
シンガポールはすでに空港での検疫を強化している。港では以前から体調の悪い乗組員や乗客がいた場合、船長が報告すると定められていた。今回の対策強化によって配布される質問表(別添)には、乗船中の全員が発熱、咳、呼吸困難などのSARSの症状をみせていないか、本人や家族がSARS患者と接触を持ったか、過去10日間にSARSが流行しているエリアに行ったかどうか、船長が申告しなければならない。
個別の質問表を提出しなかった場合は、罰金5,000ドル。偽った申告をした場合は、罰金1,000ドルまたは/及び禁固6ヶ月となっている。
ほかにも多くの港で、SARSが流行している地域からの船舶に対し同様の措置がとられているが、シンガポールはほかのアジアの港に比べ安全対策ではるかに前進した。
シンガポール南部セントサ島沖約1kmの検疫停泊地に送られた船舶については、該当船舶の代理店が直ちに該船に医師を派遣し、全乗組員を検査、病人がいた場合は責任を持って病院まで搬送しなければならない。検疫を解除する際は、医師からのメディカルレポートと乗組員全員の連絡先を港湾保健所に提出しなければならない。従わなかった場合、罰金最高1万ドルまたは/及び禁固12ヶ月。
(2003年4月7日 シッピング・タイムズ)
船舶燃料業者に新しい規制=燃料ごまかしスキャンダルを受けて
シンガポール海事港湾庁(MPA)はこのほど、一連の船舶燃料をめぐるスキャンダルを受け、タンカーなどに船舶燃料を供給する際には、認定された分析所が発行する燃料の品質証明書(COQ)の取得を義務付ける新たな規制策を導入した。同国の船舶燃料業界では2001年から02年にかけ、船舶燃料の検査ごまかしや、危険な不純物が混入された船舶燃料が供給されていた事件が発覚するなど、不祥事が相次いだ。今回の規制強化はその対応策の1つ。
船舶燃料スキャンダル対策として昨年には、すべての燃料取引でのサンプル保管の義務付け、燃料計量業者のライセンス取得や、船舶燃料供給会社の払込資本最低基準を20万シンガポールドル(Sドル)と2倍に引き上げるなど、新たな規制が導入されていた。
(2003年4月8日 時事速報シンガポール)
欧州連合15ヶ国は、シングルハル追放前倒し案を国際海事機関(IMO)に提出した。これを受けIMOは、2000年にエリカ号事故後の規制見直しを査定するために発足した専門家非公式グループを再発足させ、新たな提案が与える影響を調査する。これは、IMO加盟国が同提案を審議する際に、できる限り多くの関連情報を入手できるようにするのが目的。
専門家グループは、タンカーによる石油・石油製品の地域または世界全体における輸送量、提案によって影響を受けるシングルハルタンカーの数、シングルハル追放によって求められる造船所のキャパシティ及び現存するダブルハルタンカーの数、船体リサイクル施設の年間処理能力などを考慮する。
調査はIMOのスケジュールに見合うよう迅速に実施されなければならず、5月末には終了が予定されているが、その目的は何がプレステージ号への合理的な対策かを決めることであり、EUの提案がIMOとしての合理的な対策と関係があるか否かを検討しなければならない。EUの固い結束を無視するものであると言われようと、IMOは科学的・技術的な根拠に基づいて行動していると目されねばならない。
(2003年4月16日 シッピング・タイムズ)
スター・クルーズ、クルーズ船2隻をオーストラリアへ
スター・クルーズ社は、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の影響から同社が所有する最大のクルーズ船2隻を香港・シンガポールからオーストラリアに移転させる。4月24日からスーパースター・バーゴ号はシドニーへ、スーパースター・レオ号はパースへ移転する。移転期間は1ヶ月から3ヶ月とみられ、オーストラリア観光局からも歓迎を受けている。
スター・クルーズ社は、乗員2名にSARSの疑いが持たれたことから、両船の運航を停止すると発表していた。(注:うち1名はシンガポールのタントックセン病院に収容されたが、気管支炎だったことが診断の結果明らかになった。もう1人はマレーシアのランカウイ病院に収容されたが、既に回復し退院している)
同社は、アジア市場での運航状況が難しいことから、オーストラリアで新たな市場を獲得するのが目的としている。
(2003年4月17日 シッピング・タイムズ)
ジョホール港の設備拡充にドバイの富豪が協力・シンガポール港との競争激化
シンガポールと国境を接するマレーシア・ジョホール州のタンジョン・プルパス港(PTP)の経営権を握るサイド・モクタル氏はこのほど、ドバイの富豪モハメド・アリ氏との折半出資で投資会社「ガルフ・インターナショナル・インベストメント・グループ」(GIIG)を設立した。GIIGは、マレーシアと中東の港、物流、不動産プロジェクトなどに投資する予定で、当面の主要プロジェクトは、ジョホール州内に建設予定の新しい物流複合施設。同投資会社の設立により、PTPとシンガポール港との競争はさらに激化するとみられている。
ジョホール州内の新しい物流施設についてモハメド氏は「PTPに隣接する土地」に建設されることを明らかにした。モハメド氏とサイド・モクタル氏は、共同でGIIGに1億リンギを投資するとともに、中東で投資を募り10億リンギの資金を確保する計画だ。
モハメド氏は、ドバイ経済局の局長を務めるほか、ドバイ・アルミニウム・カンパニーの副会長、アラブ首長国連邦(UAE)最大の不動産会社EMAARの会長を務める。サイド・モクタル氏は、シンガポール港に対抗してPTPを開発。現在はジョホール州のセナイ空港の開発を進め、同州をシンガポールに匹敵する東南アジアの一大物流拠点とすることを目指している。
(2003年4月22日 時事速報シンガポール)
マレーシア国際海運、シンガポール海運大手NOLのタンカー子会社を買収へ
マレーシア国営石油会社ペトロナス傘下のマレーシア国際海運(MISC)は、シンガポール海運大手ネプチューン・オリエント・ラインズ(NOL)のタンカー子会社アメリカン・イーグル・タンカーズ(AET)を買収する模様である。
AET買収により、MISCは大西洋にまで石油市場を拡大することができる。また、AETは米国の輸入する原油の13%を輸送している。
このほか、ペトロナスの原油がAETによって輸出されれば、輸送に外国企業を利用する必要がないことからコスト削減も期待できる。
MISCの取引について、政治的側面の有無にかかわらず、マレーシアが構想している地域海運ハブの地位獲得に一歩前進することは間違いない。
(2003年4月30日 ビジネス・タイムズ)
タイのレムチャバン港に大型投資か=政府系港湾管理会社PSA
消息筋によると、シンガポール政府系港湾管理会社PSAコープはこのほど、タイの主要港であるレムチャバン港の港湾管理会社の1つ、イースタン・シー・レムチャンバン・ターミナル社(ESCO)の相当規模の株式を取得することで合意に達したもようだ。消息筋は、PSAのESCO株取得はすでに事実上確定したと指摘しているが、PSAの出資額は明らかになっていない。
ESCOはレムチャバン港のB3コンテナ・ターミナルの管理を行っているほか、B1ターミナルを管理するLCBコンテナ・ターミナル1の株式40%を保有する。ESCOが取り扱うコンテナ量は、昨年の同港での全取扱量の約37%に達する。同港の取扱量は1997年の170万TEU(20フィート標準コンテナ換算個数)から、02年には270万TEUと順調に増加しており、同国で急速に発展する自動車産業の恩恵も受けている。PSAの今回の投資は、インド洋と南シナ海を結ぶ野心的なクラ運河開発計画に対するヘッジの意味もあるとみられている。
(2003年5月2日 時事速報シンガポール)
シンガポール ゴー首相、東南アジアのシーレーンの重要性訴える
アメリカとの自由貿易協定に署名するため訪米中のゴー・チョクトン首相は、アジア・ソサエティ主催の夕食会でスピーチし、東南アジアのシーレーンの重要性を訴えた。
ゴー首相は、「東南アジアで政治的にイスラム教が勢力を得れば、世界的な戦略問題に発展するだろう。それは、東南アジアが、太平洋とインド洋と結ぶシーレーンの役割を果たしているからである。日本、韓国、オーストラリアは直ちにその影響を受けるだろう。アメリカも例外ではない」と述べた。
(2003年5月8日 チャンネル・ニュースアジア)
シンガポール港のコンテナ取扱量が前月比5.3%減少=PSA
シンガポール政府系港湾管理会社PSAコープは8日、同社が管理するシンガポール港での4月のコンテナ取扱量が143万TEU(20フィート標準コンテナ換算個数)となり、前月比5.3%減少したと発表した。新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の影響のほか、比較対象となる3月のコンテナ取扱量が同16%増と多かったことが、減少の要因となった。
PSAのシンガポール・ターミナル部門を統括するグレース・フー氏は、SARSにより地元企業による貨物量が「わずかに影響を受けた」と指摘した。シンガポール港では、地元企業の貨物は、全体の約20%を占めると推定される。フー氏は、地元企業の貨物減少が長期にわたるかどうか注視していくと述べた。
一方、PSAが運営に参加する海外15港の4月のコンテナ貨物取扱量は合計86万TEUと、前月比4.9%増加した。
(2003年5月9日 時事速報シンガポール)
IATA、馬タンジュン港に空港業務を認可海運・空輸の一体サービスが充実
国際航空運送協会(IATA)は、マレーシア・ジョホール州の新興コンテナ港タンジュン・プルパス港(PTP)に空港業務の実施を認め、通常空港ごとに設定するアルファベット3文字の識別略称を与えた。港湾施設がIATAの略称を得るのは世界初で、PTPの略称は「ZJT」。
PTPは、マレーシア航空(MAS)の貨物子会社MASカーゴと海空一体型の輸送サービスを共同展開している。共同サービスは今後、貨物船で到着した荷物に関する空輸向け通関手続きなどをPTP内で済ませ、MASカーゴの拠点であるクアラルンプール国際空港(KLIA)に直接運べる。
MASカーゴ幹部は「中国に海路で貨物を運ぶ代わりに、PTPを経由して空輸すればコストと時間の削減になる」と指摘した。
(2003年5月28日 時事速報シンガポール)
マレーシアの8主要港に空港施設建設−シンガポールへの貨物流出を阻止へ
マレーシア航空(MAS)の貨物子会社MASカーゴはこのほど、港に空港施設を併設することで海空一体型の輸送体制の確立を目指す「Iポート」プログラムの対象を、同国の主要8港に拡大する方針を明らかにした。同プログラムは、貨物船で到着した貨物を港施設内に設置した特別な航空貨物区で通関手続きなどをすませ、直接空港に貨物を運び航空輸送できるというもので、これまでにジョホール州のタンジョン・プルパス港(PTP)とクラン港のノースポートの2港で導入済み。同プログラムは、隣国シンガポールへの貨物流出阻止が主な狙い。
PTPとノースポートはそれぞれ、空港業務を行うために国際航空運送協会(IATA)から、空港ごとに設定されるアルファベット3文字の識別略称を与えられている。MASカーゴの幹部は、同2港にIポート・プログラムが導入された結果、シンガポールへの貨物流出に成果が表れていると述べたが、詳細については明らかにしなかった。
(2003年5月29日 時事速報シンガポール)
シンガポール 船舶燃料供給大手、贈賄確定で営業停止
船舶燃料供給で3位のハイ・スン・ディーゼル・アンド・トレーディングは、リム・キムフアット取締役が贈賄容疑を認めたことを受け、シンガポール海事港湾庁(MPA)から営業免許を停止された。同氏は積み込んだ燃料の量目不足を見逃すよう、船舶の主任機関士を買収した容疑で裁判にかけられていた。
ハイ・スンは年間170万トンの燃料油を供給していたが、広報担当者によると、シンガポールでの船舶燃料ビジネスは利幅が薄く、今月に入りすでに積み込み業務を停止した。役員の有罪認定と業務停止は関係ないという。
シンガポールの船舶燃料需給はタイトなため、同社は値が高いスポット買いをすることが多く、これが収益を圧迫した。現在は船舶賃借など利幅の厚い業務に軸足を移している。2001年に発生した、船舶燃料をめぐる汚職事件では、これまでに約60人の検査官が収賄で有罪判決を受けた。29日付シッピング・タイムズが報じた。
(2003年5月30日 NNA)
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