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マラッカ・シンガポール海峡の情勢 2004

 事業名 海上安全に関する国際情報収集活動
 団体名 日本海難防止協会 注目度注目度5


はじめに
 マラッカ・シンガポール海峡(マ・シ海峡)は、年間6万隻以上の大型船舶が通過する国際的な海上交通の要衝であり、我が国にとっても、原油輸入の8割以上が通過するなど、国の経済上重大な利益を有する輸送ルートであると言えます。
 マ・シ海峡は、現在においても、その狭隘性や船舶が輻輳する交通環境から、海難が多発する海域であり、また、海賊や船舶に対する武装強盗による被害も後を絶ちません。さらに、近年においては、テロの潜在的な脅威が声高に叫ばれるようになっています。
 こうしたマ・シ海峡をめぐる諸課題は、アジア諸国の経済発展により海峡を通過する船舶がさらに飛躍的に増加することが予想される中で、一層その困難さを増すことと思われます。このため、マ・シ海峡においては、航行安全の確保、海洋汚染の防止、セキュリティーの強化等に向けた対策のさらなる強化が求められており、国際社会としての一致協力した取組みが必要となっています。
 マ・シ海峡に係る沿岸国と利用国の協力については、国連海洋法条約においてもその必要性がうたわれていますが、これまでは、その実現に向けた議論はほとんど行われてきませんでした。ところが、最近になって、セキュリティーへの関心の高まりもあり、具体的な協力の実施に向けた議論が進展する兆しが見えてきています。我が国としても、この好機を捉え、これまでの協力の実績を生かしながら、マ・シ海峡の円滑な通航の確保に向けた新たな協力の仕組みづくりに、積極的に貢献していくことが求められます。
 このような中で、今般、(社)日本海難防止協会シンガポール事務所において、本報告書「マラッカ・シンガポール海峡の情勢 2004」を刊行させていただく運びとなりました。
 本報告書は、当事務所がまさにマ・シ海峡に面したマリタイム・ハブであるシンガポールに位置し、沿岸国等の政府機関、民間団体など直接の情報源にアクセスできる立場をフルに生かし、可能な限り最近の事件、沿岸国等の関係機関の動きを把握・整理するとともに、分析を試みたものです。
 我が国の生命線といってよいマ・シ海峡の諸問題の今後の帰趨は、我が国の国益に大きく関わってきます。しかしながら、マ・シ海峡をめぐる状況については、必ずしも広く一般に理解されているとは言えないようです。船舶通航上の難所と言われるが、具体的にどのようなリスクが存在するのか、海賊とはどのようなもので、どんな背景で発生してくるのか、それとテロとの関係はどうなっているのか、などの実情について、正確な情報の提供が必要であると痛感する次第です。
 本報告書が、海事関係者のみならず、海事分野以外の各界の専門家、その他国民各層がマ・シ海峡の抱える多様な課題について理解を深めていただく一助となることを願ってやみません。
 最後になりますが、今後とも当事務所の活動に、ご理解・ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
 
平成16年11月
(社)日本海難防止協会シンガポール事務所
所長 市岡 卓
 
第1編 平成15年度の主な出来事
マレーシア政府主催「海上保安セミナー」の開催(ペナン)
 平成15年7月9日及び10日の2日間にわたり、マレーシア・ペナンにおいて、マレーシア政府主催の「海上保安セミナー」が開催され、新たに創設されるマレーシア海事執行庁(Malaysia Maritime Enforcement Agency)関係者(海上警察、航空警察隊、税関等の職員)約50名が参加しました。このセミナーの講師として、新組織のモデル機関である我が国海上保安庁の職員等が招聘され、海上保安庁の任務、組織、管轄、法制面、教育訓練制度等について講義が行われました。また、このセミナーにあわせて派遣された同庁のヘリコプター搭載型巡視船において、搭載資機材、海上保安業務執行体制に係るスタディ・ツアーが実施されました。なお、セミナー後は、海上保安庁職員、マレーシア海上警備機関職員が相互に相手国巡視船に乗船し実践的研修をする体験的乗船研修が実施されています。
 
インドネシア海運総局への設標船「ジャダヤット号」の寄贈
 マラッカ海峡協議会は、2003年10月10日、インドネシアのバタム島において、日本財団の全面的な助成を受けて建造した最新鋭の設標船、JADAYAT号(総トン数858トン、全長58m)をインドネシア海運総局へ寄贈しました。寄贈式典には、日本財団の曽野綾子会長、マラッカ海峡協議会の金子専務理事らが、また、インドネシア側からは、アグム運輸大臣らが参加しました。JADAYAT号は、海運総局に引き渡された後、ビンタン島のキジャン基地に配属され、専ら、マラッカ・シンガポール海峡の航路標識の維持・整備作業に従事することになっています。
 
 JADAYAT号は、建造費8億5千万円(船員教育等を含む)をかけて新潟造船で建造され、その後、インドネシアまで回航されてきたものです。本船は、直径5mの大型航路標識ブイを吊り上げる大型クレーンを装備しています。また、インドネシアの航路標識整備の現状を勘案し、引き揚げたブイは、船上で全ての整備作業ができるよう、本船には、空気ブラスト機、高圧水噴射機、工作室などが装備されています。また、所定の位置に正確にブイを投入するため、電子海図表示装置(ECDIS)、自動船舶識別装置(AIS)、ディファレンシャルGPS、バウスラスター等の装置も装備されています。更に、海賊被害を防止するため、赤外線警備装置も設置されています。
 
【JADAYAT号の主要目】
総トン数: 858ton
全長 58.02m
幅 11m
計画満載喫水 3.5m
速力 10.5knots(最大速力 12.94knots)
航続距離 3,900海里
主機関 NIIGATA 6M26AGTE 1機 735kw
定員 45名
主要装備 レーダー2機(Xバンド、Sバンド)
赤外線警備装置、DGPS、AIS、ECDIS、ナブテックス受信機、測深装置、自動操舵装置
 
バタム島ツクパン港に停泊中のJADAYAT号
 
曽野会長、アグム大臣との記念品の贈呈
 
シンガポールのOPRC-HNS議定書への加入
 平成15年10月16日、シンガポール政府は、Protocol on Preparedness, Response and Co-operation to Pollution Incident by Hazardous and Noxious Substances, 2000 (OPRC-HNS議定書)への加入書(Instrument of Accession)を国際海事機関(IMO)の事務局長に寄託し、同議定書の第8番目の締約国となりました。
 
 この議定書は、油による汚染を対象としたOPRC条約の対象範囲を、実質的に、油以外の有害危険物質(HNS)に拡大するものです。同議定書の主な目的はHNS汚染事故への準備及び対応に係る国際協力を促進すること、HNS汚染事故に対する締約国の対処能力を発展、維持することにあり、具体的には、OPRC条約と同様、HNS事故発生時における要請に基づく締約国間の相互支援体制の確立、HNS事故への迅速かつ効率的な対処を行うための国の制度の確立(国家緊急時計画の策定、国家当局の指定、運用上の連絡窓口の設定など)に関する事項が規定されています。また、締約国の船舶については、HNS汚染緊急措置手引書の備え置き義務が課されることになります。
 
MPA航路標識研修の実施(シンガポール)
 平成15年10月13〜22日、シンガポール海事港湾庁(MPA)は、シンガポール外務省及び日本の国際協力事業団(JICA)の協力を得て、10日間の日程で、「マラッカ・シンガポール海峡の光波航路標識」研修コースを開催しました。この研修コースは、日本の国際協力の枠組みにおいては、いわゆる「第三国研修」と呼ばれるものであり、開催経費は、シンガポールと日本が折半しています。実施主体はMPAですが、日本からも、海上保安庁交通部やマラッカ海峡協議会の専門家や、当ニッポン・マリタイム・センターの専門家が講師として参加しました。今回の研修コースは、新規実施コースであり、参加者はインドネシア海運総局5名、フィリピン沿岸警備隊2名、ベトナム海事局2名の計9名でした。当初は、マレーシア海事局やタイ海事局からも研修に参加する予定でしたが、研修参加手続の遅れから、残念ながら今回の参加は見送られました。
 
 なお、本研修コースの目的は、次のとおりです。
■安全かつ効率的な航海のための航路標識の必要性、重要性を理解すること
■海上の航路標識の管理又はこれに関連する活動に関する一般的原理を理解すること
■新しい技術、計画手法、運用・管理に関する知識を得ること
■日常業務における問題点を把握し、解決策を探ること
 
座学の様子
 
ラッフルズ灯台の見学
 
シンガポールにおけるシージャック防止条約の国内法整備
 平成15年11月10日、シンガポールは、いわゆる「シージャック防止条約」を実施するための「海事犯罪法案(Maritime Offences Bill, Bill No.23/2003)」を可決しました。この法案は、10月16日に国会に提出され審議が行われていたものです。
 
海賊対策連携訓練の実施(シンガポール)
 平成15年12月3日、シンガポール海峡において、日本国海上保安庁(JCG)とシンガポール警察沿岸警備隊(SPCG)との初めての海賊対策連携訓練が行われました。訓練に参加したのは、第四管区海上保安本部名古屋海上保安部所属巡視船「みずほ」であり、同船は、ベル212型ヘリコプター2機を搭載しています。一方、SPCGからは、同隊所属の高速警備艇や特殊部隊が参加しています。
 
ヘリから降下するJCG特殊部隊員
 
被害想定船上に展開するJCG特殊部隊
 
SPCG特殊部隊によるシージャック犯の急襲
 
制圧完了
 
 訓練の内容は、シージャック発生情報の伝達連絡系統の確認、巡視船、航空機によるシージャック犯の補足・制圧訓練(公開訓練)に加え、シンガポール警察の特殊部隊による巡視船「みずほ」を使用した極秘訓練(非公開)も実施された模様です。
 
 海上保安庁では、平成12年4月、東京で開催された「海賊対策国際会議」以降、今回の訓練を含め、合計9回にわたり、東南アジア諸国等の海上警備機関との海賊対策連携訓練を行ってきましたが、SPCGと連携訓練を実施するのはこれが初めてとなります。
 
東アジア海洋会議の開催(マレーシア・プトラジャヤ)
 平成15年12月8日から12日にかけて、マレーシアのプトラジャヤで、ペムシー主催/マレーシア科学技術省後援により、東アジア地域の海の持続可能な開発をテーマとした「東アジア海洋会議」が開催されました。同会議の前半には、約30カ国400名の専門家による海洋環境問題及び沿岸域統合管理に関する専門家会合がもたれ、後半には、ペムシーを構成する12カ国の海洋担当省庁による高級事務レベル会合と閣僚級会合が開催され、「東アジア海域の持続可能な開発戦略」と「東アジア海域の持続可能な開発のための地域協力に関するプトラジャヤ宣言」が採択されました。日本からは国土交通省の洞国土交通審議官、小滝海洋室長らが出席し、韓国、タイ等も交通担当省庁からの出席がありましたが、その他の国は概ね環境担当省庁の大臣・次官が出席しました。
 
第4回海賊対策専門家会合の開催(タイ・パタヤ)
 平成16年2月26日及び27日、タイ・パタヤにおいて、海賊対策専門家会合が行われました。この会合は、平成12年4月、東京で開催された海賊対策国際会議において採択された「アジア海賊対策チャレンジ2000」に基づき、日本財団等による財政的支援により、ほぼ毎年開催されているものであり、今回のパタヤでの会合は、第4回目となります。今回の会合の目的は、関係各国・地域の海上警備機関間の連携・協力を更に推進することであり、今回の会合では、タイ海上警察タワシット長官及びタイ海事局海上安全環境部プリーチャ部長の共同議長のもと、下記の事項について検討が行われました。
 
・最近の海賊事件の発生状況
・海賊対策の取組み紹介
・連携協力推進の確認
・海上テロ対策に関する新たな枠組み作り
・海賊及び海上テロ対策に関する連携協力等のための議長総括の採択
 
 この結果、「アジア海賊対策チャレンジ2000」に基づく協力関係の維持・促進として、海賊情報等連絡窓口を通じた情報交換の促進や、複数の国の間での机上訓練の実施について合意されました。更に、海賊及び海上テロ対策を内容とする海上セキュリティーの維持の効果的な方策を検討するため、本年6月、日本において、「アジア地域海上保安機関長官級会合(仮称)」を開催する方向で合意されました。
 
第2回アセアン・オスパー管理会合の開催(シンガポール)
 平成16年3月24日、シンガポールのシャングリラ・ホテルにおいて、第2回アセアン・オスパー管理会合が開催されました。本会合には、アセアン諸国(ラオスを除く)及び日本から政府関係者が出席しました。
 
 この会合の基礎になっているのは、平成5年、運輸省(当時)のイニシアチブにより、日本財団等の関係団体が資金を拠出し、総額10億円相当の油防除資機材や情報ネットワーク・システムを旧アセアン諸国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの6カ国)に寄贈した支援プログラム(オスパー・プロジェクト)です。本会合は、当初、寄贈された資機材等の管理状態を把握することを目的として開催されてきた経緯がありますが、現在、本会合をアセアン諸国の油HNS汚染問題に係る包括的連携・協力事項を協議する場にしようとする努力が鋭意行われています。


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