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(31)二国間協定の集積が、パッチワーク的に適用海域をふやすことによる不都合を回避するために、多数国間のモデル協定が考案されたことを含めて、Kramek, J. E.,“Comment: Bilateral Maritime Counter-Drug and Immigrant Interdiction Agreements: Is This the World of the Future?”The University of Miami Inter-American Law Review, VoL. 31(2000), pp. 121-161.
(32)1981年の米国とイギリス間の協定(Exchange of Notes on Co-operation in the Suppression of the Unlawful Importation of Narcotic Drugs into the United States)については、Gilmore, W. C.,“Narcotics Interdiction at Sea,”Marine Policy, Vol. 13(1989), pp.218-230. この協定は、カリブ海域におけるイギリス属領周辺海域(米国の領海および接続水域の外側であり協定に特定された海域)において、イギリス商船が米国法に違反して輸入する麻薬を搭載していると合理的に疑われるときに、米国官憲がこれに乗船することを合意するものである。協定の骨子について、id., pp.222-226 and see Siddle, J.,“Anglo-American Cooperation in the Suppression of Drug Smuggling,”International and Comparative Law Quarterly, Vol. 31(1982), pp.726-747.
(33)なお、条約は相互的規定になっている。
(34)1996年のトリニダード・トバコと米国との協定、Agreement between the Govemment of the Republic of Trinidad and Tobago and the Government of the United States of America Concerning Maritime Counter-drug Operations, para 8(c).
(35)Agreement Concerning Co-operation in Suppressing Illicit Maritime and Air Trafficking in Narcotic Drugs and Psychotropic Substances in the Caribbean Area.
(36)トリニダード・トバコとの協定 pars. 4〜9, 1997年ジャマイカとの協定6〜8条, 1997年 バルバドスとの協定3〜6条など。
(37)Treaty between the Government of Australia and the Government of the French Republic on Co-operation in the Maritime Areas Adjacent to the French Southern and Antarctic Territories, Heard Island and the McDonald IsIands. また、地域的条約としては、1993年コナクリ条約(Convention on Sub-Regional Co-operation in the Exercise of Maritime Hot Pursuit)があるが、これは、1985年漁業に関する地域委員会の設立に関する条約(Convention for the Establishment of a Sub-Regional Commission on Fisheries)を基礎として締結されたものである。ad hocに2001年にフランスがオーストラリア公船による違反漁業船(ロシア船)に対する追跡を、Kerguelen島の領海内において授権した例もある。これらの実践について、Molenaar, E.J.,“Multilateral Hot Pursuit and Illegal Fishing in the Southern Ocean: The Pursuits of the Viarsa and the South Tomi,”The International Journal of Marine and Coastal law, Vol. 19(2004), pp.29,32-33, and the footnotes thererto.
(38)同協定4条。
(39)1995年に欧州諸国が1988年の麻薬・向精神薬違法取引防止国連条約17条の実施協力のための協定を締結した。これは、2条3項において、当該協定に従ったいかなる活動も、海洋に関する国際法に従う沿岸国の権利義務および管轄権の行使を阻害しないように適当な考慮を払い、それらに影響しないことを規定している。
(40)追跡権の要件が、「沿岸国の法令違反」にあるとすれば、領海における外国船舶の無害通航権との関係において、「無害ではないこと」と法令違反との関係が問題となりえたはずではある。この問題については、前注14参照
(41)国連海洋法条約33条は、通関、財政、出入国管理、衛生を挙げる。これらの事項が限定列挙であるかという点については、たとえば、米国の国内裁判例で、限定列挙ではなく、漁業についての沿岸国管轄権の行使が接続水域において認められるとして、接続水域から違法漁業を行った外国船舶の追跡権の開始も認められるとした例(太陽丸事件)がある。これに対する批判的考察として、Sisco, E. A.,“Hot Pursuit from a Contiguous Fisheries Zone-an Assault on the Freedom of the High Seas,”San Diego Law Review, Vol. 14(1977), pp.656-680, 事件の骨子は、pp.657-659; Fidell, E. R.,“Hot Pursuit from a Fisheries Zone, ”American Journal of International Law, Vol. 70(1976), pp.95-101.
(42)Sisco, op. cit., pp.660-669; Lowe, A. V.,“The Development of the Concept of the Contiguous Zone,”British Year Book of International Law,Vol. 52(1981), pp.150-15. 第一次国連海洋法会議の議論の紹介および接続水域と漁業水域との相違という点の分析を行うものとして、Fitzmaurice, Sir G.,“Some Results of the Geneva Conference on the Law of the Sea,”International and Comparative Law Quarterly, Vol. 8(1959),pp.113-121.
(43)Sisco, op. cit, pp.667-668. しかし、国家実践において、そうした区別は意識されなくなっていくことについて、Lowe, op. cit., p. 151.
(44)麻薬違法取引防止条約採択過程で、EZ沿岸国にそのような管轄権は認められなかった。そこでの議論の経緯について、Gilmore, W.C.,“Drug Trafficking by Sea―The 1988 United Nations Convention Against Illicit Traffic in Narcotic Drugs and Psychotropic Substances,”Marine Pllicy, Vol.15(1991), pp.186-189
(45)麻薬違法取引の取締りについて米国がもつ固有の事情について、Kramek, op. cit., pp.128-133.
(46)この追跡について、Molenaar, op. cit., pp.20-22.
(47)Ibid., pp.22-23.
(48)Ibid., p. 26 et seq.
(49)公海漁業実施協定、21, 22条、2000年中部太平洋高度回遊性魚種の保存と管理に関する条約25,26条。CCAMLRは、14条に基づいて監視・執行員制度を採用しているが、旗国以外の船舶による公海上での執行を認めているわけではない。
(50)前注44参照。
(51)EZおよび大陸棚の設備や安全区域からの追跡について、奥脇直也「海洋設備周辺の安全区域からの追跡権」財団法人日本海洋協会『海洋法関係国内法制の比較研究』第2号、(1996年)、137頁以下。
(52)海上武装強盗が深刻化しているのに対して、マラッカ海峡などの危険海域での海上武装強盗防止および取り締まりのための国際協力が日本も含めて進展している。領海部分についていえば、本来的には、領海沿岸国の管轄権行使に包含される問題であるが、かりに、国際協力が法的に義務付けられ、領海において領海沿岸国以外の国の管轄権行使あるいは共同行使などが実現すれば、これも、領海における機能的権利配分の例になりうる。あるいは、武装強盗行為が新たな「海賊」概念として構成されたり、公海上で、武装強盗船(新海賊?)に対して(武装強盗船の)旗国以外の国による執行措置などの干渉が認められるようになるとしても、武装強盗船がいずれかの国の領海に逃げ込めば、領海沿岸国以外の国の船舶が当該領海まで武装強盗船を追跡して執行措置をとることはできない。そのように「領海」が武装強盗船の「保護」区域として利用されている実態に鑑みて、第三国領海へ武装強盗船を追跡し、執行措置をとる可能性を検討する学説として、Stiles, E. C.,“Reforming Current International Law to Combat Modern Sea Piracy,”Suffolk Transnational Law Review, Vol. 27(2004), pp.320-322.南シナ海諸国が武装強盗船に実効的に対処しきれていない実態および原因について、Zou Keyuan,“Enforcing the Law of Piracy in the South China Sea,”Journall of Maritime Law and Commerce, Vol. 31(2000), pp.116-117.
(53)さらに、国際社会の共通利益というよりも、特定国の利益を保護するという場合であっても、それが、自国民や自国籍船が被害者であってそれを保護するという意義だけではなく、当該「国家」自身の利益を保護する意義をもつこともある。たとえば、1988年海上航行の安全に対する違法行為の抑止に関する条約において裁判管轄権の配分が6条により規定されているが、そこでも、被害船舶・行為地国・実行者の国籍国の義務的管轄権とともに、被害者の国籍国やテロ行為の対象国(当該テロ行為が、その国の作為・不作為を強制することを目的としている国)の任意管轄権を規定している。任意管轄権を規定する限りにおいてではあるが、テロ対象「国」の利益保護がここに反映されているとみることができる。拙稿「公海制度の現代的意義」, 19-20頁。
(54)Maidment, op. cit., pp.380-381.
(55)兼原「追跡権をめぐる最近の動向」16-17頁。


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