4. 海事機関に係る調査結果
(1)上海海事局
1999年6月18日、交通部の直属機構として成立した上海海事局は、本年の観閲式に巡視船艇を派遣する等、海上保安庁と以前から親交が深く、今回も気さくに訪問調査を受け入れてくれた。海事局側の説明者は、弁公室の渉外担当官及び船舶監督処の副処長であり、同局の組織や職務の概要や「上海水上安全監督規則」の解釈等について中国語及び英語により説明がなされ、質疑応答を行った。当方からは海上保安大学校についてのプレゼンテーション資料(中国語版)を用いて、概要を紹介した。
イ 組織
(イ)内部組織
内部組織としては、以下の処、室等が設置されている。
弁公室、党委工作部、公安処、局工会(労働組合)、財務会計処、審計処(監察)計画基建処、技術装備処、船舶検験管理処、航標導航処、人事教育処、信息化弁公室(情報)、法規規範処、船員管理処、船舶監督処、危管防汚処、通航管理処
(ロ)外部組織
外部組織には次のようなものがある。
呉淞口海事処、蘭州海事処、董家海事処、呉經海事処、宝山海事処、外高橋海事処、金山海事処、崇明海事処、深水港弁事処、上海航標処、アモイ航標処、福州航標処、温州航標処、鎮海航標処、連雲港航標処、海測大隊、航海図書印刷場、行政物品提供所、航政中等専門学校
ロ 職務
上海海事局は、上海沿岸、長江河口水域及び港域において、「中華人民共和国海上交通安全法」、「中華人民共和国海洋環境保護法」、「中華人民共和国船舶及び海上施設検査条例」、「中華人民共和国航標条例」等の法令に従って、「上海沿岸、長江河口域及び港域における航行安全、汚染防止」、「江蘇、浙江省及び上海地区における船舶、海上施設管理」、「東シナ海海域における航路標識、港湾航路測量製図管理業務」、「中国東岸8省2市の海技免状関係事務」等の業務を実施している。
管轄権限に従って、船舶及び船員等に係る業務は以下のとおりである。
・船員、水先人資格の試験管理事務、船員服務簿及び船員出入国証書の発行事務、船員の訓練、試験、証書交付事務等の実施。
・海上船舶、内河船舶の登録事務を実施し、高速客船安全運航証書、船員定数、油濁緊急時計画、船舶ゴミ管理計画、貨物個縛手帳等の船舶法定書類の審査。寄港国監督検査、船舶安全検査を実施し、船舶入出港手続の処理、強制水先に関する業務の実施。
・危険貨物等について汚染防止の実施、汚染状況の調査、油汚染防除緊急時計画の制定及び実施。
・航行禁止区域、航路、交通管制区、錨地、安全作業区域の審査、航行警報の実施。水上、水中工事及び大型施設の曳航の審査。通航安全に係る海岸線使用工事審査の実施。船艇管理調整及び巡視の実施。
・台風対策、捜索救助業務の調整。通航環境、通航秩序の維持、重要航行区域の交通管制の実施。沈船等の引き揚げ、航路障害物の強制撤去等に係る業務の実施。船舶交通事故、汚染事故及び航法違反等の調査及び処理。船舶、海上施設の検査管理業務の実施。
・安全生産、水運企業安全管理体系、船員及び水先人訓練体系、船舶検査機構の資質の審査。主要航路標識の管理及び建設計画の策定。
・港湾、錨地等の測量の実施、海図及び関係資料の作成及び発行。潮汐、潮流観測の実施。
(2)武警上海市辺防総隊
上海の虹橋区付近に位置すると思われる武警上海市辺防総隊を訪問した。支隊長ほか2名により、組織や職務概要について口頭説明があった。部隊の性格上、機密保持が厳格であり、資料等の提出は一切行っていないとのことであった。質疑応答は主に中国語により実施したが、勢力等に関する具体的な数字は提供してもらえず、概数の紹介程度に止められた。当方からは、プレゼンテーション資料を用いて大学校の概要を紹介した。
なお、「武警」とは、武装警官の略である。武警は人民解放軍と公安部門の双方の指揮を受けている。武警のうち、公安部門によって管理されているのは、国境防衛部隊のほかに、消防部隊、警衛部隊がある。国境防衛部隊は公安部国境管理局によって管理され、各省、自治区、直轄市に配置されている。軽装備の歩兵師団で国境の早期警戒を担当しているといわれている。1998年に司法権限が与えられ、陸上及び海上において密輸、密航、麻薬犯罪等の取締りにあたっている。
イ 組織及び職務
(イ)海警支隊(海上パトロール)
海上勢力であり、職員数は300〜400人。船艇数は18隻で、連日、江蘇省から浙江省沿岸の管轄海域において巡視警戒、立入検査を実施している。最速艇は総トン数200トン、速力約30ノット、ディーゼル艇であり、最大船舶は約3000トンである。現在のところ、航空勢力は無く、必要な場合は上海海事局の応援を求めたり、海南辺防総隊所有ヘリの派遣を要請している。
海難救助は主として海事局が実施しているが、辺防総隊は海上110番電話等で海難情報の取り扱いも行っており、必要に応じて海難対応も行っている。救助に要する費用は辺防総隊が負担し、被救助者からの費用徴収は行わない。
(ロ)辺防支隊
陸上勢力であり、500〜600人によりパトカー等で管轄区内の巡邏警戒を実施している。
(ハ)教育指導大隊
4年制の大卒者を半年間教育し、職員として採用する。身分は、武装警察部隊学院卒業生と同等となる。「2002年中国の国防」では、武警の任務として対テロ対策が付け加えられており、テロ事件があれば、同部隊が緊急発動し中心となって活動する。
なお、組織改革に伴い、空港等における出入国検査は、上海出入境検査総站が管轄している。
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