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II 地球温暖化対策に係る船舶機器の効率化に関する調査研究
第4学年第II群 田原芳洋
第4学年第II群 山中章文
第3学年第II群 森下淳一
 
指導教官 海上安全学講座 島田伸和 教授
          吉田 肇 教授
          伊藤浩二 助教授
          中田辰也 助手
 
1. 緒言
 昨今、地球温暖化現象が叫ばれている。IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change: 気候変動に関する政府間パネル)の第三次評価報告書[1]の報告によると、地球の平均気温は過去100年間で約0.4〜0.8度上昇しているとのことである(第二次報告書では0.3〜0.6度であったが、その後補正された。)。
 地球は、誕生以来、寒冷化や温暖化を繰り返してきたが、これら温度変動現象は本来、何万年というスケールで起きる自然現象である。ところが、いま問題になっている地球温暖化は、石油や石炭の大量燃焼など人為的な活動によって地球の平均気温が上昇する現象のことを指しており、具体的に言えば、自動車の排出ガスや電力、火力エネルギーの生産及び消費に伴う排出ガス、家畜に起因するメタンガスの排出、そしてオゾン層の破壊をも引き起こすフロンガスの存在(産業革命以前は存在しなかった。)等が地球温暖化ガスとして危険視されている。その他にも原因として、焼畑農業等による森林伐採、また、生産活動によって起こるエネルギーの消費などが挙げられ、これらはこれまでの人間の繁栄において構築されてきたものであり、現在、これら抜きでは人間の生活、経済活動が成り立たない状況となっている。
 では、地球温暖化現象の進行を完全に食い止める事はできるのであろうか?答えは否である。しかし、これらを遅らせることは可能であろう。地球温暖化阻止の必要性が叫ばれている現在の社会で、我々は新たな技術開発、エネルギー消費の見直しなどを行い、地球温暖化現象を少しでも食い止める事はその原因を生み出してしまった人間としての当然の義務と言っても過言ではない。実際に、この地球温暖化現象に関する研究は様々な分野で行われているが、海洋環境保全の担当官庁として、また、船艇・航空機を有するユーザーとして、海上保安庁も積極的に調査・研究していく必要があると思われる。そこで、私たちは海洋国家であるとともに環境先進国でもあるオランダを実際に訪れて、調査を行った。
 
2. MARIN(Maritime Research Institute Netherlands)
 オランダ海洋科学研究機構(以下MARINと記す)は、ワーニンゲン市に位置し、船舶、海洋構造物等の運動工学をはじめとし、海事上の様々な分野にわたって研究を行っている。MARINは、1929年に創立され、1932年に実験水槽が完成してから研究を本格的に開始した。現在、研究所内には様々な研究設備があり、海洋安全全般、船体抵抗などの船体運動特性、プロペラ効率等に関する研究を種々の角度から行うことにより、輸送の効率化や省エネルギー化を通じた地球環境への取り組みも行っている。また、研究所内には最新鋭の船舶操船シミュレータ及び交通シミュレータが整備されており、操船シミュレータについては船舶のタイプ、気象、海象条件等を種々変更して操船シミュレーションを行うことが可能である。これらを駆使する事によって船舶の航行安全の研究も活発に行われている。このようにMARINは海事に関する総合的な研究を行い、政府や産業界に助言を行うことを主な目的としている。
 
写真1: MARIN研究所前にて
 
写真2: 巨大水槽における船体運動実験の様子
 
写真3: 大型キャビテーショントンネル
 
写真4: 水深可変型造波装置付水槽
 
写真5: 操船シミュレータコントロールルーム


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