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5 地域伝統文化を活用した地域再生についての考え方
(1)都道府県や市区町村を中心とした企画・運営力の強化
・市町村は地域伝統芸能保存団体と密接な連絡を保っており、その活用についても市町村の方針、考え方に左右される部分が極めて大きいと思われる。
・特に地元市町村行政において、地域伝統文化を活用した横断的な施策を実施するため、プロデューサー的な人材が必要と思われる。
・発表の場を設ける。
・映像記録の作成。
・観光とのタイアップ推進。
・伝統文化の上演や継承にかかる文化施設の整備。
・合併記念イベントの実施。
・行政は裏方として支援。
・公民館主催で関連行事を実施。
・近県の三県持ち回りで○○半島民俗芸能祭を毎年開催しているが、単に芸能を公開するだけという画一的な企画になってしまっている。
・公民館主催で関連行事を実施。
・民俗芸能フォーラムを開催し、民俗芸能保存団体の意見交換の場を提供。
・保存団体の自主性を損なわないよう、配慮が必要と思われる。
・地域活性化の視点をもって、文化振興施策を進めていく必要がある。
・県教育委員会主催で、○○人形浄瑠璃の伝承教室を開催し、後継者の育成を図っている。
・担当者の熱意と担当部局の理解・支援が必要。
・各々の自治体において、地域伝統文化を素材とし、地域づくり・観光振興・都市生活・過疎対策等行政関与の観点から、企画・運営に携わっている。県では、それらの取り組みを「地域振興総合補助金」を設け支援している。
・県補助金などの予算が削減されてきていることから、伝統文化を活用した新たな事業を企画することによって、保存団体や地域の活性化につなげることが大切になってきている。ただし、行政に頼るだけではなく、地域住民が主体的に実施できるように指導していくべきである。
・地域、保存会、学校等のネットワークや連携の核となる必要性は感じる。
・県と市町村、市町村相互間の連携を図り、県域全体の文化芸術の振興を図ることが必要と考える。(研修テーマを地域伝統文化に限定せず文化全般としているが、県内の文化行政担当者、文化施設担当者を対象に「市町村文化行政ネットワーク会議」を実施している。
・現在に至る迄の歴史を鑑み、各団体等の自主性を尊重する。(県、市町においてはサポートでよいと思っている。)
・市政施行の記念行事にあわせ、行政と団体等とが共同企画で実施した。
・従来のように、行政中心に企画・運営するだけでなく、民間の団体(NPO等)、企業を含めた実行委員会で構成し、これまでの事業にない内容の企画や運営の強化をはかっていこうと考えている。
・町をはじめとした町内の各団体が初午祭実行委員会を組織し、祭りを運営している。また、町民芸保存会が各芸能へ補助を行っている。
 
(2)地域伝統芸能の保存・継承における「楽しさ」「おもしろさ」の重視
・「文化財だから」「観光のためだから」といった動機での保存・継承には限界がある。いかに地元が保存・継承に真に前向き(楽しさもその一つ)に取り組めるか、そのための支援をどうするかを考える必要がある。
・基本的には地域伝統芸能は地域に根ざしたものである。継承活動を通じて世代の連帯感、世代間の交流を深めることができる。特に上演会での発表や映像記録化といった目的があると、その効果は高まる。
・地域で開催される民俗芸能大会等の開催を通じて、県民に楽しみながら地域の伝統芸能への理解を深めてもらうとともに、担い手の活動の場を提供する。
・親が持つ保存伝承の気持ちを子どもたちが自然に感じられるようにすることが大切。
・後継者の親睦事業を実施している。
・踊りコンクール等の実施
・伝統芸能を継承していく際に、演じる楽しさ・おもしろさをわかってもらうために指導に工夫を凝らす必要がある。
・「楽しさ」等の重視も普及に必要であるが、伝統性が損なわれないよう注意が必要である。
・伝統芸能が継承されていくためには、関係するすべての人々が、活動の中に楽しみやおもしろさを感じることが必要である。
・伝承活動を継続していくためには、楽しさやおもしろさ、やりがいなどが感じられることが必要であり、そのためには芸能の発表の充実が大切である。
・子供達においては学校行事や町の行事等の発表の場があればそれに向けて練習に励み技術も上達している。
・「楽しさ」「おもしろさ」は保存活動に参加するきっかけとしては大切なことであるが、あまり追求しすぎると本来の姿が変わっていくことも懸念される。
・県民に本物の芸術・文化を直接体験してもらうことが大変重要と考えており、この一環として伝統芸能を特に若い世代へ普及するためには、「楽しさ」「おもしろさ」は不可欠な要素と思われる。
・伝統芸能はこどもからお年寄りまでが同じ場所・時間を共有でき、世代を超えたコミューケーションが図られるものであり、その体験を通じてこども達は楽しさ、厳しさ、達成感等を感得する。これが地域への愛着を育むと同時に人生を自らの力で切り開き歩み続けることができる“生きる力”となるのである。したがって、単に「楽しさ」は当然大事な要素ではあるが、「楽しさ」のみを重視する保存・継承では、真の地域伝統芸能の伝承にはつながらず、地域づくりは図れないものと考える。
・広島県北各地で盛んに行われている神楽は近年楽しさ面白さを重視した演出が増え、観客からもおおむね好評である。
 地域伝統芸能の裾野を広げるという観点からは、このような手法も一つの手段と考えるが、伝統的な形態の伝承という観点からは、「楽しさ」「おもしろさ」のみに重点を置くのではなく、意識して形態を保存していく必要があることを啓発することも重要と考える。
・「楽しさ」「おもしろさ」が保存・継承の一役を担っていると考えている。
・機会があれば行政としても発信していきたいと思っている。
・豪華絢爛・勇壮華麗な祭り等が、より一層楽しい祭典となるよう工夫している。
・踊り連に、一般の人が参加しやすい方法を取り入れている。
・体験活動を重視し、ビデオ等の活用を充実させている。
・博物館・資料館・文化財センター等での展示、広報、体験学習教室等の企画
 
(3)小中学校における地域伝統芸能の教育の充実
・地域に固有の伝統芸能を継承、発展させるためには、様々な機会を捉えて、将来の担い手となる子どもたちが伝統芸能に直接触れ楽しむ機会を設定することが重要であり、学校教育関係者との連携・協力を図りながら参加・体験型の文化事業開催を促進することが必要である。
・地域によっては総合的な学習の時間等で積極的に取り入れていると聞いている。このことは将来的に望ましいことであるが、直近している担い手不足への対応を考慮し、生涯学習の観点から大人に対する教育も地域再生の観点からは必要と思われる。
・今後、地域伝統芸能の伝承に積極的に取り組む学校や団体に対する支援についても視野に入れていきたい。
・「伝統文化子ども教室事業」を利用促進、「小中学校の総合学習」での地域伝統芸能の取り上げなど。
・学校教育に位置づけることは義務的になるのでふさわしくないとする考え方がある一方、祭り実施地域の小中学校は午後から休校であったり、クラブ活動として実施、総合的な学習の時間を活用、文化施設等での学習機会の提供しているところがある。
・伝統芸能を学校教育に導入することは後継者育成・文化の活性化の面から重要で効果的であると考える。
・文部科学省・文化庁関係で行われており、今後も重視すべきと考えられる。
・小さい頃から伝統芸能に触れる機会を設けることは、後継者の担い手の育成につながるだけでなく、郷土を愛する心を育むことに効果的である。
・総合的学習の時間において学んだり、運動会のプログラムの一つとして芸能を演じたりしている。
・小学校の体育館で人形浄瑠璃公演を行うとともに、実際に人形に触れる機会を設ける。
・地域固有の伝統芸能を誇りにする意識の啓発、涵養が必要
・子ども○○伝統文化伝承事業として、子どもたちの民俗芸能に対する理解と認識を深め、併せてその保存伝承を図る発表会として、平成16年度からの新規事業として「○○県こども民俗芸能大会」を開催。
・小さい頃から、地域に古くから伝わる芸能に触れる機会を与えることは、その後の伝承活動への参加に効果的と考えられる。また、地域によっては、過疎化などによって伝承者が減少し、小中学校の活動に頼らなければ、伝承が途絶えてしまう例も少なくないので、小中学校での伝統芸能教育は今後ますます重要になると思われる。
・各地域において学校教育の一環として郷土芸能保存会の人たちの指導を受け、運動会などの行事で発表を行っている。子供たちにおいては郷土芸能に接するきっかけにもなっており、引き続き実施してもらいたい。
・学校教育との連携は大変重要であるため、国においては文部科学省との連携、協力を是非お願いしたい。
・地域伝統芸能の分野に限らず、子どもたちが優れた舞台芸術を鑑賞したり、実技指導、ワークショップを体験するなど、文化芸術活動に参加できる機会を提供することは重要と考える。
・学習指導要領にもあるように、次代を担う子ども達にとって先人の業績や優れた文化遺産について興味・関心と理解を深めるとともに、伝統を大切にし、国を愛する心情を育てることは、国際社会の進展の中で今後さらに充実を図る必要があると考える。
・「総合的学習の時間」の活用事例として地域伝統芸能教育を提唱するなど、教育関係者にさらに訴えかける必要があるのではないかと考える。
・総合学習やクラブ活動などへの参加が積極的になされている。
・一部の学校であるが、授業の一環として祭りの責任者から説明を受けるなど、体験学習を実施している。
・国の委嘱による伝統文化子ども教室事業の実施。
・青少年の健全育成活動での一環として地域伝統芸能を行う。
・音楽の時間には民揺、運動会では八月踊りをプログラムに入れ、実施している。
・体育祭で、マスゲームの一環として“馬踊り”を踊る。
・町内小学校のうち1校、運動会で保護者と一緒になり、郷土に伝わる踊りを披露。
・町内全児童への文化財案内パンフレット配付。
 
(4)伝統芸能を基礎としつつ、現代的な新しい感覚の導入
・無形の文化である伝統芸能は、伝統を引き継ぎつつ、その範囲内でのその時代に応じた感覚を取り入れることは良いことと思われる。ただし、指定文化財については関係官公庁(文化庁、県教委、市町村教委)との調整は必要
・基本的に、「無形民俗文化財」指定制度の概念は、伝統的な形の保存にあり、文化財課としては保持団体にはできる限り原型をとどめていただく立場にある。但し、そのままでは継承が困難な場合には、芸態の一部の改変や伝承母体の範囲を広げるなどの方策をとらざるを得ない部分もある。
・無理に導入することはふさわしくない。
・民俗芸能については、古来の芸態を維持していくことが原則なので、現代的な感覚を導入することは適当でない。
・地域の文化として多くの人々に親しまれるために、保存・継承だけでなく、現代に即した形に新しい感覚を取り入れていくことも、活用方法の一つとして考えられる。
・一挙手一動足の所作の保存、継承が伝承芸能であり、新しい感覚の導入には慎重であるべき。
・現代的な感覚の導入によって、古くからの伝承が変化していまうことは、文化財保護の対場からは望ましくないが、古い伝統に拘るあまり、伝承者が集まらず伝承が途絶えてしまうこともあり得るので、県としては伝統を守るということと伝承を続けていくという両面から、注意して活動を見守っていくことが必要である。
・各地域において考え方はいろいろである。
・現代的な新しい感覚の導入は必要な時代であると考えるが、それぞれの伝統芸能の持つ本来の姿はきちんとした形で記録保存を行う必要がある。
・伝統芸能の良さを損なうことのないよう十分配慮した上で、新しい視点の導入は必要。「温故知新」を大切にすべき。
・「よさこいソーラン」のように地域民俗芸能を祖形とした新たな芸能の成功例もあることから、改めて地域の民俗芸能の再認識の方法としては、有効と考えられる。
 ただし、その場合もオリジナルが適切に保存されることが前提条件となる。
・ホールで行われる発表会等において、斬新な演出を取り入れたり、新しい世代等へ広めていく工夫が必要である。
・現代的な感覚の導入は困難な面もあるが、工夫をしている。
・初午祭の際、町づくり団体が中心になり、夜まつりや手作り馬コンテストなど新たなイベントを立ち上げた。
・指定文化財となると形態を変えることは難しいが、地域の実情に合わせ、参加者の拡大や行事の日時の変更(本来の意味を失わない範囲で)等、今後検討していきたい。
 
(5)地域住民、民間企業、民間財団等を巻き込んだ財政基盤の強化
・複数の財団の助成を受けている。
・地方公共団体の財政状況は、今後とも厳しい状況が予測されることから、地域伝統芸能をはじめとする特色ある文化資源を理解し、その保存活動をきめ細かく支援していく組織作りが必要と思われる。
・行政・企業・財団等の現在の助成制度は現在ハード面中心であり、芸能の運営費確保のための財政・基盤強化のあり方について、設問にある地域の団体等を巻き込み検討すべきと思われる。
・民間助成の積極的な紹介
・地域内の各種機関が行事の重要性を認識してもらうことが先決
・地域住民や観光協会による関連行事の実施
・関連グッズの販売
・教育文化振興財団から毎年3団体に補助をもらっており、国・地方公共団体の財政が逼迫している状況下では今後、民間からの補助の必要性が増していくと思われる。
・企業のメセナ活動として助成を行っているところもあり、連携を行うことは重要と考えられる。
・地域の文化活動の自立を図るためには、地域住民、民間企業、民間財団等が連携して取り組んでいかなければならない。
・意欲のある団体に対して、財政援助を強化していく。
・大変必要なことであり、今後とも理解を求めていく必要がある。
・県文化協会を通して、各自治体の文化協会及び民間文化団体に対して支援を行っている。
・公的な補助制度には限界があるので、民間財団などの助成制度を各市町村教育委員会を通して紹介し、活用してもらっている。また、今後は企業などの理解を得ながら、地域が一体となって祭りや発表会を行っていくことが必要とされる。
・現在は、行政や財団の支援を受けて用具等の整備を行っているが、将来的には地域住民、民間企業、民間団体等が一体となった財政基盤の強化が必要である。
・行政が直接介入しない「民」主導の仕組み・組織づくりが必要。
・民間企業や民間財団等が行っている助成等を積極的に活用するべきだと思うが、一時的なものであるので、組織の健全育成を図るには地域(地域住民)を中心とした財政基盤の強化を図るべきである。
・地域住民、民間企業等が保存会に入り、運営に携わっている。
 
(6)地域伝統芸能の地域間ネットワークの拡充
・県内外の伝統芸能保存団体の交流会等を通じ、それぞれの芸能の共通性や違いを知ることにより、さらに創造活動が触発され、地域伝統芸能の振興につながるものと思われる。
・行政・住民・企業等のネットワークに加え、各芸能保存団体間の連携も今後必要と思われる。
・県内3市で民俗芸能保存団体連絡協議会を設置。今後、全県対象の協議会が必要と考えている。
・千葉県民俗芸能連絡協議会の活性化
・平成16年3月に、○○地区(○○市など1市5町)の地域伝統芸能団体が参加して、相互の情報交換や交流を深めていく組織として「○○地区郷土芸能団体等ネットワーク」が発足し、発表機会の拡充等に活用されている。
・他県の団体と交流
・県内の無形民俗文化財保持団体70団体が会員である県民俗芸能保存協会を設立し、事務局を当課に置き、保存会どうしの連携の拡充に努めている。
・平成16年度は隣県2県で開催された民俗芸能大会に団体を相互に派遣し、出演いただくなど、地域を越えた民俗芸能の交流を図っている。
・地域間の連携も重要と考えられる。
・神楽競演大会の実施
・民俗芸能まつりの実施(市内の団体以外に市外の団体を招いて開催)
・伝統文化を地域活性化につなげていくために、その取り組みのノウハウ等の情報共有や情報交換の場が必要である。
・市町村ごと、保存会ごとではなく、広域的な地域や芸能ごとの発表会の開催や協議会などの設置により、地域ネットワークが広がることが望ましい。
・地域の伝統芸能はそれぞれの地域で保存・継承をはかりつつも、広域での郷土芸能祭の開催など地域間ネットワークが必要な時代である。
・地域間の「交流」を図ることにより、伝統芸能を継承し、更なる発展を促すべきと考える。
・全国的な組織(全民芸等)の加入情報紹介や各種交流会開催については、市町村を通じて関係保存会等に周知するよう努めている。
・現在行われているブロック別民俗芸能大会等の参加を契機に、地域伝統芸能が活性化するといった事例もある事から、他地域との交流の場は必要と考える。
 また、保存団体が抱えている問題は共通点が多いためネットワーク化して対処法等の情報を共有化することは問題解決への有効な処方と考えられる。
・近隣の自治体と連携して誘客促進と観光振興を図るため設置した組織で、各自治体の祭りの広域キャンペーンに取り組んだことがある。


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