日本財団 図書館


2. 寄贈対象17大学に対する寄贈図書の選定・調整
 寄贈図書については、寄贈対象大学の教育・研究分野、地域性、蔵書内容等を考慮し、大学毎に特徴づけを行い、当該分野の図書の拠点・重点大学として、センター的役割を果たす大学の形成を目標として図書の選定を行なった。
 各大学に対する寄贈図書の選定についての基本的な考え方及び重点分野は、図書寄贈後のモニタリングの結果や大学の合併などの状況変化等を加味、一部修正し次のとおりとした。なお、寄贈図書は、日本科学協会において、寄贈計画原案を作成し、各大学と調整のうえ、決定した。
1)黒龍江大学・・・辞書研究所を設置しているので、特に内外の人名・地名事典などのほか名鑑類もここにまとめる。専門図書については、経営学・会計学関係の専門書のほか歴史・思想史等の分野の図書を重点的に寄贈する。
2)ハルピン医科大学・・・中国医科大学と重複しない学会誌や紀要のほか研究機関の関係レポート類及び薬学・薬理関係の学会誌・医薬関係出版社の雑誌及び製薬会社の技報などを重点的に寄贈する。また、日本語学習に活用できる辞書・事典その他の和書を寄贈する。
3)延辺大学・・・日本語教育に力を入れており、「日本学研究所」を設置しているが、他の大学と比較して日本語教材が特に不足しているため、日本語及び日本の文学・歴史、政治、経済に関する図書のほか、事典・辞書類を重点的に寄贈する。更に、合併により、医学院及び農学院を併設しているので、この分野も寄贈の対象とする。
4)吉林大学・・・政府関係の白書類を本大学にまとめる。専門書については、情報科学・数理統計・法律関係の図書類のほか北東アジア経済関係の図書や雑誌を重点的に寄贈する。また、2000年6月、吉林工業大学、長春科学技術大学、長春郵電学院及び白求恩医科大学と合併し、2004年には、軍需大学と合併したので、工学及び医学、牧畜・農業関係の図書も寄贈対象に加える。
5)長春師範学院・・・日本語教育及び教育方法に関する図書、また、スポーツ、音楽、美術及び日本文化事情に関する図書を寄贈する。また、師範学院であることを考慮し、理工関係の分野についても一般的・基礎的な図書は寄贈する。
6)中国医科大学・・・臨床医学関係の学会誌及び雑誌などを重点的に寄贈する。また、日本語学習に活用できる辞書・事典その他の和書を併せ寄贈する。
7)大連外国語学院・・・日本語および日本文化事情のほか、法律・経済関係のビジネス書や実用書及び観光関係の図書が適するので、これらの分野の図書を重点的に寄贈する。また、服装デザイン学科が設置されているので、この分野の図書も寄贈する。
8)清華大学・・・中国におけるトップクラスの理工系総合大学である。1999年6月に日本語学科が創設されたので、この分野の図書の充実を目標にし、日本語関係の教材図書(一般ビジネス書などを含む。)を重点的に寄贈する。
9)南京大学・・・図書館学・新聞学・映像関係の学術誌や年鑑類のほか語学及び宣伝・マーケティング、外交関係及び医学関係(神経薬学、腫瘍薬学、内分泌学、生殖研究、免疫学、分子生物学、分子医学、解剖学、微生物学、寄生虫学)の図書を重点的に寄贈する。また、日中文化研究センターを設置しており、哲学、宗教の図書についての要望も強いので、この分野の図書も寄贈する。
10)江南大学・・・食品科学、工業デザイン、材料工学、情報科学及び環境科学(海洋に関する図書および学術誌)関係の図書を強く希望しているので、この分野の図書を重点的に寄贈する。なお、2001年2月無錫軽工大学が核となり、江南学院及び無錫教育学院と合併し、名称を変更したもので、合併後の大学の要望等を考慮し、日本語及び日本文化事情の図書も寄贈する。また、医学院が設置され、今後免疫学、薬理学、看護学の医学書も寄贈する。
11)上海交通大学・・・交通―特に造船・海洋工学―・情報通信及び機械、電気、物流分野を主体とした中国のトップクラスの理工系総合大学である。1999年、外国語学院に日本語学科を設置し、日本語教育にも力を入れており、この分野の図書を要望しているので、日本語及び日本文化に関する図書を重点的に寄贈する。また、農業院も設置し、この分野の図書も希望しているので寄贈対象に加える。
12)寧波大学・・・水産、航海、造船に力をいれているので、この分野の図書と、中国における日本語教育の評価が高いことを考慮し、日本語、日本文化関係の図書を重点的に寄贈するものとする。このほか、経済発展地域であるので、経済関係(特に国際金融、貿易関係)及び医学院を設置しているので医学関係の図書も寄贈対象に加える。
13)広西師範大学・・・中国で最も歴史のある師範大学の一つであるが、法学、経済、電子、化学の学部も設置しており、総合大学化してきている。主に日本語、日本文化、教育管理、学校教育の図書を重点的に寄贈するが、理工系の専門図書も対象に加える。
14)牡丹江医学院・・・臨床医学、医学映像学、麻酔学、製薬工学、医学検査、看護学を重点的に寄贈する。周辺の病院は同学院の図書をよく利用しているので、その他幅広い医学図書を寄贈する。
15)黒龍江東方学院・・・日本語の言語、経済、貿易、コンピュータの領域を重点的に寄贈する。新しく創設された私立大学であり、日本語の図書はほとんどないので、図書館の蔵書の構造を考えて幅広い領域の図書を寄贈する。
16)遼寧師範大学・・・日本語科が創設されて40周年になり、日本語及び日本文化事情の図書を要望している。また、総合師範大学であることを考慮し、教育関係の図書を、理工関係の分野についても一般的・基礎的な図書を寄贈する。
17)大連医科大学・・・臨床医学、基礎医学、検査医学、美容医学を重点的に寄贈し、映像芸術学院もあるので、この分野のものも寄贈する。また、図書館建設計画を考え、幅広い医学関連図書を寄贈する。
 
3. 図書の寄贈
(1)寄贈実績
 前記2. に基づき寄贈図書を決定し、次のとおり送付した。
 
平成16年度図書寄贈実績
*1:調査協力3大学への533冊の図書寄贈を含む。
*2:平成11年度〜16年度までの累計は、平成12・16年度に実施した調査協力20大学への7,958冊の図書寄贈を含む。
 
(2)逐次刊行物の寄贈
 雑誌等の逐次刊行物については、中国の大学から継続的な寄贈への要望が強いため、逐次刊行物の既提供者に対してその継続な提供を電話又はEメールにより依頼した。その結果、16年度末までに累計104社(前年度累計108社)から累計7,942種(前年度累計8,611種)について継続提供の内諾を得た。ここのところ、逐次刊行物に対する中国の大学の要望は次第に高まる傾向にあり、それに応じて本会の収集基準も順次見直してきたため、結果的に本年度受入れ逐次刊行物の種類は昨年度より減少した。
 継続提供刊行物の本年度の送付状況は次のとおりである。
 
送付先 継続雑誌数
黒龍江大学 152
哈爾濱医科大学 653
延辺大学 657
長春師範学院 84
中国医科大学 897
大連外国語大学 133
清華大学 20
南京大学 481
江南大学 967
上海交通大学 1,140
寧波大学 1,335
広西師範大学 862
牡丹江医学院 64
黒龍江東方学院 455
大連医科大学 42
合  計 7,942
 
4. 教育・研究図書有効活用プロジェクト推進委員会の開催
 平成16年5月に第6回委員会、平成16年10月に第7回委員会を開催し、各委員からの有益な意見・提案等をプロジェクトの推進に反映させた。
 平成16年5月、「教育・研究図書有効活用プロジェクト」推進委員会規程を一部改正した。
 
5. 図書寄贈式の実施
 次の4大学に対して、日中両国関係者の出席のもと図書寄贈式を実施した。
 なお、中国医科大学、哈爾浜医科大学、黒龍江大学から中国に対する多大な貢献により笹川陽平氏(日本財団理事長)に対し名誉教授の称号が授与された。
(1)中国医科大学に対する図書寄贈式
・期日  平成16年9月24日(金)
・場所  中国医科大学
・出席者 約100名
(2)黒龍江大学、哈爾浜医科大学、黒龍江東方学院に対する図書寄贈式
・期日  平成16年9月25日(土)
・場所  黒龍江東方学院
・出席者 500名
 
6. 「第1回笹川杯日本知識クイズ大会」の実施
 中国における日本の社会・文化・歴史等に対する関心と理解を深めるとともに、寄贈図書の活用率の向上、日本語学習意欲の高揚及び日本語教育のレベルアップと拡充を図るため、「第1回笹川杯日本知識クイズ大会」を実施した。
 平成16年9月25日、日本語学科を設置している哈爾濱市所在の8大学(哈爾浜工業大学、哈爾浜工程大学、黒龍江大学、哈爾浜理工大学、哈爾浜師範大学、東北林業大学、哈爾浜医科大学、黒龍江東方学院)の500人の参加を得て、黒龍江大学に委託し開催した。優勝大学には、副賞として8日間に亘る日本訪問の機会を授与した。


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