7. 「第3回中国大学図書館担当者訪日交流」及び「第1回笹川杯日本知識クイズ大会」優勝者等日本招聘の実施
中国の寄贈対象17大学の図書館担当者等については、日本の図書関係者との交流、図書情報の交換、日本の社会・文化の実地見聞等を通じ日中両国の学術の充実と相互理解の深化を図るため、「クイズ大会」優勝大学学生等については、次代を担う若い人材に実体験を通して日本を深く理解し友好意識を高める機会を提供し、相互信頼に基づく日中関係の構築に資するため、次の通り日本招聘を実施した。
・期間 平成17年1月17日(月)〜平成17年1月24日(月)(8日間)
・招聘者 第3回中国大学図書館担当者等訪日団(17名)
第1回笹川杯日本知識クイズ大会優勝大学等訪日団(7名)
・実施内容
(1)勉強会の開催
日本女子大学文学部教授 田中功氏を講師として「日本における大学図書館の現状」というテーマで勉強会を開催した。最新のデータに基づく日本の大学図書館事情を紹介するとともに、図書館管理に関する情報についても具体的に紹介し、日本の大学図書館事情について広範な理解を図った。
(2)寄贈図書に係わる整備作業現場の視察
本会が寄贈図書の整備作業を委託している(株)ヤマタネの鶴見倉庫の作業現場を訪問し、作業(棚入れから保管、選定リスト作成、ラベル作業など中国に輸出される前段階までの一連の作業)過程を視察することにより、図書寄贈の流れと寄贈図書への物心両面での配慮についての理解を深めた。
(3)図書館の視察
国立国会図書館、立川市立図書館、国際基督教大学図書館、早稲田大学図書館と組織の異なる4つの図書館を紹介し、日本の図書館に対する広範な理解を図るとともに、訪問先の担当者との情報交換等により交流を深めた。
(4)日中学生の交流
「クイズ大会」学生と国際基督教大学の有志学生との交流の場を設けたが、それぞれの国特有の事情、同世代の若者に共通する普遍的な話題について活発に意見が交わされた。日中双方の学生とも根底には相手国を理解したいという意識があり、国は違っても同じ世代の若者の考えることにさほど変わりがないことや、互いに友好意識を持てる相手であることを認識できる機会となった。
(5)日本の自然、文化施設、地場産業等の見学
富士山を望む箱根散策、箱根彫刻の森、東京ディズニーランド見学、雪印乳業(株)横浜チーズ工場等を見学することにより、風物、文化、社会、産業等を通じ多角的な日本理解を図った。
(6)CD-ROM版「採集と飼育」の受領
本会が刊行してきた自然観察誌「採集と飼育」(月刊)の1939年から1990年までの52年間分(598号)の記録が南京大学の助成により電子化され、本会の創立80周年記念式典において、CD-ROM版「採集と飼育」が南京大学の訪日団員から同大学を代表して本会に寄贈された。
1)図書の収集においては、企業や大学・研究機関の図書館、出版社その他個人など、多くの方々のプロジェクトへの賛同と図書提供の協力が得られ、169,000冊余を収集することができた。図書の寄贈についても目標に掲げている150,000冊を大幅に上回り239,000冊余に達した。
2)日本においてはスペース、電子化などの関係で処分せざる得ない貴重な図書情報を中国の大学に寄贈することにより、図書の有効活用及び貴重情報の保存、日中の情報の共有に繋がった。
3)中国の大学では経費不足のため外国語図書は購入困難な状況にあるが、日本語図書(英語図書も含む)の寄贈は、こうした状況の改善のほか、継続雑誌の欠号の補充、シリーズ図書の補完、蔵書構成の適正化などにより、図書館の充実に大きく貢献している。
4)寄贈図書は講義用の教材、研究を纏める際の参考資料として、また、卒業論文の資料としても大いに活用されている。
5)最近の日中関係は必ずしも友好的とは言い難い状況であり、両国において相手国に対する理解の深化が差し迫った課題となっているが、国際協力事業は一朝一夕に真の相互理解に繋がるというものではなく、その成果は中々現れ難いものである。こうした状況の下、図書の寄贈とともにハルピン市で開催した「第1回笹川杯日本知識クイズ大会」は、日本語学習意欲の高揚のみならず、中国における日本理解の深化と友好意識の高揚にも繋がるものであり、非常に効果的に機能している国際協力事業である。
1)本プロジェクトは、提供者から図書の提供を受けるという「受身の収集」の性格上、寄贈方針に沿って本会が寄贈したい図書、或いは中国側が望む図書が必ずしも収集できるとは限らないが、寄贈の「質」を確保するため、様々な方法で提供者に働きかけ、「要望する図書」が収集できる「能動的な収集」に努めてきた。
さらに、本年度は、これまでの働きかけに加え、幾つかの新たな働きかけ(地域図書館への依頼、地方自治体の首長への協力依頼等)を試みたが、初めての依頼のためか、プロジェクトに対する認知度が低く、反響は今ひとつ伸び悩んだ。しかし、今後、こうした働きかけを継続していくことにより、プロジェクトの周知を図り、より能動的な収集に繋げる必要がある。
2)図書の寄贈については、年度内3回の送付で合計239,300冊となり、寄贈累計は当初から掲げてきた目標100万冊を大きく上回り1,182,157冊に達した。そのため、新たな目標を200万冊に設定し、目標達成に向けて努力してきたが、プロジェクトの更なる発展を期すためには、寄贈対象大学の追加、中国における送料の中国側負担への移行等、合理的な実施方策について今後も引き続き検討していく必要がある。
3)将来に亘る発展的な日中関係を期す時、次代を担う若者の日本理解の深化と日本に対する有効意識の高揚を図ることが重要となってくるが、「笹川杯日本知識クイズ大会」は非常に効果的な国際協力事業なので、今後その開催地域を広め、最終的には寄贈対象大学全てを包括するまでに拡大することが目標である。
4)プロジェクトをさらに発展させるため、中国に寄贈した図書がこれまで以上に有効に活用される関連事業の開発を目指す必要がある。
|