日本財団 図書館


ごあいさつ
 日本科学協会は「教育・研究図書有効活用プロジェクト」をはじめ、笹川科学助成事業など様々な事業を展開し、科学・技術の振興と国際交流の促進等に幅広く貢献して参りましたが、お蔭さまで2004年6月をもちまして創立80周年を迎えることができました。ご支援・ご協力頂きました皆様方に対しまして、心から深く感謝申し上げます。
 本協会の主要な事業のひとつである「教育・研究図書有効活用プロジェクト」は、日本の出版社、企業、大学・研究機関等の図書館などのご協力により図書を提供していただき、これらを希望する中国をはじめ、アジア近隣諸国の大学や研究機関に寄贈し、学生、教職員及び研究者による活用を通じ、国際的な学術交流の促進と友好親善の増進に貢献するというものであり、当面は中国の大学に絞って実施しております。
 出版社、大学、企業、その他多くの方々のご理解とご協力をいただき、1999年のプロジェクト開始以来これまでに1,280,000冊(平成16年度169,176冊)の図書の提供を受けることができました。
 これらの貴重な図書の寄贈にあたっては、寄贈対象となる大学が当該地域における専門分野の拠点として重点分野を担い、中核的役割を果たす大学図書館の形成を目指すという基本方針に基づき、分野・内容等を考慮のうえ適切に選定するとともに中国の大学と調整し、平成17年3月までに1,182,157冊(平成16年度239,300冊)の図書を寄贈いたしました。
 また、本年度から始めました「笹川杯日本知識クイズ大会」及び3度目となる「中国大学図書館訪日交流」は図書寄贈から発展した交流事業でありますが、これまで築いてきた日中の絆を更に深めるとともに両国間における異文化理解に繋がる事業であり、相互信頼に基づく日中友好関係構築の礎になるものと大いに期待しております。
 ここに、平成16年度事業の実施状況等をとりまとめ、報告書を作成いたしましたので、皆様のご批評を仰ぎ、このプロジェクトの発展に活かすことができれば幸甚に存じます。
 日本科学協会は、所期の目的達成のため大いに努力する所存でありますので、これからも引き続きご支援賜わりますようお願い申し上げます。
 最後に、本プロジェクトの推進に全面的ご支援を賜わっております日本財団をはじめ、図書を提供していただいた方々並びにプロジェクトの推進にご協力いただいております関係各位に対しまして、深甚なる謝意を表するものであります。
 
平成17年4月
財団法人 日本科学協会
理事長 濱田隆士
 
平成16年度
「教育・研究図書有効活用プロジェクト」年次報告書
はじめに
 本事業の目的は日本の出版社や企業、大学・研究機関及び一般の方々から提供された図書を中国などのアジア近隣諸国の大学・研究機関等に寄贈し、教育・学術研究への活用を通じ、相互理解の促進と友好親善の増進に貢献することである。
 今年度は、1999年の開始以来5年間の成果を踏まえて、日中両国関係者の協力を得て、日本国内で169,000冊(累計1,280,000冊)の図書を収集し、中国の17大学に対して239,300冊(累計1,182,157冊)の図書を寄贈した。
 また、図書の寄贈に加えて、中国の哈爾濱市における「第1回笹川杯日本知識クイズ大会」の開催、日本における中国の大学図書館の担当者及び「クイズ大会」優勝学生等の招聘など、人物交流の面においても大きな成果を収めることができた。
 ここに、平成16年度の教育・研究図書有効活用プロジェクトの全般な実施状況について、次のとおり報告する。
 
1. 図書収集
(1)図書の収集活動
 図書収集は下記の方法により、日本国内の出版社や企業、大学・研究機関及び一般の方々に協力を呼びかけた。
 
(1)出版社への提供依頼
 新刊図書の収集を図るため、主に関東地区の出版社に対して本協会理事長、日本財団会長の連名で図書提供への協力依頼状を送付した。11月に205社宛、3月に214社宛と、2度の図書提供依頼を行った。この際、本年度からの試みとして、「断裁処分」の図書まで収集対象とすること、出版社の決算、「処分」の時期に合わせて依頼状を発送するなど、より良い反響を得るための工夫を凝らした。その結果、年度内に計42件/24社(前年度31件/22社)から19,257冊(前年度30,600冊)の図書提供を受けた。前年度と比較して大口提供の件数が減ったため、提供件/社数が増加しているにも拘らず、提供冊数は減少している。しかし、1タイトルで多数提供というケースが減ったため、効率的な収集に繋がったと言える。
(2)専門図書館協議会の会員への提供依頼
 関東・関西地区の専門図書館協議会事務局を通じ、会員(関東地区・400機関、関西地区・100機関)に対しFAXによる図書提供の協力依頼を9月と2月に実施した。両回で合せて8件(前年度28件)から反響があり、提供冊数は7,798冊(前年度35,000冊)であった。提供件数、提供冊数とも前年度より大幅に減少した。
(3)公立図書館等への提供依頼
 本協会が実施する科学研究助成に係る募集ポスター等資料の関係機関への配布に際し、全国の都道府県立、市・区立図書館 445館(前年度434館)に対して文書による図書提供依頼を行なった。これにより12,956冊(前年度179,000冊)の図書を収集した。前年度に比較して提供冊数が大幅に減少しているのは、川越図書館の閉鎖に伴う全蔵書の一括(150,000冊)受入れという特異なケースが前年度にあったためである。
(4)地域図書館への提供依頼
 首都圏1都3県について、上記(3)の公共図書館より下位レベルの地域図書館734館に対して、本協会理事長、日本財団会長の連名で図書提供依頼状を送付した。本年度が初めての試みであったが、プロジェクトに対する問い合わせが数件あった。
(5)地方自治体の首長への協力依頼
 首都圏1都3県の地方自治体の首長146名に対して、本協会理事長、日本財団会長の連名で、地方機関への図書提供の取計い等の協力依頼状を送付した。本年度が初めての試みであり、また、図書に直接は関わっていない首長への協力依頼であったため、反響は少なかったが、2つの自治体の首長の取計いにより約1,300冊の図書を収集した。
(6)日本私立大学協会会員への提供呼びかけ
 同協会が8月に開催した「大学図書館司書主務者研修会」において、参加者に対して図書提供を呼びかけた。本年度初めての試みであり、今後、継続的に呼びかけていく予定である。
(7)情報科学技術協会会員への提供呼びかけ
 10月に開催された「第1回情報プロフェッショナルシンポジウム」(独立行政法人科学技術振興機構及び社団法人情報科学技術協会の共催)においてプロジェクトの実施状況について報告するとともに、「シンポジウム」予稿集にプロジェクトの告知広告を掲載することにより、会員及びシンポジウム参加者に対して図書提供を呼びかけた。本年度初めての試みであり、今後、継続的に呼びかけていく予定である。
(8)業務委託先経由での提供依頼
 本プロジェクトは図書の整備から輸出までの一連の業務に関してトランクルーム業者(3社)と契約を締結し業務委託を実施しているが、この3社は本プロジェクトの趣旨等を取引先に紹介し図書の提供を依頼するなど委託業務外の協力活動を積極的に行なった。この活動によりプロジェクトの認知範囲が広まり、図書収集実績も向上し、広報、収集の両面で大きな貢献をした。委託業者経由による図書の収集実績は、延べ16機関から提供された37,058冊(累積348,800冊)である。
(9)報道機関を通じた提供呼びかけ
 平成12年度には毎日新聞に掲載されたプロジェクト紹介、平成13年度には主要雑誌73誌への広報広告(日本財団企画)、平成14年度には東京新聞上での提供呼びかけにより、提供者は全国規模で増加したが、ここ2年間はマスメディアを通じた広範な呼びかけを行なっていないため、提供件数は、最多時である平成13年度の208件(38,600冊)と比較すると、15年度の82件(9,200冊)、本年度の61件(11,900冊)と急激に減少している。しかし、この減少傾向も15年度までにある程度落ち着き、本年度は提供件数が前年度より減っているにも拘らず、提供冊数は増加しており、安定的変動へと移行したと考えられる。こうした提供の多くは個人の方々からのものであり、数年に亘って継続的に提供してくれる熱心な提供者として定着してきている。
(10)既提供者への継続的な提供依頼
 継続的な提供を電話又はe-mailにより依頼した。
(11)日本科学協会及び日本財団のホームページ上での提供呼びかけ
(12)本会関係者を通じた協力依頼
 
(2)図書収集実績
 前記(1)による収集活動を行った結果、次のとおり協力が得られ、169,176冊の図書を収集した。
 
区分 冊数(A) (A)の全体に占める割合 提供者数(B) (B)の全体に占める割合
企業図書館 39,470 23% 60 25%
大学図書館 13,909 8% 12 5%
出版社 19,257 11% 42 18%
公共機関 64,812 38% 41 17%
公益法人 19,747 12% 23 10%
個人 11,981 7% 61 26%
合計 169,176 100% 239 100%
注)提供者数は延べ人数である。
 
 
※・提供者一覧表(別添1)
・図書収集実績(169,176冊)(別添2)
・トランクルーム業者経由による収集実績  17件/16機関 37,058冊
・収集図書全体の中で、新刊図書或いは新刊図書と同様な図書は26,092冊である。(出版社提供:19,257冊、その他の提供:6,835冊)
 
(3)収集図書の分野
 収集した169,176冊の図書の分野を大別すると下記の表のとおりである。人文系が112,846冊で67%、理工系が28,861冊で17%、医学系が27,469冊で16%であり、人文系が全体の2/3を占め、各分野に偏りが見られた。これは、各分野に関する中国側の要望の高さに反比例した偏りであり、要望の高い図書理工系、医学系図書(ここ5〜10年以内発行のものを希望)については、収集冊数も少なく、全体に占める割合も低くなっている。
 
冊数(A) (A)の全体に占める割合 提供者数(B) (B)の全体に占める割合
人文系 112,846 67% 195 82%
理工系 28,861 17% 21 9%
医学系 27,469 16% 23 10%
合計 169,176 100% 239 100%
注)提供者数は延べ人数である。
 
 
(4)活用率の向上
 収集図書の活用率 の向上及び質の確保を図るため、できる限り図書提供者に下記のような協力を求めて収集した。
(1)提供図書の冊数が大量の場合、事前に提供者の了解を得、現場において寄贈図書を選定のうえ、収集した。
(2)既存の提供図書リストがある場合、事前に入手しそれに基づき選定のうえ、収集した。
(3)主に個人提供者に対しては、寄贈対象図書の基準(内容、発行年、外観等)を説明のうえ、それに沿った図書の提供を依頼して収集した。
(4)図書の提供は基本的に提供者の“善意”に因るものであり、寄贈される図書は「内容の充実した綺麗な図書を」という配慮を以って提供されたものであるが、それらの図書を本会の「業務マニュアル」の「図書収集基準」に基づきさらに精選することにより、活用率は概ね95%を確保している。


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