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9. 一等舞踏(ぶとう)室(ベランダ)
 一等の公室が集中するプロムナード・デッキの一層上はボート・デッキで、一等の客室が左右に並び、周囲が木甲板の一等船客専用プロムナードに囲まれています。このデッキのハウス最後部が、一等舞踏室(ベランダ)になっています。ここにはバーカウンターもあってゆったりとした椅子とテーブルがセットされていますが、床は木製タイル張りでテーブルセットを窓際に寄せるとダンス・ホールに早変わりするようになっています。
 カラースキームを見ると壁及び天井は清楚な(せいそな)オフ・ホワイトに統一され、天井には円形にぐるりとボックス状の照明が配置されて、バーカウンターの左右には藤田嗣治(ふじたつぐはる)に依頼したとされる太鼓をたたく人物(左)と踊る人物(右)の絵画も描かれて華やかなものとなるはずでした。しかし、完成写真を見ると藤田の絵画はなく、また天井照明も一般的なダウンライトに落ち着いていて、落胆(らくたん)です。さまざまな事情があって、変更を余儀(よぎ)なくされたのでしょう。
 
一等舞踏室(ベランダ)のカラースキーム 横浜マリタイムミュージアム
 
一等舞踏室(ベランダ) 世界の艦船
 
10. 一等娯業(ごらく)室(カード・ルーム)
 一等舞踏室(ベランダ)の左舷前が、ポーカーやブリッジなどカード・ゲームを楽しむ一等娯楽室になっています。小さな部屋ではありますが、室内壁面は明るいクリーム色に統一されていて、床絨毯の大胆な配色に加えて椅子張りの緑と赤いソファーが印象的な構成となっています。
 
一等娯楽室(カード・ルーム)のカラースキーム 三菱重工業
 
11. 特別室
 中央エントランス・ホールから船首方向のほど遠くない一画に、居間、寝室、洗面所それにトランクルーム(右舷のみ)を揃えた(そろえた)特別室が両舷に各1室ずつあります。室内の各壁面は色の違った木肌の薄板を組み合わせて作った見事な※(4)象嵌(ぞうがん)細工となっています。波型模様に作り上げた磨き面が美しい。
 装飾設計は、川島甚兵衛が高島屋とともに担当し、ソファー、絨毯は川島が特別にあつらえた織物の芸術品とも言うべきものです。
 特別室のみならず、一等の公室、客室のカーテン、椅子張り、絨毯類は、その多くが特注品で川島が制作したものでした。
 
特別室(居間)のカラースキーム 三菱重工業
 
特別室(居間) 三菱重工業
 
特別室(寝室) 世界の艦船


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