日本財団 図書館


VI-2 実海域で使用した杉樹皮製油吸着材の微生物分解処理実験
 VI-1に記述した平成16年9月発生のブルー・オーシャン号事故において回収した油および杉樹皮製油吸着材を、100m3のバーク堆肥パイルに埋め込み、微生物で分解処理する実験を行った。
 
1 回収油量の推定
 回収した杉樹皮製油吸着材に含まれる油の量を推定するため、油を十分に吸着しているマットの一部を切り取り、油分濃度の調査を行った。マット片3片を採取し、それぞれの重量、面積を測定し、n-ヘキサン抽出重量法により油分濃度を測定した。結果を表−VI.1.1に示す。
 
表−VI.1.1 回収した杉樹皮製油吸着材の推定油分量
サンプル名 重量
(g)
面積
(cm2)
推定マット
重量
(g)
油分濃度
(%)
測定値
推定油分量
(g)
推定油分量
(g)
補正後
マット片
No.1
64 104 1,253 15 188 185
マット片
No.2
67 72 1,895 20 379 376
マット片
No.3
44 63 1,413 14 198 195
コントロール 200 2,025 200 1.5 3
 
推定油分量 :1m2あたり平均1,240g(マット1枚あたり平均252g)
今回使用量 :187m2(マット型:350枚、オイルフェンス型:259m)
推定総油分量:232kg
(マットに一様に油が吸着されているとし、n-ヘキサンにて全量が抽出されたと仮定。コントロールはバージンの杉樹皮製油吸着材)
 
 この計算によると、この分解実験のために使用される油は推定232kgとなる。ただし、写真−VI.1.4などにも見られるように、回収されたマットなどに吸着されている油は濃淡があり、油膜状の海面で使用されたものは油分を多く含んでいないものもあると考えられる。仮に実際の油量が推定値の半分程度とすると116kgが分解実験に供される油という計算になる。
 
2 微生物分解処理実験の方法
 バーク堆肥原料と昨年度の油分分解実験に供した分解残留物を混合したものの中に、事故で回収した油吸着材を埋め込み、円錐形パイル状に被覆した後、定期的に攪拌(切り返し)を行い、油分濃度の変化を調査した。実験のフィールドは、II-2の実験と同様に、ぶんご有機肥料(株)(大分県竹田市)内に設けた。
 バーク堆肥はホイールローダのバケットで容積を計量した約100m3ほどを用いた。嵩比重が約0.5であることから約50tであると推定される。全体の1/3程度に積上げたバーク堆肥原料に偏りが出来ないように油吸着材を順次設置し(写真−VI.2.1〜2)、3層に埋め込み、バーク堆肥原料にて被覆した(図−VI.2.1)。パイルの形状はやや膨らんだ円錐台状で、上面φ4m、底面φ8m、高さ3.5m程度となった。
 バーク堆肥原料は発酵開始から数ヶ月経過した微生物活動の活発なものを使用した(油分濃度0.03%)。昨年度の油分分解実験に供した分解残留物は、分解開始後約1年が経過したもので、油分濃度は0.09%である。これらを9:1で混合したものを実験に使用した(油分濃度0.03%)。
 実験開始時の油分濃度は、先述の推定油量232kgとすると0.46%に、半分の116kgとすると0.23%となる。
 なお、攪拌、サンプリング、測定手法などはII-2の実験と同様の方法で行った。測定項目は以下のとおりとした。
 
(1)油分濃度(n-ヘキサン抽出重量法)
(ア)2週間に1回程度(攪拌時毎)
(イ)曲線がほぼフラットになる時期(4〜6ヶ月程度)まで計測
(2)目視観察など(油の臭気、手指への油分付着など)
(3)パイル内の温度(週1回程度)
 
図−VI.2.1 バーク堆肥パイル断面への油吸着材設置の概念図
 (1)〜(3)の各断面に偏りが出来ないように油吸着材を順次埋め込む
 
写真−VI.2.1 バーク堆肥パイル断面への油吸着材設置の様子
 
写真−VI.2.2 バーク堆肥で油吸着材を被覆する様子


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION