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(3)微生物相の調査(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE))
 油分解前後の微生物相の変化を調べたところ、油分解後には特異的にCFB(サイトファーガ・フラボバクテリウム・バクテロイデスグループ)が確認された。CFBは石油分解菌として働くとの報告がある微生物であり、この微生物が油分解に関与している可能性を示している。
 詳細な内容はIII-2に述べる。
 
(4)目視観察など
 油の臭気については、40〜60日後程度までは、本来のC重油の臭気から若干変質した感じを受けるものの、いまだ明確に油の臭気であると判別可能な程度に感じられた。その後は徐々に臭気が変質し、もとの投入物が重油であることを知らない人間には油の臭気どうか判別がつかない状態に変化した。
 また、60日経過時点で手指への油の付着は感じられず、周囲の水溜りにおける油膜も観察されなかった。
 
(5)パイル内の温度
 バーク堆肥パイル内の温度変化を図−II.2.13に示す。実験当初はバーク堆肥の活性な状態とされる60℃前後を保っていたが、徐々に温度が低下する傾向が見られた。開始後90日経過時点からはほぼ50℃以下を推移し、180日経過時点でほぼ40℃程度となった。この傾向はこれまでの36m3の実験とほぼ同じものである。
 温度が低下する原因は、微生物活動の低下、外気温の低下などが考えられる。また、切り返し直後は温度が一旦低下し、その後上昇する傾向があるが、この現象は通常のバーク堆肥製造過程でも同様であり、好気発酵が酸素供給により活発化することを示していると考えられる。
 
図−II.2.13 バーク堆肥パイル内の温度変化
 
(6)まとめ
 今回の100m3バーク堆肥パイルによる実用フィールド実験において、投入したC重油の油分濃度は減少傾向となることが明確になった。開始直後の油分濃度(約0.6%)は60日後に約1/2程度に、120日後に約1/5〜1/6に低下していることが判明した。一方、120日後以降には油分濃度に大きな変化は見られなかった。また、開始から30日後までは値が大きく外れたものが見られるが、それ以降はほぼ安定した値となった。
 36m3パイルによる実験(15年度)との比較においては、油分濃度の減少傾向は共通する結果が得られた。また、今回の実験の方が油分濃度はより安定に減少する傾向があるほか、各時点における油分濃度測定値のバラつきがより小さいことが確認された。
 油分の定性分析により、油分解過程における残留油分のクロマトグラムにおいて、投入したC重油そのもの(図−II.2.7)のピーク分布とほぼ一致するものの、いずれもC重油の組成成分炭化水素のピーク強度が減少していることが判明した。
 油分解前後の微生物相の変化を調べたところ、油分解後には特異的にCFB(サイトファーガ・フラボバクテリウム・バクテロイデスグループ)が確認された。CFBは石油分解菌として働くとの報告がある微生物であり、この微生物が油分解に関与している可能性が示された(微生物相の変化の詳細はIII-2に述べる)。
 なお、本実験の取り組みについて大分合同新聞紙面(H17.1.27付)に紹介された(詳細はVII-3に述べる)。


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