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(環境教育テキスト)
瀬戸内海−里海(さとうみ)学入門
社団法人 瀬戸内海環境保全協会
 
 このテキストは(社)瀬戸内海環境保全協会が、浜辺などの生き物を見て触れることにより、瀬戸内海における環境保全の大切さを理解することを目的に、日本財団の助成を受けて、平成14年度から16年度にかけ、瀬戸内海7カ所(白浜、大阪湾、備讃瀬戸、備後灘、宮島、伊予灘、響灘)で行った「浜辺の観察教室」の取りまとめとして作成しました。表紙の写真は宮島での観察教室のひとこまです。
 このテキスト作成のため、平成15-16年度には下記のメンバーによる委員会が設置され、内容に関する議論が行われました。
 
(財)地球環境戦略研究機関
 淡水資源管理プロジェクト 上席研究員   浅野 能昭
(財)広島県環境保健協会 地域活動支援センター長   薦田 直紀
学校法人盈進学園 盈進中学高等学校教諭        古本 哲史
地球環境を守る漫画家の会事務局長           安井 英彦
九州大学応用力学研究所教授              柳 哲雄
 
 「浜辺の観察教室」の内容に関しては、ホームページ「せとうちネット」(http://www.seto.or.jp)をご覧ください。
 また白石通弘氏、渡邊桂子氏、創風社出版社の大早友章・直美氏には原稿を読んで、貴重なコメントを頂きました。大成経凡氏には、塩田に関する貴重な資料を提供して頂きました。国立環境研究所堀口敏宏博士、愛媛県立松山南高校丸尾秀樹教諭、北九州市環境科学研究所山田真知子博士には、貴重な写真を提供して頂きました。九州大学応用力学研究所石井大輔技官・藤井晴美事務補佐員には、原稿作成に協力して頂きました。以上の方々に感謝します。
瀬戸内海沿岸域における浜辺の観察教室委員会
委員長 柳 哲雄
 
備讃瀬戸の景観
(せとうちネットより)
 
1. はじめに ―瀬戸内海の環境保全を考える―
 瀬戸内海の島々の緑、陽光にきらめく海面、長大橋、花咲く段々畑は美しい。足の裏に感じる砂粒の感触、繰り返す波の音、潮の香りは気持ちよい。瀬戸内海の魚はおいしい。このような瀬戸内海の豊かさに恵まれた私たちは、今後もその恵みを受け続け、さらにその恵みを私たちの子孫にも残していきたいと思っています。そのためには瀬戸内海の環境を「保全(ほぜん)」していく必要があります。
 しかし、環境を「保全」するとはどういうことか、はっきりとわかっているわけではありません。例えば、瀬戸内海のある海岸の沖合に防波堤を作ることは、環境を「保全」することになるのでしょうか? 防波堤により海岸の波の高さは減少し、海岸の砂は移動しにくくなりますが、新しい防波堤のために、堤防付近の砂の動き方が変化して、海岸・海底地形は変わりますし、生態系も変化して、生態環境が「保全」されるかどうかは不明です。
 瀬戸内海で人が行ってもよいこと、行ってはいけないことは、瀬戸内海から恵みを受けている様々な立場の人がよく話し合って、決めていかなければいけません。そのような話し合いをするとき、様々な立場の人々に共通の考え方がないと、話し合いはうまくいきません。瀬戸内海はどのような特性を持っていて、瀬戸内海のどのような面はきちんと保護しなければならないのか、どのような面は少しなら人の都合で変えても良いのか、をよく理解しておかなければいけません。
 そのような共通の理解を持つには、みんなが環境の持っている意味をよくわかっておく必要があります。この本は、瀬戸内海がどのような特性を持っているのか、その環境をなぜ「保全」しなければならないのか、その理由を明らかにし、さらに、今後の私たちと瀬戸内海の関わり合い方を「里海(さとうみ)」という言葉で表せないだろうかということを提案するために作られました。この本の中での瀬戸内海は豊後水道、紀伊水道を含んだ海域(3.2節の地図参照)を指します。
 この本は、環境教育を行う学校の先生、瀬戸内海に興味を持つ高校生などに読んでもらうことを念頭に書かれています。
 
人工衛星から見た瀬戸内海(せとうちネットより)


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