3)入力パラメータに対する出力応答特性
モデルの特性を把握するため、1)堆積物の粒径Φに依存するパラメータ、2)底質による体積散乱に関するパラメータおよび3)海底面のラフネスを表す指数パラメータの3種類のパラメータの変化に対する出力応答を調べた。
a)底質の粒径Φに依存するパラメータ(ρ、ν、δ、w2)
先ず、Hamiltonらに従ってWentworth(1922)によるφスケールを用いた粒度区分によって底質堆積物を表9に示す7タイプとした。
なお、タイプ7のClay(φ=9.5)だけを、表6で示したHamiltonらによる3つの海底地形区分のうち深海平原(Abbysal Plain)に属するものとした。これは、大陸起源の珪質堆積物から構
表9 底質区分による堆積物に関するパラメータ
TYPE |
Sediment Type |
Grain Size
Diameter
(mm) |
Mean
Grain Size
Φ |
Density
Ratio |
Velocity
Ratio |
Loss
parameter
δ |
1 |
Coarse-Sand |
0.5-1.0 |
0.5 |
2.2349 |
1.2702 |
2.59E-04 |
2 |
Medium-Sand |
0.25-0.5 |
1.5 |
2.0796 |
1.2184 |
3.01E-03 |
3 |
Fine-Sand |
0.125-0.25 |
2.5 |
1.9399 |
1.172 |
4.85E-03 |
4 |
Very-Fine-Sand |
0.063-0.125 |
3.5 |
1.8159 |
1.1312 |
5.52E-03 |
5 |
Silt |
0.004-0.063 |
6 |
1.5742 |
1.0532 |
3.61E-03 |
6 |
Clay |
<0.004 |
9 |
1.4131 |
1.005 |
8.26E-04 |
7 |
Abbysal-Clay |
<0.004 |
9.5 |
1.2964 |
1.0021 |
5.92E-04 |
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これらをもとに、表6〜7に示した式を用いて求めたパラメータ(ρ、ν、δ)の粒径φによる変化を図75に示した。
また、図76には、同じく表8に示した式を用いて求めた海底面の凹凸スペクトル強度(W2)の粒径φによる変化を示した。
さらに、図77〜79に、粒径φによってパラメータを変化させた場合のモデル出力を、底質による体積散乱成分、海底面境界面のラフネスによる後方散乱成分、その合計である海底からの全体の後方散乱の3つに分けて示した。
なお、海底面のラフネスを表す指数パラメータγについてはJackson(1986)に従って、γ= 3.25とし、堆積物内の散乱パラメータσ2は、変化させた粒径によって表7の決定方法に従ってσ2= 0.002または0.001として計算を行った。
図79の結果から、ANKOUの観測周波数9KHzを使用した場合、モデルでは入射補角が30度〜60度の範囲では、砂とシルト・粘土の2つのカテゴリはよく分離できるが、粒径の小さなSilt(φ= 6)、Clay(φ= 9)、Abbysal Clay(φ= 9.5)は分離できないことがわかった。
図75 底質の音響物理性質
(Density Ratio=ρ、Velocity Ratio=ν、
Loss Parameter=δ)の粒径φによる変化
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図76 海底面のラフネススペクトル強度(W2)の粒径φによる変化
図77 モデル出力の粒径φによる変化(1)
10・log10[σv(θ)]:底質による体積散乱強度
図78 モデル出力の粒径φによる変化(2)
10・log10[σr(θ)]:海底面のラフネスによる後方散乱強度
図79 モデル出力の粒径φによる変化(3)
10・log10[σv(θ)+σr(θ)]:海底面の全散乱強度
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