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 これらを用いて分類した結果、図54は放射量補正前画像、図55は放射量補正後画像である。特徴量抽出点はどちらも同じ地点を選定した。
 
図54 放射量補正前
 
図55 放射量補正後
 
図56 計算地点
 
 これらより、放射量補正を行う前の画像では、大きく「粘土」と「細礫〜細粒砂」の2種類に分類する結果となり、かつ、泥火山部分と海洋底部分を分類することができていない。放射量補正を行う前に画像は、曳航体直下近傍とビームの端で値が異なるため、テクスチャ解析を行うと、それらの部分で際立った結果が表示されてしまい誤分類が生じる。一方、図55に示す放射量補正を行った後の画像では、泥火山部分と海洋底部分が分類可能であるなど、設定した底質でグルーピングすることができた。これらの結果から、放射量補正を行うことは、画像データからオリジナルの情報を失うことになるが、テクスチャ解析を行うためには、有効な方法であることがわかる。さらに、この図は海面反射データ除去、不良データ除去等前処理を行っているため、これらの影響による誤分類の影響も小さくなっている。
 放射量補正後の紀伊東海沖全域に対して、テクスチャ解析を行った結果を図57に示す。
 紀伊東海沖全域に対しても放射量補正後の画像を使用することにより、グルーピングが可能であることを確認できた。今回作成した画像は、後方散乱強度から作成した画像であるため、一般に使用されている音響画像を用いた場合と比較すると、測線間の濃度のバラツキによる誤分類の影響が小さくなっている。だだし、今回使用した紀伊東海沖全域の画像では、北東部の測線と他の測線とであきらかに濃淡の差があるため、この部分については、テクスチャ結果にも誤分類の影響がみられた。
 
 これらの結果から、「後方散乱強度値による海底画像より底質分類する方法」では、以下のことがわかった。
 
(1)研究対象エリアにおいては、海面反射データ除去、不良データ除去等画像に対して前処理を行うことにより、テクスチャ解析による誤分類の影響を少なくすることができた。
(2)放射量補正は、テクスチャ解析の誤分類の影響を小さくするのに有効に方法である。
(3)後方散乱強度を使用して作成した画像に対するテクスチャ解析は、測線間の濃度のバラツキによる誤分類の影響を小さくすることができる。
(4)研究対象エリアにおいて、「粘土」、「シルト」、「細礫〜細粒砂」の3つにグルーピングすることができた。
 
 これらの結果を踏まえて、次節で、composite roughness + volume散乱モデルから作成した後方散乱強度分布モデルにより底質を推定する。
 
図57 海域全体の分類例(平均)
 
(2)後方散乱強度分布モデルから海底面の凹凸と底質を推定する方法
 後方散乱強度分布モデルから海底面の凹凸と底質を推定する方法では、ANKOUソーナー方程式をもとに求めた後方散乱強度と、composite roughness + volume散乱モデルを使用した後方散乱強度分布モデルとを比較することにより底質を推定する。
1)後方散乱強度データの作成
 前節までに用いた後方散乱強度は、ソーナー方程式を使用し求めたものである。しかし、ここで用いた後方散乱強度は、海底を平らな仮想海底面として求めたものであった。ところが、ここで用いる海域のデータは図61に示した海底地形図などから、完全な平面ではなく凹凸が存在する。例えばラインBが示す第3熊野海丘の泥火山は約60mの標高を持っていることがわかる。composite roughness + volume散乱モデルより求める後方散乱強度分布モデルは、Grazing Angle(入射補角)に対する強度値を示したものである。そこで、モデルの比較をするためには、求めた後方散乱強度を、実海底面を考慮した後方散乱強度に修正する必要がある。そこで、海底面に対する音波の入射角を求め処理を実施した。
 
図59 ラインBの位置


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