更生保護法人 讃岐修斉会
グループ名 |
薬害 |
グループ課題・目的 |
被保護者のうち,薬物で問題行動を起こす人たちを中心として他の者も薬害予備軍として,全員で薬害について研修し,薬害のない新鮮な生活スタイル身につけることを目的とする。 |
プログラム実施回数 |
毎週1回(日曜日)7:30〜8:40 |
実施場所 |
讃岐修斉会別館2F 研修室 |
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プログラムへの出席者
○○病院の医長,施設職員,被保護者全員
施設長がビデオフォーラムで動機付けをし,研修を開始する。
○○病院の医長から「薬物依存」についての話や,その回復のためにはどのようにしたらよいか,また,体験者がどのようにして挫折を乗り越えていったかなどについての話を聞き,渡邉施設長が司会者となり,話し合い,質問などをし,医長から指導を受け,感想文を書く。
プログラムを実施する際に配慮していること
ビデオフォーラムについては,当施設では長年取り組んでいるので,資料も豊富であり,動機付けには適しているように思う。
○○病院の医長には,被保護者の状況について,人権に配慮しながら被保護者の生活状況について連携を密にしている。そのことが,以後の話し合いをスムーズにしている。また,研修の最後では医長と握手をしたり,個別の問題を相談して活路を開いたり,退所後についても指導が受けられるようにしている。
研修のはじめには,必ず鉛筆と紙を渡して,被保護者に感想を書かせるようにしている。そして,それをまとめて保管し,感想文の分析によって彼らの認識がどのように変容しているか,積み上げていくことにしている。
これまでの経過
平成14年に更生保護事業法が改正され,更生保護施設における処遇機能の向上がさけばれて以来,当施設においては,処遇機能向上のため「薬害」の研修についても取り組んできた。また,薬物依存症と見られる被保護者が,感情の起伏が大きく,就労にもこと欠き,潜在的危機感を感じていたので,当施設において「薬害」について積極的に取り組んできた。
3年間の暗中模索を経るなか,昨年からは「薬害」についてのモデル研究の指定も受け,積極的に取り組んできた。時間帯が日曜日の清掃をなくして参加することや,研修の内容を分かりやすく,平易で楽しい研修にしたいという職員の願いが通じて,着々と成果を上げている。
処遇プログラムの場面
(1)プログラム開始前の準備など
「薬害」について研修実施日は,あらかじめ掲示板に研修の日,開始時刻,場所,研修内容,その他注意事項について,掲示物を黒板に張り,被保護者に告知する。
さらに,前日には施設内のマイク放送で全員に周知する。
「薬害」の研修は,週1回(日曜日)の午前7時半から8時40分まで実施している。当日は,朝の清掃をなくして参加しやすいように配慮している。
研修に参加する被保護者は薬物が原因で事件を起こした者に限らず,全員参加が原則である。被保護者以外には,講師と更生保護施設職員が参加をする。
講師とは電話で緊密な連絡をとり,研修開始前30分に来ていただき,事前に施設長と参加者の生活状況等について,人権に配慮しながら情報提供の時間を持ち,円滑な研修が出来るように工夫をしている。
参加案内の掲示物
(2)プログラムの実施状況
薬害研修の講師は,この日は○○病院の診療部長,診療医長の小笠原先生に依頼した。入所者20名のうち20名が参加,施設職員4名,講師1名,計25名で研修を開始した。
ア 集会室に全員が集まり,研修終了後に感想を書くための紙と鉛筆をもらって着席する。
イ 寮長の元気な「起立」,「礼」,「着席」という声から研修が始まる。
「薬物」についての研修の動機付けとして,「ビデオフォーラム」をまず実施する。ビデオ「薬物乱用・親として」を視聴する。
映像による「薬物乱用とその弊害」についてごく自然にその世界に入っていった。
ウ 続いて,小笠原医長の「脳から見た薬物依存とその回復」についての説明があった。黒板と資料を使っての説明なので,被保護者にも十分理解できたように思う。
エ 説明終了後,施設長が司会者となって話し合いをし,被保護者が相互に意見を言い,小笠原医長から指導を受けた。
動機づけ場面の様子
話し合いの様子
(3)プログラム終了後
研修の終末は,いつも,被保護者一人一人が自分の感想をまとめることにしている。小笠原医長や施設長が机の間を回って被保護者の相談にのるとともに,激励するようにしている。最後に,小笠原医長と被保護者一人一人が熱い握手をして,講師と被保護者の心がつながることを希望しながら,研修を終わる。
話し合いの終了後
実施施設からのメッセージ
更生保護施設では,研修の時刻をどのように設定するかがその成否を決定する。
当施設では,日曜日の朝,朝食後一斉に清掃を行うのが通例である。その清掃をなくして研修を行うのであるから,被保護者にとっては参加しやすい条件となっている。
被保護者が参加しやすい時間帯ではあるが,研修ということになるとちょっととまどいを隠せない。そこで,第一に内容を分かりやすく,楽しい雰囲気の中で希望が持てるように配慮した。特に,挫折を乗り越えて生きる喜びを内面化するように配慮した。当初は被保護者の参加について心配したが,内容の良さと外部講師の新鮮さ,さらに,長期の継続によって「次の研修は何ですか」と質問されるようになり,被保護者が研修を期待するようになってきている。
集団で研修を受け,相互に話し合うことにより,個別では味わえない切磋琢磨の面が見えてきている。
処遇効果もだんだん向上し,感想文の質が次第に良くなり,それを読むことによって逆に,施設職員のやる気をかきたてている。(渡邉施設長)
参加者の感想文
覚せい剤 累犯4入(41歳)
私は,覚せい剤で刑務所に4回入りました。このたび,讃岐修斉会で引き受けていただき,毎日仕事に行っています。讃岐修斉会では日曜日の朝,研修の時間があり,いろいろな研修を受けています。今日は渡邉施設長と「薬物乱用・親として」というビデオを見ました。薬物乱用の怖さと,親の悲しみがよく分かりました。刑務所でも,薬物についてのビデオを見たことがありましたが,本気で見たことはありませんでした。今日は,みんなが本気で見ているので,私も本気になりました。覚せい剤は,身も心もだめにしてしまい,親にも迷惑をかけることが分かりました。
また,小笠原医長から「脳から見た薬物依存とその回復」の話を聞いて,薬物は「やめる気持ち」と「続ける気持ち」が大切なことがよく分かりました。先生方や友だちに励まされ,今回は絶対にやめようと思います。自分の気持ちをゆるめないためにも,研修には必ず参加し続けようと思います。また研修をよろしくお願いいたします。
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