更生保護法人 静修会 足立寮
グループ名 |
酒害ミーティング |
グループの課題・目的 |
(1)アルコール・薬(覚せい剤・精神病薬等)がもたらす精神・身体疾患が自己及び周囲(社会)に対して悪影響を及ぼし,社会的に自己保全が図られなくなることの自覚を促し,断酒・断薬の意志を固めてもらいます。
(2)2度と罪を犯さないよう施設退所後,何か障害や問題が生じた時の医療や福祉等の制度や自助グループやカウンセリング等の社会資源の活用方法を学んでもらいます。 |
プログラム実施回数 |
毎週1回(金曜日) 20:00〜21:30ころまで |
実施場所 |
相談室 |
|
プログラムへの出席者
横浜丘の上病院の精神保健福祉士,救護施設救世軍自省館の指導員,周愛利田クリニックの精神保健福祉士,榎本クリニックの精神保健福祉士,AA,施設職員,被保護者(参加希望者又は強制参加者),OB(更生保護施設退所者),外部(地域住民)や医療福祉関係機関の職員・社会福祉系大学の学生等
実施方法(具体的な進め方)
施設職員による開催動機付けの後(緊急時は講師に一任する),講師による講義や講師・AAや施設職員によるミーティング(講義)を行っています。
プログラムを実施する際に配慮していること
・開催時間と開催場所を固定し,必ず施設職員が参加しています。
・プログラムが施設(職員)や講師の自己満足とならないよう,又参加者の希望に沿う内容にするよう随時(ミーティング開催前後),プログラム運営に関し話し合う場を設けています。
・自己責任を自覚させるよう指導し,自分自身の心の闇を見つめる内容を心がけています。
・プログラムとして今後も維持できるよう複数の施設職員でプログラムを担当しています。
・見学(視察)のみのプログラム参加,また参加者が記録を取ることを厳禁としています。
これまでの経過
以前から酒害教育を実施してきた(月2回)経緯を踏まえ,平成11年7月,専属講師による講義から毎週のミーティングを開始(再開)しました。当時,1週間のうち金曜日に飲酒によるトラブル(帰寮後のケンカ,無断外泊等)が目立つこと,又,最近の日本文化として懇親会・飲み会等が週末に集中すること,職員体制や負担等を勘案して金曜日の夜に行うことにしました。当初は,施設担当職員と月1回の専属講師で実施していたが,同年11月から第3金曜日にAAのメンバーが協力して下さることになり,そして,平成12年4月からステップ・アップ・プロジェクトとして助成金がおり,職員研修や講師料の資金を確保でき,現在の体制となって今日に至っています。
処遇プログラムの場面
(1)プログラムの開始前の準備など
当施設は入所時に初回面接で,すべての入所者に遵守事項,施設規則とともに「酒害ミーティングについて」(別紙参照)を見せます。酒だけでなく,薬物やギャンブル等の嗜癖,依存症と考えられる者には参加を勧めます。
「酒害ミーティングについて」は各居室に貼ってもありますので特に毎週の情宣はしませんが,参加対象と施設側が判断している者には日頃から面接回数を増やし,参加を働きかけています。
毎週金曜日,19時に会場の鍵を開けます。19時頃から参加する入所者が会場の準備(机,椅子を並べる,お茶の準備等)をします。AAやOBや外部の方は19時半頃から入所者とは違う入り口から会場に入ります。AAやOBや外部の方の中にはミーティングが始まるまでの時間を利用して会場で食事をとる者もいます(仕事帰りの方)。
講師の方は別室で待機し(第三金曜日とAAの方々は除きます),ミーティングの打ち合わせをします。関係機関の方で参加される方も別室で待機し,オリエンテーション(ミーティングのルールや参加の条件の確認,更生保護施設の説明等)をします。
20時になると施設職員とともに会場に移動しミーティングを始めます。
酒害ミーティングについて
静修会 足立寮
当会では毎週金曜日夜8時から1時間程相談室にてミーティングを行っています。
最近ですが,「依存症」という言葉が医療分野で使われるようになってきました。以前はひどい酒飲みを「アル中」と呼んでいました。社会でも「アル中」の人に対して,精神病院か刑務所か留置所に隔離することが「アル中」の人に対する対策でした。しかし,隔離しても病気・癖が治るわけではありません。入院・入所中は断酒はできるが,退院・退所後は以前の生活に逆戻りというのが多いのです。
それはいったいなぜでしょうか?
そこで登場してきたのが「依存症」という言葉です。「依存症」は「アル中」にとどまらず「アル中予備軍」を含んでいます。生まれて初めて飲むアルコールで「アル中」と呼ばれる人はいません。けれども長い飲酒経験から「アル中予備軍」つまり「依存症」になっていることは多いのです。そしてそれに『気が付かない』,もしくは『認めない』が症状を悪化させることになります。
「依存症」は対象が広く,アルコール・薬物(覚醒剤・シンナー・睡眠薬など)・ギャンブル・タバコなど嗜好品(しこうひん)と呼ばれる物に対して,症状として名付けられています。
当会ではアルコールを主に扱っていますが,同じ嗜好品に「依存症」の症状がある方はアルコールをやめたらギャンブル,覚醒剤をやめたらアルコール,ギャンブルをやめたらタバコ,などと対象物が変わるだけで以前と同じような生活になってしまうことが多いのです。
例えば「ギャンブルに問題があるなぁ」という方でも,ミーティングでアルコールをギャンブルと置き換えて聞いてみて下さい。「どこかで聞いたような話だなぁ」と思うかもしれません。
これから当会で生活するにあたり,興味がある方は担当川村まで話しにきて下さい。
内訳は
・月一回が講師によるアルコールだけでなく医療に関する講義(アルコールの歴史,薬の知識など)。
・第三金曜日は社会の自助グループの一つであるAAのメンバーによるミーティング。AAのメンバーは全員以前アルコールによる問題(失職・離婚・受刑経験など)があり,現在社会で自立・自活している方達です。)
・上記以外は当会職員,又は会の仲間が司会をしてミーティングを行います。
・講師の方のミーティング
詳細は担当川村まで
|
|
(2)プログラムの実施状況
毎週,内容や形態が違うのでイメージで紹介します。
写真のように円になって行ないます。講義の場合も講師が小さなホワイトボードを持って行ないます。
ミーティングのイメージ
(3)ミーティング終了後
残って話す者(世間話や講師への質問等)もいるが,大抵写真のように司会者にお礼の挨拶をして解散します。
講師に挨拶
実施施設からのメッセージ
今も昔も施設の行事,プログラムに喜んで参加する人はいない(少ない)と思います。参加しやすい環境や条件は施設によってばらばらでしょうが,「継続は力なり」続けていくと見えてくるものがあります。
始めた当初,入所者40名のうち,参加者は一人か二人でした。担当施設職員も専門的な知識や資格を有している訳でなく業務命令で嫌々行なっていました。泥酔状態でミーティング会場に乱入する元暴力団の方,離脱症状で幻覚・幻聴が出て自分の身体を傷つけ血をうまそうに飲む方等,ユニークなミーティングが1,2年目は続きました。施設職員は「仕事だから」と割り切れますが,当時の講師やAAの方々の苦労は大変なものがあったと思います。
大きな転換期は,医療(精神科専門クリニック)への通院治療を開始したことです。このことにより,断酒・断薬の決意が強い者,断酒・断薬を継続している者が現れ,ミーティングの参加者数が安定しました。また,以前入所時に失敗した者(再犯等)が満期で出所した後,主任官の配慮により再入所させ,以前の失敗を参加者に話すことにより,講義や書物では与えられない影響があることがわかり,ここ数年は定員に余裕がある限り引き受けています。その影響の中にはミーティングに参加しない者への影響があります。前記の再入所ケースを引き受けるようになってから,ミーティング開始当初から露骨であったミーティング参加者へのいじめや嫌がらせが減り,また新たな失敗者も数年後に保護を求めて入所するようになってきました。最初は,施設職員の単なる押し付けでしたが,最近は,参加者が自覚し自らの意志と必要性で今のミーティングを行っているように思います。
「継続は力なり」。更生保護施設の処遇は,プログラムだけでなく集団処遇ですが,5年後,10年後をにらんで取り組まれると良いプログラムになるだけではなく施設の雰囲気にもなると思います。
|