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第II部 IALA第16回AIS委員会報告書
第II部 IALA第16回AIS委員会出席概要報告
1. 開催日:
2005年3月1日(火)から3月4日(金)まで
(今回の会議はIALA AIS技術作業部会が共同で会議を推進しているIEC TC80 WG14の開催が8月30日(月)まで行われたため、会議のスタートが火曜日となった。)
 
2. 開催場所:
IALA本部(フランス国パリ近郊サンジェルマン・アンレイ)
 
3. 出席者:
40名(詳細は別添資料1のとおり、他にIALA事務局1名)
AIS14から参加している中国からの参加者3名は今回も参加した。
(IEC TC80 WG14には20名の参加があったとのことである)
 
4. 会議日程
5日間の委員会は次の日程により進められた。
月日 午前 午後
9月1日 事前準備 当初全体会議、プレゼンテーション
9月2日 作業部会 作業部会
9月1日 作業部会 作業部会、全体会議
9月3日 最終全体会議
 
5. 当初全体会議
(1)委員長ニック・ワード博士(英国トリニテイハウス灯台局)が議長を務め、また病気療養のため本委員会を長期欠席していた、ベニー・ぺターソン氏が今回参加し、参加者からの歓迎を受けるとともに副議長として会議に臨んだ。
(2)会議は、IALA事務局長クルーズ氏の挨拶から始まり、同氏はパワーポイントにより、
イ AIS委員会の副議長であるベニー・ぺターソン氏が復帰したことに対する祝辞
ロ 今回のAIS16会議の目的
(1)IALA AISガイドラインの補修
(2)ITU-R M.1371-1の改訂に向けた作業
(3)2006年〜2010年のIALAとしての活動の方向性を確認し、IECとの共同作業の推進を挙げて説明された。
ハ IALAとしての2005年中の活動
(1)2005年6月:PAWSA、
(2)2005年8月:セミナー、
(3)2005年10月 A/Nワークショップ等予定
(4)ワークショップで取り組んでいるe-ラーニング
などについての概要を述べた。
(3)事務局から、本部会議場における緊急時の避難な保安に関する会議運営上の注意事項等ハウスキーピング並びにホテル利用についての諸注意についての説明が行われた。
(4)委員長から、改めて参加者全員に対して歓迎の意が表せられるとともに、参加者全員がそれぞれ自己紹介を行い検討は進められた。
 議題に沿って、先回からの活動項目及び前回理事会からの付託事項の確認並びに入力文書の確認が行われ、参加者からの意見、コメント等を交え議事が進められた。また、日本の海上保安庁及び日本航路標識協会から、AISを効果的に活用した「電子航行支援システム:ENSS」についてプレゼンテーションが行われることが紹介された。
(5)クラスB AISについての意見、コメント等の中で主なものは次のとおりである。
(1)IEC TC80 WG8Aは、IEC6228としてCSTDMA方式のクラスBのAIS規格化作業が2005年2月の編集会議にて終了し、現在、IEC事務局とでCDV(Committee Draft Vote)に向けた手続きを始めている。IEC TC80 WG8AとしてはCD(Committee Draft)として各国に回章して意見をとりまとめ、それを持って正式なCDV手続き(2005年6月頃)に入りたいとの意向ではあるが、IEC事務局はIEC62287の顔初に時間がかかっているとの判断から、2005年3月にはCDV回章を行う事で考えている。
(2)委員からはこのCSTDMA方式のAISは
・CD検出の方法の論理的な正当性
・距離性能と送信出力との関係、
・スロット使用におけるSOTDMAとの整合性の検証不足等
の意見があり、それらに関するデータを含む根拠の開示が求められたが、IEC TC80 WG8Aに各国が参加をしているので、その委員から情報を確認されたいとして、IALA AIS委員会への開示はされなかった。
(3)CDVの回章は2005年8月12日CDVの投票締切りとして、2005年3月の予定であり、この結果から、2005年中、又は2006年早々に国際規格として発行される見込みである。
(6)基地局AISについてのコメント等
(1)当初、2005年2月中にIEC62320-1固定局(陸上局)のCD開発を完了して、2005年3月のCDV回章を予定していたが、CDとしての最終整合が出来なかったため、次回の第6回オタワの2005年3月21日(月)〜24日(木)会議にて最終のとりまとめを行うとの発言を行った。
(2)IEC TC80 WG14第6回オタワ会議での取りまとめ作業は機能・性能要件に関する基本概念として、“Independence Mode”と“Dependence Mode”が導入されたことからこれらの定義と要件の見直しが行われたことから、当初のスケジュールを2005年8月のCDV回章、2006年1月頃のCDV Resolution会議とする予定を立てた。このとからIEC規格の正式発行は2006年5月頃になると考えられる。
 IEC62320-2航路標識(AtoN)AISのIECにおける開発は、遅くとも2005年6月の第7回シアトル会議から本格的に作業を行う事で、当初予定の2006年3月のCDV回章を守りたいとしている。
(7)入力文書16/12/info3に関連し、ライブドットコム社のAISデータ公表について各国政府機関の委員に対して、議長から各国それぞれの現状と考え方等の意見が求められた。
 主な内容としては、ITUの規定において無線による再送信は禁止されていることを踏まえても、
(1)ドイツ:AIS本来の目的は航行の安全のためであったが、ここに来て保安(セキュリティ)としての考えが強くなってきたため、国としての扱い基準の策定を急いでいる。(個人的には情報の一般への公開には疑問を感じている)
(2)オランダ:AISデータの扱いはビジネスとしては有効な市場であり、法的規制を強化することはその市場性を閉ざすことになるため、その方向に動くことは好ましくない。
(3)スウェーデン、フィンランド、ロシア:AISデータの再送(他社への配信は禁止している)。国としてのネットワークを構築し、ユーザー登録にて、必要な情報を入手している。従って、入手したデータはそのユーザーの管轄範囲で使用することが許可されている。
(4)米国、カナダ:AIS情報の提供は、アメリカコーストガード又はカナダコーストガードが行っており、ある程度のユーザー規制、運用規制がされている。
(5)デンマーク:AIS情報は国として管理している。
(6)欧州連合及びロイド保険:ネットワークを介しての情報提供、船舶情報の収集把握観点からは有効な手段であり、webからの情報収集は魅力的である。
(7)AIS基地局としての政策決定による(日本、オーストラリア)
(8)バルト海沿岸国:SAR機関のみの使用にとどめ、船舶企業には有料
等の各国によって様々に対応意見が分かれており、IALAとしては今後もIMO等の動向に引き続き留意していくこととなった。
(8)プレゼンテーション(2件)
イ 電子航行支援システムの概要と活用例(ENSS)
海上保安庁小熊氏及び日本航路標識協会佐藤
ロ ドイツにおけるA-124の将来に向けた提案
J-H-オルトマン氏(ドイツ)
の2件と紹介されたが、実際にはオルトマン氏のプレゼンテーションは、技術作業部会における検討時間が多く必要なため、技術作業部会内でのみ行われた模様である。
 日本から発表したプレゼンテーション電子航行支援システムの概要と活用例(ENSS)は大変好評で電子ファイルの提供を求められ、最終版CDにて入手できることを説明した。(翌日の朝の挨拶においても、ほとんどの参加者から開口一番、昨日のプレゼンテーションは素晴らしかったとの発言があった。)
(9)作業部会設置と作業部会議長の選出
 次の2つの作業部会が設立されました。
* 技術的な作業部会(TWG)議長、ヴィムバン、デ、ハイデン氏
* 運用作業部会(OPsWG)議長、マヘッシュ、アリムチャンダニ氏
 より効率的な会議運営を行うために、委員会メンバーは、1つの作業部会に参加するように要請されました。
 
6. 作業部会の検討内容
6.1 運用作業部会(OPSWG)
 作業部会は、技術作業部会および運用作業部会の2つで構成されているが、小生は海上保安庁小熊氏とともに運用作業部会に参加し検討に加わった。
(1)運用作業部会での検討事項
 運用作業部会に与えられた具体的な検討作業内容は以下のとおり。(AIS16/1/2 rev2参照)
・他の会議等(IMO、ITU、IALA理事会)報告の精査
・IALA AISガイドライン見直し
・AISについての脆弱性について
・航路標識AISの海図表記についてANM委員会(航路標識管理委員会)への出力文書作成)
(2)検討結果
 下記項目文書等を基に検討が行われ、その結果は別添本委員会報告書に示すとおりである。
(AIS16/4/2、AIS16/4/8、AIS16/12/6、AIS16/12/4、AIS16/12/Inf1、AIS16/7/1、AIS16/4/3、AIS16/4/6、AIS16/12/2、AIS16/7/2、およびAIS16/12/3)
 結果として出力文書としてまとめたものは、「AISの紹介文書」と「航路標識管理委員会へのAIS航路標識の海図記入に関する連絡ノート」であった。
 運用作業部会のメンバーは次のとおりであった。
名前 所属/国
アンダース・ベル・トローム True Heading AB/スウェーデン
ベニー・ペテルソン SMA/スウェーデン
ダンカンGlass トリニテイハウス/イギリス
エド・ラルー(作業部会議長) 米国沿岸警備隊(USCG)
エスタニスラオSebeckis Directemar/チリ
Ildefonso Lorite Puertos del Estado/スペイン
ジェイコブBang RDANH/デンマーク
Jiangbaoバオ 中国海事局
ホセラモンHerrera ベネズエラDireccion de Hidrografiay Navegacion
ニール・トレイナー AMSA/オーストラリア
Nermi・フェルナンデス ベネズエラDireccion de Hidrografiay Navegacion
小熊 茂 日本海上保安庁(JCG)
スティーブ・ハックスレー MCA(イギリス)
佐藤辰雄 日本航路標識協会(JANA)
Ulf Birgander EU委員会/EMSA
 
6.2 技術作業部会(TWG)
(1)技術作業部会における検討項目
イ ITU-R M.1371-1の改訂に向けた作業の進め方
ロ 入力文書AIS16/8/2
FATDMA構成の記述内容の検討
ハ IEC TC80 WG14固定局に関する質問への回答
 イ項とハ項の対応のためにグループ分けを行い、サブグループを設け検討する。
 ロ項は3月3日の午前中に担当者であるオルトマン氏から説明を受け、スケジュールとグループ分けを行い作業が実施された。
(2)検討結果
イ ITU-R M.1371-1改訂に向けた作業
 結論として、ITUへのITU-R M.1371-1の改訂に関する入力文書は、ITU WP8Bが開催される2006年2月末からの会議に間に合うように作業を進めるが、2005年9月のITU WP8Bへの対応は延期をする。
 この結果、ITU-R M.1371-1への改訂に向けては次のとおり計画する。
(1)改訂に当たってはIALAとして、ITU-R M.1371-1改訂(案)を作成する。
(2)今後、2回のIALA技術作業部会会議を開催して(2005年9月のIALAAIS17はその作業を盛り込み済み)資料の完成を目指す。
(3)改訂版にはこれまでに挙げてある(IALAITU-R M.1371-1の構成)項目の他に、(1)CSTDMAの記述追加、(2)IEC62320-1及び-2にて開発されている船舶以外のAISの取り込み、(3)FATDMA構成の考え方の取り込みを考慮する。
(4)改訂作業にはIECメンバーの対応が不可欠であることから、作業協力の依頼を行なう。
ロ IEC TC80 WG14固定局に関する質問への回答
 固定局(基地局装置)のIEC規格を開発しているIEC TC80 WG14からの19項目にのぼる質問に対して、IALA技術作業部会としての回答資料を作成した。この資料は2005年3月21日からの第6回WG14オタワ会議への入力文書とされる。
 特に、(1)基地局の位置情報の優先順位として、従来のGPSでの測定結果ではなく、測量によるデータをデフォルトとする。(2)基地局の通信方式は原則FATDMAとし、柔軟性の観点からRATDMAでの運用を考慮する。但し、SOTDMA及びITDMAでの運用は禁止する。
ハ AIS16/8/2 FATDMA構造の記述内容の検討
 ドイツのオルトマン氏からの入力文書の内容説明、特に(図の)黄色部分での検討の方向性が述べられ、これに関連してデンマークからの入力文書の紹介もあった。特に議論はなく(何人かのコメントはあったが、特に現時点では注目をしなかったが、個人的には今後、この考え方の検証は大切と考えています。)


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