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(意味の反映)相手が訴えようとしている内容を、咀嚼して返す。「あなたが、そこで言おうとしていたのは・・・こういうことだったのです。」
(感情の反映)「うんうん、それがとても辛かったのですね。」「なるほどね、そんな時にもうこんな苦しい思いはいやだ、という気持ちになったんですね。」
(いいかえ)相手が使った主要な言葉を使って、そのエッセンスを面接者が繰返して相手に返す。面接者独自の言葉も多少は入る。
(励まし・繰返し)「うーん、よく頑張りましたね。」「はあはあ、そうだったんですか。」などの応答や、クライエントの使った言葉で特徴的な言葉だけを、単発的に返す。
(閉ざされた質問)「今、何歳になられますか」「家族構成はどのようになっています」などの問いかけによって、ハイ・イイエとか相手が手短かに答えられるもの。
(開かれた質問)「そのへんの事情をもう少し聞かせてくれませんか」「最初それが起こった時、どのようになさいましたか」など、答えるクライエントができるだけ長く話してくれるよう、期侍が含まれている問いかけである。
 
面接技法の具体的説明
(受容)来談してきたクライエントを一人の人間として受けとめ、クライエントの今まで生きてきた人生や、今抱えている悩みを最大限に受け止めていく善意の姿勢を言う。具体的には、相談員がクライエントの主訴に全身で耳を傾けていく傾聴の姿勢を前面にだすことである。
 マイクロカウンセリングでは、この受容にあたる部分を「かかわり行動」(attending behavior)といい、4つの重要なポイントを指摘している。
1 クライエントと視線をあわせること
2 クライエントの身体言語に気をくばること
3 声の調子に注意すること
4 言語的追跡をおこないつづけること
(最小限の励まし、いいかえ)
 最小限の励ましとは、相談員がクライエントの話を聴いてていることの意思表示でもある。視線をあわせ、うなずくなどの非言語的なしぐさ(身体言語)も広義にはこの範疇にはいいる。言語的な最小限の励ましはどちらかというと、瞬間的な言葉の発声であり、援助しようとするクライエントに共感していることを表現するものである。
1 「ええ?」「そう?」「それで?」「それから?」「なるほど」
2 1語、または2語のくりかえし
3 「もっとつづけて話してください」
4 「うむむ・・・」「う〜ん」
5 クライエントが話しをした文章の最後の数語をそっくりかえす
6 時には最も価値ある最小限の励ましが、沈黙であることもある。
(要約)
 クライニントの話した内容、その時々の感情を整理することである。要約はしばしば相談面接の技法としてはあまり重視されない傾向にある。一般には、感情の反映・質問・いいかえなどが、傾聴の技法のなかで最も重要なものと思われがちであるが、援助の重要な機能の1つは、クライエントが全てを統合することを援助することである。この意味で要約はクライエントの思考の統合化をはかるためにも重要な技法である。
 要約は、いいかえや感情の反映とにている。また感情の要約は、感情の反映に近いが、1つだけ大きな違いがある。感情の要約はクライエントの長時間のものをカバーし、またクライエントが表現した広範囲の感情を扱う。内容の要約はいいかえと似ている。しかしこれも、感情の要約の場合と同じように、長い時間の、広範囲のものをカバーする。いいかえは、クライエントの発言の最後の2〜3の文章または短い段落を扱う。・・・要約技法が必要なのはつぎの時である。
1 面接を始める時:「・・・の事でお話があると、電話でうかがっていましたが」「前回の面接の時、私たちは・・・について話しましたが・・・」
2 面接でおきていることを明確化する時、とくに面接が込みいっている時:
「ここでちょっと中断して、どんな話しになっているか整理してみましょう」
3 面接の間の話題化から話題化へのながれをスムーズにさせる時:
「今まであなたは・・・と言っていた、そして今は・・・」
4 面接の間におきていることをまとめる時:
「今日私たちは・・・について話しました」
5 何回かの面接にわたってもたらされた情報について筋道を立てる時:
「あなたは以前・・・と言った、そして今・・・といっている」
 
 他人に受け入れられた体験のない人は、他人を受け入れることはできない。
 
聴く技法
(1)話されている言葉の意味とその背後にある感情に耳を傾けて下さい。話の中には事柄ばかりで、話し手の言葉として感情が語られていないことも多いが、訴えたいことの中心は“その時の気持ち”だと言える。また、否定的な表現の裏には願望が潜んでいるように思える。
 その最も訴えたい気持ちを見つけられると、クライエントは自分が受けとめ、理解されたと感じることができ、さらに気持ちを語っていくであろう。
■次の発言の背景には、どんな気持ちが込められているか。書き出して下さい。
 
(1)お父さん、今度の日曜日もお仕事なの?
 
(2)来週の日曜日、引っ越しなんだ。
 
(3)あなたは几帳面な方ですね。
 
(4)このような人を助けるお仕事をなさっていて、やりがいを感じられるでしょうね。
 
(5)この秋、娘がめでたく結婚しました。相手も立派な青年でできるだけのことはやりましたし、妻ともども大変喜んでいます。
 
(6)この生徒は自分が納得するまでなかなか分かったと言ってくれない子だった。さんざん手を焼かされた。
 
(7)土曜日は部長と接待ゴルフに行かなくてはいけなくなってしまったから、デートはできなくなったよ。
 
(8)郊外に家を建て、やっと社宅から抜け出せました。夫の会社の人間関係から解放され、ほっとしています。
 
(9)マイホームを買ったので、今月から始まるローン返済のために、妻はパートに出ました。スーパーは土・日が忙しいので土・日も働きに出ています。
 
(10)30年勤めた銀行の取引先の建設会社から、引き抜きの話が出ているのです。経理部長として迎えられ待遇もよさそうで、家族も喜んで賛成してくれています。
 
(11)両親の前で自由にいられないのです。かざってしまうのです。喜ぶ態度をとってしまうのです。
 
(12)子どもながらも周囲の大人が、どうすれば喜ぶか分かってしまったから、自分の気持ちは押えて、周囲の期待に沿うように生きてきてしまいました。
 
傾聴に対応しての応答
 
耳を傾け、あいづちをうつのに、こんな言い方があります。
 
 
開かれた質問(オープンエンド形式の問いかけ)の利用
 
開かれた質問は、さまざまな方向から考えてみることを促すもの。
閉ざされた質問(クローズ形式)では、回答が限定される。
 
・それはどんな気持ちがしますか。
・〜のところを、もう少し詳しく話してくれる?
・今は、どんな気持ちなの?
・〜のことを、話してくれないかなー。
・どこから始めましょうか
・〜については、どんな気持ちがしますか?
・それがあなたにとってどんなことなのか、言ってくれますか?
・いろんなことが、どういうふうになって欲しいと思っているのかな?
・あなたは どう思ったの?
・どう変わって欲しいと思いますか?
・〜のことについて、どんなことをしたいと思っているのでしょうか?
・それって どんな感じかな?
・何か思い当たりますか?
・今あなたにとって、一番大切なのは どんなことですか?
 
対人コミュニケーションの点検
「たずね・こたえ・観察する」
 







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