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相談ボランティア研修(東京)
 
期間:平成16年9月12日〜10月14日
会場:日本財団会議室、日本出版倶楽部会館会議室他
 
【不登校・ひきこもりの相談に対応するアウエアネス(気づき)研修】
 関東地方の相談ボランティア52名に対して、平成16年9月から4回の研修を行った。東京は日曜日コースと木曜日コースの研修の2本立てで、宇都宮は毎週火曜日に行い、1回レッスンが5時間、合計20時間のアウエアネス研修を行なった。
 アウエアネス(気づき)研修は、APL・ピアカウンセリング技法を用いた、ピアカウンセリング研修の1つである。
 アウエアネス研修とは、相談者(カウンセラー)になると、どんなクライアントが来るか判らないわけであり、その相談の時、かつて自分も同じ悩みを持っていたボランティアにとって、自分の深層の心まできちんと整理されていないと、訪れたクライアントの持つ問題と自分の整理されていない問題とが出会った場合、カウンセラーはその場で頭がまっ白になり(フラッシュバック)立ち往生して、対応ができなくなることが往々にして起こることがある。その予防の為に、自分の心の奥底の傷がどんなものであるかの『気づき』を引き出すための研修である。
 自分の心の傷の整理ができていれば、自分の傷の痛む話しを避けたり、一緒に同じ傷で悩み、沈み込んでカウンセリングどころでなくなる心配もなくなる。不登校・引きこもりの経験がある方々はプロのカウンセラーになるわけではないが、何も色のついてない目、本当の自分の目で見ることで、本人と親との心のすれ違いが何処にあるかも見付けられる様になってくる。それと同時に相談者への傾聴も完成していく。
 実際のアウエアネス研修の終了には64時間が必要であるが、研修が進む中でボランティアの皆さんがその後のスキルアップの必要性を感じた場合、再度追加研修としていけば良いのではないかとし、初回の20時間は、傾聴スキルを磨くことを中心とした研修で進むことにした。
 
『初日の9月12日』
 まず自己紹介とコミュニケーションの為のゲームを行った。ほとんどの人が、カウンセリング研修は初めてであった為、初歩の初歩である、ダイアットという時間の分け合いロールプレイを行った。
 
 終了後の感想では、カウンセリングの基本として、解決策は相談者が持っており、我々カウンセラーはクライアントの悩みを共有して整理してあげるだけで良く、解決しようと力む必要はないことを知ってもらい、初回の研修は終えた。ほとんどの研修生は、ロールプレイの中では、今まで誰にも話せなかった事を、皆のいる全体の場所で話せたことを伝えてくれた。
 
『2回目の9月19日』
 前回の感想を聴いた後、まだ研修2回目の、コミュニケーションがぎこちないムードを和らげるためゲームから入り、次に前回のダイアットを再度行った。真剣なボランティアの皆さんは吸収力が早いのか、前回のコツをうまくつかんでおり、ダイアットはスムーズに行われた。皆、話しに加われない不完全燃焼さを感じ取れたようで、それを踏まえた上でのピアカウンセリングの理論や、ロールプレイ技法、用語の学習を行った。初めてのロールプレイでは観察者が存在すると緊張感を与えるので、二人だけで行う事にし、ロジャースの来談者中心法にのっとった、応対をするよう伝え、自由に話をさせた。終了後は、主訴(クライアントが、話のなかで一番訴えたかったものは何なのか)を確実にとらえたかどうか確認して終了した。
 終了後の感想では、カウンセリングというものは、今までのような世間話とは全く違うこと、傾聴のルールを気にしていると、クライアントの話しを集中して聴けなくなること、クライアントの話しに集中できたとしても、果たしてそのクライアントの話したかったこと(主訴)がなんだったのか、短い時間での話の内容から見付けるのが難しいこと、要約ならできても主訴はなかなかつかめない等の報告が出た。
 
『3回目の9月26日』
 前回の感想を聴いた後、今度は3人組みのロールプレイを行った。傾聴をしみ込ませる意味もあり、5時間全部を3人ロールプレイとした。組み合わせがランダムな為、議論グループ、覚えの早いグループ、のんびりグループ、支離滅裂グループなど、様々な状態で始まり、1回終了ごとの報告は個性豊かなもので、笑いが絶えなかった。2回目3回目と、徐々にこつを覚えてきて、4回目ではほぼ全部のグループが主訴を上手に見付けられるようになった。
 
 終了後の感想では、最初は何がなんだかわからなかったが、1回ごとにそれぞれのグループの報告に対するファシリテーターの説明で、だんだんこつがわかってきたこと、安全な場所という観念がある為、お互いの話しが濃くて真剣になれたこと、グループの3人がロールプレイの回を重ねるごとに分かり合え、絆が深まるのを感じたこと、今まで誰にも話したことも無いことが話せ、それはこんなに心が軽くなるものなのだと気づいたこと、などの報告があった。
 
『4回目の10月3日』
 前回の感想を聴いた後、2人で組んでもらうロールプレイを行い、安全な場所である安心感と、過去3回の研修でお互いの信頼感と親密感の増していた研修生は、心が完全に開放されていたため、心地よさを感じていた人が多かった。たぶん今までが苛酷な人生であった為に、安全な場所での久し振りの心の開放感は、心地よさを感じさせる要素のほうが強かったからなのだろうと考えられた。
 ほとんどの人が休まず出席し、次回64時間になるまでのスキルアップにも、22人が続けての参加となった。
 
 『無理せず、頑張らなくて良いのです。出来ないから自分を責める事はないのです。そのままのあなたで良いのです。』
 
(5)シンポジウム及び相談会への参加
 
 これは事業計画にはなかったものであるが、研修後の実習という形で札幌、仙台、宇都宮、東京、さいたま、横浜、新潟、名古屋、大阪、広島、松山、福岡、鹿児島、沖縄の14都市で当協会が開催したシンポジウム及び相談会に参加した。
 
仙台相談会で相談にのるカウンセラーと相談ボランティア
 
仙台シンポジウムで体験談を述べる相談ボランティア







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