パネル討論
実行ある参加型の福祉の交通まちづくりとは
〜進みつつある交通バリアフリー整備の課題と今後の対応〜
東洋大学工学部建築学科 高橋儀平
交通バリアフリーの基本構想が策定されはじめてからもうすぐ折り返し点に着こうとしている。全国各地で急速に交通バリアフリー法の成果が表れている。そうした中にあって、基本構想に関わる市民、利用者が増加しているが、果たして、その参加を市民や利用者、行政、そして最も重要なキーパーソンである交通事業者はどのよう評価し、受け止めているであろうか。行政や市民は交通バリアフリー法、及び基本構想の策定を追い風として受け止めていると思われるが、基本構想に関わる事業者の意識はどのように変わったのだろうか。
また、参加評価で重要なのは、実際的な整備基準への技術的反映や整備実施の担保、あるいは検証がどのように行われたかである。移動円滑化基準を基本としながらも地域の実態によっては多様な解が求められる、その解を参加によって見出し得ることがもう一つの参加の役割である。
このセッションでは、各講演による各地の事例報告を経てそうした疑問点への解明を討議していきたい。
そのための議論の糸口として、以下の点を挙げておきたい。
1. 参加型理念と手法の最も大きな課題は、「参加の継続」である。このことが、構想の事務局である行政、事業者、市民、利用者の中にどのように議論され、受け止められているか、その受け皿が合意形成されているかが鍵である。
2. 交通バリアフリー法基本構想の意義確認である。交通バリアフリー法の基本方針は、市民、利用者の参加を基本に構想を立案することを示している点で、画期的であるが、多くの事業者が同じ様に受け止めている訳ではない。むしろ、交通バリアフリー法そのもので十分と認識しているかもしれない。市民が参加して作られた基本構想が本当に「市民の生活に連続的に繋がっているもの」なのであろうか。
3. 次に、参加によるガイドラインの再構築である。交通バリアフリー法に関わる数多くのガイドラインが公表されてはいるが、実際のデザイン解決には必ずしも適応できていない。円滑な移動とは何か、バリアフリーという名の基に歩行者、利用者の生命、安全がどれほど尊ばれているのだろうか、いつの間にか、車の移動が中心になったり、変えられない基準に直面する場面がしばしばである。
4. 交通バリアフリー法に関与しながら地域の総合的なバリアフリー化の取り組みとなるとほど遠い場面もしばしば。基本構想の実現が、交通部局や福祉部局のみで行われていては、従来の狭い「福祉のまちづくり」と何ら変わらない。基本構想の策定に参加する行政、市民、利用者、事業者からのそれらへの疑問や改善があって初めて地域における総合的なバリアフリー化に寄与する。
5. 交通バリアフリー法の基本構想づくりに参加すること自体が長期間を必要とする「人材育成」そのものではあるが、そのような視点での捉え方が希薄ではないだろうか。つまり構想が成立するまでの期限付きの参加ではなく、前述の1. で述べたように「参加の継続」が必要なのである。
どんなによい人材育成教育プログラムが出来ても、それを受け止め、市民、利用者と一体的に交通バリアフリーの実現を図る実行、検証組織がないと絵に描いた餅になるかもしれない。
6. 最後に、交通バリアフリーを進めることがどのような社会的ニーズ、利用者のニーズを捉え、解決することになるのか。交通の移動が出来にくい人々は、自分が好んでそのような移動バリア場面を作り出したのではない。どんなに重い障害を持って暮らしていても、彼ら自身が自らの心身状態を選択したのではないことを交通バリアフリー法に関わる全ての関係者が理解すべきである。地球に生まれた人間社会の仕事はなにか、その解決への扉を開けることが交通バリアフリー基本構想の使命である。
交通バリアフリー法は市民参加のまちづくりの第2段階を演出している。交通事業者をはじめ、関係者、社会がどう変わらなければならないのか、パネリスト、参加者の具体的な提案による活発な議論を期待する。
高齢者・障害者交通/地域交通のセミナー
参加型の福祉の交通まちづくり
『障害のある人が担う役割』
社会福祉法人AJU自立の家
自立生活情報センター 所長 鬼頭義徳
【障害者講師派遣事業の概要】
1. 障害当事者の運動から
・1981年、国際障害者年より小中学校への派遣開始
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・近年における需要の拡大
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・障害者講師派遣・養成の事業化
2. 障害者講師派遣事業が目指すもの
・ノーマライゼーションの確立
3. 教育、医療、福祉、観光など各方面へのアプローチ
・小中学校での総合学習
・医療福祉専門学校向け講義
・交通事業者、ホテル事業者など各種サービス業への講習
【おもてなし研修】
1. 実施経緯
愛・地球博開催、中部国際空港開港に伴い、観光事業への期待・気運の高まり
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全ての方へ‘さりげないおもてなし’の提供
↓
高齢の方、障害のある方への接客・応対に関する講習・研修の必要性
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「おもてなし研修」として愛知県観光交流課より受託
2. 目的
観光振興を推進していくための「全ての人へのおもてなし風土づくり」の一環として、障害のある人に対しての理解を深め、より安全で安心できるサービスの提供を図れるようにする。
3. 対象
各事業者の社員・職員教育担当の方
○参加者数実績
〈平成14年度〉
・全4回各1日 参加人数延べ42事業者94名(タクシー、バス、航空、鉄道各事業者)
〈平成15年度〉
・全4回各1日 参加人数延べ65事業者108名(タクシー、バス、宿泊各事業者)
4. 研修概要
■講師陣
・様々な障害、状態について知識があり
社会状況に照らし合わせた意見・意向を伝えられる人材養成の必要性
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講師養成講座開催
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・手動・電動車いす利用者、言語障害のある人等、様々な障害のある人を人選
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[障害のある人全てが一様ではなく様々な応対方法があることの理解を図る]
■内容
車いす擬似体験、介助体験、介助をされる体験、コミュニケーションなど
5. 障害のある人が講師を務める意義
・研修後アンケート、感想から見えること( 別紙参照)
・障害のある人が講師となることにより、もたらされる効果
[知らないことからくる偏見・誤解応対の不安・戸惑い・ぎこちなさ]
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障害のある人が講師となることで・・・
[体験的な裏付けのある気付き、発見
現場での応対についての具体的かつ実践的な理解]
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