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国自旅第240号
平成16年3月16日
 
各地方運輸局長 殿
沖縄総合事務局長 殿
 
自動車交通局長
 
福祉有償運送及び過疎地有償運送に係る道路運送法第80条第1項による許可の取扱いについて
 
 NPO等によるボランティア輸送としての有償運送(以下「福祉有償運送」という。)及び交通機関空白の過疎地における有償運送(以下「過疎地有償運送」という。)の可能化については、平成15年4月1日から構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)による構造改革特別区域における措置として実施してきたところであるが、今般、「規制改革集中受付月間において提出された全国規模の規制改革要望への対応方針について」(平成15年9月19日閣議報告)及び「構造改革特区の第4次提案に対する政府の対応方針」(平成16年2月20日構造改革特別区域推進本部決定)において、必要に応じて構造改革特別区域での特例措置の内容を見直した上で、全国的に実施するとともに、新たに、構造改革特別区域における措置として、福祉有償運送についてセダン型等の一般の車両の使用を認めることとされたところである。
 このため、福祉有償運送及び過疎地有償運送に係る道路運送法(昭和26年法律第183号)第80条第1項による許可の取扱いについて下記のとおり定めることとするので、各地方運輸局(沖縄県にあっては沖縄総合事務局。以下同じ。)においては、その趣旨を十分理解の上、遺漏のないよう取り扱われたい。
 なお、本件については、社団法人全国乗用自動車連合会会長及び財団法人全国福祉輸送サービス協会会長あて別添1のとおり通知するとともに、各都道府県交通担当部長あてに別添2のとおり参考までに通知しているので、了知されたい。
 
 
1. 許可手続
 地方公共団体が、当該地域内の輸送の現状に照らしてタクシー等の公共交通機関によっては移動制約者又は住民等に係る十分な輸送サービスが確保できないと認めるとともに、特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第10条第1項の規定による設立の認証を受けたものをいう。以下「NPO」という。)等による、福祉有償運送又は過疎地有償運送の実施管理のため当該地方公共団体を含む関係者による運営協議会を設け、判明した問題点等について速やかに報告する体制を整えた場合において、NPO等から道路運送法第80条第1項の規定に基づく申請があったときは、運輸支局長(兵庫県にあっては神戸運輸監理部長、沖縄県にあっては陸運事務所長。以下同じ。)は、運営協議の場における協議を経て、2. 以下に掲げる要件を満たしている場合には、速やかに当該条件を付して許可をするものとする。許可に当たっては原則として2年間の期限を付すものとする。
 また、許可後において、自家用自動車有償運送許可申請書に記載された事項及び3. (4)(3)に掲げる事項に変更が生じた場合には、地方公共団体の長及び運輸支局長に遅滞なく報告するものとする。
 
2. 必要性
 地方公共団体が、当該地域内の輸送の現状に照らしてタクシー等の公共交通機関によっては移動制約者又は住民等に係る十分な輸送サービスが確保できないと認めることを要するものとする。
 この場合において、地方公共団体の区域における交通の状況や運営協議の場における意見のほか、福祉有償運送にあっては要介護者、身体障害者その他の移動制約者の状況等を、また過疎地有償運送にあっては、交通機関空白の状況、住民による輸送ニーズ等をそれぞれ踏まえ、合理的な理由を示して判断が行われることが必要である。
 その際、検討に当たり具体的に検討すべき点を例示するとおおむね以下のとおりである。
 
(1)福祉有償運送
・当該地方公共団体の区域において輸送の対象となる移動制約者の数
・当該地方公共団体の区域におけるタクシーによる輸送の状況
・当該地方公共団体の区域におけるボランティア輸送の状況 等
 
(2)過疎地有償運送
・当該地方公共団体の区域において輸送の対象となる住民の数
・当該地方公共団体の区域における公共交通機関による輸送の状況
・当該地方公共団体の区域におけるボランティア輸送の状況 等
 
3. 運営協議会
(1)目的
 運営協議会は、福祉有償運送又は過疎地有償運送の必要性並びにこれらを行う場合における安全の確保及び旅客の利便の確保に係る方策等を協議するため、設置するものとする。
 
(2)主宰者
 運営協議会は、原則として地方公共団体が主宰するものとする。この場合において、一の市区町村が主宰することを基本とするが、必要に応じ、交通圏、経済圏等を勘案して複数の市区町村が共同で主宰し、又は都道府県が主宰することができるものとする。
 また、地域における先進的な取組みを行う場合その他必要と認められる場合には、地方運輸局又は運輸支局(兵庫県にあっては神戸運輸監理部、沖縄県にあっては陸運事務所。以下同じ。)が地方公共団体と共同で主宰することができるものとする。
 
(3)構成員
 運営協議会の構成員は、当該地方公共団体の長又はその指名する職員を含む関係者であることを基本として主宰者が定めるものとする。
 なお、標準的なものとして想定される関係者を例示すると、おおむね以下のとおりである。
・関係する地方公共団体の長又はその指名する職員
・地方運輸局長若しくは運輸支局長又はその指名する職員
・公共交通に関する学識経験者
・想定される有償運送の利用者の代表
・関係する地域の住民の代表
・関係する地域のボランティア団体
・バス、タクシー等関係交通機関及び運転者の代表 等
 また、運送主体となるNPO等については、必要に応じて適宜説明を求めることができるものとする。
 
(4)運営方法等
 地方公共団体は、運営協議会の開催に先立って、以下の資料を作成するとともに、十分な時間的余裕をもってあらかじめ参加者に送付するものとする。あわせて、更新の申請に先立って行われる場合には、輸送活動における利用者からの苦情、事故等の状況について運営協議の場に報告するものとする。
 
(1)当該地方公共団体の区域における交通の状況及び福祉有償運送にあっては要介護認定を受けている者、身体障害者その他の移動制約者の状況、過疎地有償運送にあっては交通機関空白の状況及び住民の輸送ニーズの状況
(2)許可を受けようとするNPO等が作成した自家用自動車有償運送許可申請書の案及び地方公共団体の長からの具体的な協力依頼を示す書面
(3)許可を受けようとするNPO等が行おうとする自家用自動車有償運送に関し次に掲げる事項について具体的に記した資料
・使用する車両の自動車登録番号及び運転者並びに福祉有償運送にあっては移動制約者に対応した設備又は装置の種別
・普通第二種免許によりがたい場合における十分な能力及び経験に係る事項
・損害賠償措置
・会員数及び運送の対価の額
・運行管理体制及び指揮命令系統
・事故防止についての教育及び指導体制
・事故時の処理及び責任体制(地方公共団体におけるものを含む。)
・使用する車両についての整備管理体制
・利用者からの苦情処理に関する体制(地方公共団体におけるものを含む。)
(4)その他運営協議の場において主宰者が必要と認める資料
 
 構成員による協議が整わない場合においては、主宰者及び主宰者があらかじめ構成員の中から指名した者が協議して決定するところによるものとする。
 
4. 運送の条件
(1)運送主体
 当該輸送の確保について地方公共団体の長から具体的な協力依頼を受けた、営利を目的としない法人又は地方公共団体が自ら主宰するボランティア組織であり、福祉有償運送又は過疎地有償運送を行うことが法人の目的の範囲外の行為に当たるものでないことを要するものとする。
 なお、NPOのほか、営利を目的としない法人として想定されるものを例示すると、おおむね以下のとおりである。
・社会福祉法人(社会福祉法(昭和26年法律第45号))
・商工会議所(商工会議所法(昭和28年法律第143号))
・商工会(商工会法(昭和35年法律第89号))
・医療法人(医療法(昭和23年法律第205号))
・公益法人(民法(明治29年法律第89号)) 等
 地方公共団体の長からの具体的な協力依頼については、依頼の相手方となる法人名、依頼の対象となる有償運送行為を示した書面により行うものとする。
 
(2)運送の対象
(1)福祉有償運送の対象
 福祉有償運送の対象となる旅客は、会員として登録された以下に掲げる者及びその付添人とする。
・介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第3項にいう「要介護者」及び第4項にいう「要支援者」
・身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第4条にいう「身体障害者」
・その他肢体不自由、内部障害(人工血液透析を受けている場合を含む。)、精神障害、知的障害等により単独での移動が困難な者であって、単独では公共交通機関を利用することが困難な者。
 
(2)過疎地有償運送の対象
 過疎地有償運送の対象となる旅客は、会員として登録された以下に掲げる者及びその同伴者とする。
・当該地方公共団体の区域内に住所を有する者及びその親族
・当該地方公共団体の区域内に存する官公庁、病院その他の公共的施設の利用者
・その他当該地方公共団体の区域内において日常生活に必要な用務を反復継続して行う必要がある者
 
(3)運送の形態等
 運送の発地又は着地のいずれかが当該地方公共団体の区域内にあることを要するものとする。運送主体においては、会員の氏名、住所、年齢及び移動制約者・住民等であることの事実その他必要な事項を記入した会員登録簿を作成し、適切に管理するものとする。
 
(3)使用車両
(1)福祉有償運送の使用車両
 福祉有償運送にあっては、車いす若しくはストレッチャーのためのリフト、スロープ、寝台等の特殊な設備を設けた自動車、又は回転シート、リフトアップシート等の乗降を容易にするための装置を設けた自動車であることを要するものとする。
 
(2)使用権原
 使用する車両については、運送主体が使用権原を有していることを要するものとする。この場合において、運転者等から提供される自家用自動車を使用するときは、以下の事項に適合することを要するものとする。
・運送主体と、自家用自動車を提供し、当該輸送に携わる者との間に当該車両の使用に係る契約が締結され、当該契約の内容を証する書面が作成されていること。
・当該契約において、有償運送の管理及び運営、特に事故発生、苦情等への対応について運送主体が責任を負うことが明確化されていること。
・利用者に対し、事故発生、苦情等の対応に係る運送主体の責任者及び連絡先が明りょうに表示されていること。
 
(3)車両の表示等
 外部から見やすいように使用自動車の車体の側面に有償運送の許可を受けた車両である旨を表示することを要するものとする。(別記参照
 運送主体においては、使用する自動車の型式、自動車登録番号及び初度登録年、損害賠償措置、関係する設備又は装置その他必要な事項を記入した自動車登録簿を作成し、適切に管理するものとする。







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