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パネルディスカッション
「これからのNPOは行政、地域とどのような協力関係を構築していくのか?」
関西STS連絡会 事務局(大阪府) 柿久保浩次氏
STネット北海道 事務局長(北海道) 竹田保氏
かながわ福祉移動サービスネットワーク代表(神奈川県) 河崎民子氏
長野県南佐久郡小海町町民課(長野県) 井出裕治郎氏
◆コメンテータ 東京都立大学大学院都市科学研究科教授 秋山哲男氏
◆司会 移動サービス情報誌モヴェーレ編集長 中根裕氏
 
◆柿久保 浩次(かきくぼ こうじ)プロフィール
 
関西STS連絡会 事務局
自立支援センター・OSAKA
NPO法人 日常生活支援ネットワーク理事
 
<連絡先>
〒556-0012
大阪市浪速区敷津東3-6-10
tel/fax 06-6649-0455
06-4396-9189
 
大阪府知事 太田 房江 殿
大阪府健康福祉部障害保健福祉室長 殿
大阪府健康福祉部高齢介護室長 殿
大阪府健康福祉部地域保健福祉室長 殿
 
公開要請書
 
 既に各担当部局においてはご承知のこととは存じますが、事務連絡「福祉有償運送等に係る運営協議会の設置等について」(平成16年3月24日付)が、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課長、厚生労働省老健局振興課長、国土交通省自動車交通局旅客課長の連名により、各都道府県交通担当部長、各都道府県・指定都市・中核市障害保健福祉・高齢者保健福祉担当部(局)長、各都道府県介護保険担当部(局)長、各都道府県特定非営利法人担当部(局)長宛に届けられていると存じます。
 
 この内容につきましては、「本年3月16日付け国土交通省自動車交通局長通達によりNPO等の特定非営利団体の自家用自動車による有償運送が全国において一定の手続、要件のもとに道路運送法第80条第1項に基づき許可されることになりました」に始まり、「その手続においては、市町村もしくは都道府県が運営協議会を設置し、当該協議会において協議を行った後に運輸支局等に対し許可申請を行うことができる」となっています。また「運送主体となるNPO等団体との相談に応じるなど当該手続が円滑に進められるよう格別のご配慮をお願いします」と付け加えられております。
 
 2000年「交通バリアフリー法」の施行、そして同年「介護保険制度」スタートの中で、移動制約者(困難者)の日常生活上での“公平で自由な移動(モビリティ)”のニーズがいかに大きいかということがクローズアップされてきました。と同時に、欧米諸外国に比べて日本の地域福祉サービスがいかに遅れているかという課題も、私たちの前に鮮明に浮上してきました。
 
 一方で、私たちが地域福祉の不十分な部分を補完するために必要に駆られて長年取り組んできた“ドア・ツゥ・ドア”の市民参加型による移動送迎支援活動も、いまや全国で2500〜3000の団体グループによって当事者(利用者)の切実な“移動の手段”として定着するに至ってきました。
 
 こうした移動制約者のための“公平で自由な移動”に向けたサービスとしては、パブリック(公共交通機関)、スペシャル(民間サービス)、パーソナル(個人)の三つの手段が適切に確保される必要があると指摘されていますが、厚生労働省、国土交通省、そして行政レベルでの施策は何がしかの進展は見られるものの、ますます膨らんでいるニーズに対しては十分な対応がなされているとは言い難い現状ではないでしょうか。
 
 やっと重い腰を上げたのが、2003年に始まった国土交通省の「福祉移送特区」という新たな実験であったと思います。
 
 ただし、この中味は国土交通省による、従来型の不特定多数の顧客を対象にした営利目的によるタクシー事業への規制を少しゆるめるという内容であり、地域での助け合いを目的とした非営利の市民活動に当てはめるには、現在の地域福祉の現状からは少し遊離したものであるという危惧が、私たちだけではなく、厚生労働省の側からも声が上がっておりました。
 
 しかし、私たちにもっと危惧の念を抱かさせたものは、こうした「福祉移送特区」という新たな模索に対して、関西圏では枚方市が唯一声を上げただけで、他の各自治体はどこも組みすることができなかったという厳しい現実だったのです。
 
 こうした関西での地域福祉における“公平で自由な移動”の確保に向けた位置づけの曖昧(あいまい)さの中で、国土交通省は「福祉移送特区」を少し変形したとはいえ、今年(2004年)4月から“全国化(全国ガイドライン)”するという「通達」(国自旅第240号)を各地方運輸局長、沖縄総合事務局長宛に流し、続いて「福祉有償運送等に係る運営協議会の設置等について」(事務連絡3月24日)を都道府県・指定都市・中核市の障害保健福祉・高齢者保健福祉担当部(局)長宛に発したことは既にご承知の通りです。
 
 こうした一連の動きに対して、私たち関西STS連絡会としては、日常的に障害者、高齢者など移動制約者の多様なニーズに安全と安心の移動送迎支援サービスで応えるための“運転者研修”を積み重ねながら、関西の全自治体への「移動送迎サービスと行政との協働のあり方に関するアンケート調査」(315部局が回答)を2003年末に実施し、実態の現状分析作業を行ってきました。また、各社会福祉協議会との協議も開始し、私たち自身の移動送迎支援活動の検証作業を、各種“セミナー”として有識者の参加の下に何度となく開催してきました。
 
 先日の4月17日には茨木市立「ローズWAM」にて、国土交通省近畿運輸局自動車交通部次長・田中俊幸氏をお招きして、今回の「全国ガイドライン」の説明をお聴きしながら、忌憚(きたん)のない意見交換を行ってきたところです。
 
 国土交通省としても「各自治体での責任ある審議にゆだねる」という柔軟な姿勢を持っておられることも確認されております。その点においても、ますます各自治体の地域福祉における移動制約者のための“公平で自由な移動”確保のための施策の方向性が、きわめて重要な意味を持ってきていることを痛感させられているというのが、移動送迎支援サービスを市民参加型で担ってきた私たちの率直な実感です。
 
 私たち関西STS連絡会には現在60団体グループの皆さんが参加されておられ、行政区分も関西全域に散らばっております。
 
 今回の国土交通省による「全国ガイドライン」に対する各自治体におけるご見解においても、抱えておられる地域福祉の現状によって多少の温度差があることも十分に察することができます。
 
 そこで私たちは、一度、各自治体の担当部局との、現状の資料を伴った率直な意見交換が、まずは必要ではないかと考えているところです。
 
―記―
 
1. 運営協議会の準備のあるなしにかかわらず、今も不足している地域福祉における“公平で自由な移動”確保の課題の中で、非営利の移動送迎支援活動に制限を加える措置は絶対に避けていただきたい。
 
2. 移動制約者への安全で安心な移動送迎支援サービスを健全に発展させるため、行政と非営利の市民活動との協働の営みを一歩でも進展させるための“ワークショップ(研究協議の場)”を早急に設定されることを要望いたします。
 
 以上、私たちがそれぞれの地域で日常活動として取り組んできた“公平で自由な移動(モビリティ)”の確保、そして、こうした市民参加型による“ドア・ツゥ・ドア”の移動送迎支援活動を“移動の手段”として利用されている当事者(利用者)からの要請内容を熟慮され、一日も早い大阪府としての見解と方向性を示されることを切に訴えるものです。
 
 つきましては、大阪府の一定の見解と方向性をお受けしたあと、早急に府下の自治体にも要請をいたしたいと考えておりますので、7月20日までに、ご返答をお願いする次第です。よろしくお願いいたします。
 
2004年6月18日
 
関西STS連絡会(大阪府下加入57団体連名)
 
 
NPOにおける移送サービスの役割と課題
2004年10月6日
特定非営利活動法人
ホップ障害者地域生活支援センター
代表理事 竹田 保
 
1. 移送サービスの歴史
1972年 東京都町田市 やまゆり号運行開始
1975年 新宿福祉の家(故矢田茂氏)在宅障害者向けとしてトヨタ自動車のハイエースをベースとした車両を製作
1976年 日産自動車 マイクロバス・シビリアンをベースに「わたぼうし1号」開発(社)日本青年奉仕協会が運行
1977年 新宿福祉の家とトヨタ自動車、日産自動車、新東京いすゞ自動車、ヤナセ自動車の4社により共同研究・開発
1977年 10月から12月中部から沖縄1998年6月 東北から北海道 全国キャンペーン
1978年9月 トヨタ自動車からNHK厚生文化事業団を通して全国10団体への寄贈
1978年 24時間テレビ「愛は地球を救う」(日本テレビ放送網)車両寄贈開始
1980年9月 「ハンディキャブ全国集会」「障害者の移動と交通に関するシンポジウム」(京都)
1986年6月 東京ハンディキャブ連絡会発足
1988年12月 「第1回移送サービスを考えるつどい(現:移送サービス研究協議会)」
1988年 地域福祉振興事業による助成(東京都)
1989年 ホップ移送サービス開始(日産労連よりリフト車寄贈)
1994年 日本財団((財)日本船舶振興会)車両寄贈開始
1998年 特定非営利活動促進法(NPO法3月25日法律第7号公布)
2000年 (介護保険制度施行 保険適用型の介護タクシー始まる)
2002年2月 STネット北海道発足
2002年9月 STS実証実験国土交通省より受託(第1回)
2002年10月 DPI世界会議札幌大会移送支援
2002年11月 STS実証実験国土交通省より受託(第2回)
2003年 (介護保険 通院等のための乗車・降車の介助 設定)
2004年 道路運送法第80条第1項による法的位置付け開始
2004年10月 (支援費 通院等のための乗車・降車の介助を設定予定)
札幌福祉配車センターOPEN(タクシーとNPOの協働配車)
北海道STSセミナー実施
 
2. 移送サービスの背景
(1)移動困難な障がい者の移動手段の確保
・タクシーの乗車拒否と物理的な困難
・自助活動としての移送サービス
(2)介護や介助の社会的関心の高まり
・少子高齢化と基礎構造改革
・介護保険と支援費
(3)社会的な構造変革による産業構造と労働環境の変化
・タクシー事業の規制緩和と構造改革
・介護タクシー
(4)社会的な価値観の変化
・自助と共助
・仲間としてのルーズな関係
(5)NPO法の公布
・1998年3月特定非営利活動促進法公布
・第1号保健、医療又は福祉の増進を図る活動
法人数 9965法人 認証法人17424法人中57.19% 増加数653
(6)ガイドラインの発表
・平成16年3月16日 国自旅第240号
【タイトル】福祉有償運送及び過疎地有償運送に係る道路運送法第80条第1項による許可の取り扱いについて
【発信元】国土交通省自動車交通局長
【宛先】各地方運輸局長 沖縄総合事務局長 各都道府県交通担当部長
・平成16年3月16日 国自旅第241号
【タイトル】患者等の輸送サービスを行うことを条件とした一般乗用旅客自動車運送事業の許可等の取扱いについて
【発信元】国土交通省自動車交通局長
【宛先】各地方運輸局自動車交通部長 沖縄総合事務局運輸部長
・平成16年3月16日 国自旅第230号
【タイトル】特定旅客自動車運送事業の許可要件の明確化について
【発信元】国土交通省自動車交通局旅客課長
【宛先】各地方運輸局自動車交通部長 沖縄総合事務局運輸部長
・平成16年3月16日 事務連絡
【タイトル】介護輸送に係る法的取扱いに対する意見の募集結果及び法的取扱い方針について
【発信元】厚生労働省老健局振興課
【宛先】各都道府県高齢者保健福祉課・介護保険主管課(室)
各指定都市高齢者保健福祉課
各中核市高齢者保健福祉課







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