・平成16年3月24日 事務連絡
【タイトル】福祉有償運送に係る運営協議会の設置等について
【発信元】厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課長
厚生労働省老健局振興課長
国土交通省自動車交通局旅客課長
【宛先】各都道府県交通担当部長
各都道府県(政令指定都市・中核市)障害保健福祉・高齢者保健福祉担当部(局)
各都道府県介護保険担当部(局)長
各都道府県特定非営利活動法人担当部長
・平成16年3月24日 事務連絡
【タイトル】介護輸送に係る法的取扱い方針について
【発信元】厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課
【宛先】各都道府県(政令指定都市・中核市)障害保健福祉主管課(室)
・平成16年3月29日 事務連絡
【タイトル】福祉有償運送及び過疎地有償運送に係る道路運送法第80条第1項による許可の取り扱いに係る様式例及び想定問答について
【発信元】国土交通省自動車交通局旅客課新輸送サービス対策室
【宛先】各地方運輸局自動車交通部 沖縄総合事務局運輸部
(7)その他
・タクシーとNPOの連携
札幌では現在2つの福祉共同配車センター構想があり、一つはタクシー事業者を中心としてNPOと連携して行なう構想と福祉NPOが中心となって移送サービスの連携を行なう構想です。
この構想の違いは簡単に言えば、緑ナンバーを中心として行うのか白ナンバーを中心として行なうかということですが、本来は両者が連携して行なう方が利用される方にとっては良いと思うのですが、札幌ではガイドラインの運営協議会が設置されていないためにNPOが有償運送許可を得ることが出来ないので、当面それぞれが配車センターを設置し協力をしながら将来の連携への準備を始めたという感じです。
配車センター構想のきっかけは、2002年に札幌でSTS実証実験というのが国土交通省のモデル事業が行われ、この実証実験ではタクシー事業者とNPOの連携と棲み分けをテーマにして9月から11月まで2週間ずつ、10月に開催された第6回DPI世界会議札幌大会を挟んで2度行なわれました。
モデル事業の内容につきましては国土交通省からも報告書が発行されておりますので、詳細につきましては報告書をご覧頂きたいと思いますが、実験に参加した関係者を中心として本格実施を実現できないかという模索をこの2年間行いようやく福祉配車センターの形が出来上がったというわけです。
タクシー事業者とNPOの関係は本来、対立するものではなく協働して利用者ニーズをより実現することにこそ多くの力を向けるべきではないかという視点で話し合ってきたわけですが、理念と理想は一致するのですが、どうしても一致できない部分がありまして、それが許可を得るということです。許可事業を行なうタクシー事業者としては2種免許については目をつぶっても、せめて80条許可だけは何とか得るということが協働運行の最低条件として提示され、ガイドラインの発表を心待ちにしておりましたが実施主体の札幌市が運営協議会を設置しないという問題に直面いたしました。
理由は多々あるのでしょうが、私どもとしては運営協議会が設置されない以上、ガイドラインでの許可を得ることが出来ないわけですから全く進展しないという状態になったのですが、それでは個々に今出来ることをとりあえず行なうことで運行はタクシー事業者、運営はNPOという形でスタートすることになりました。
タクシーとNPOが協働することは全人口の2%の移動困難者(札幌では約4万人)のニーズに応えるためには必要不可欠です。車椅子で乗車できる車輌は高額でしかも実車時間が短いために効率が悪く元々採算ベースが高く、1トリップ(片道)4千円以上の運賃でなければ赤字なるという試算が出ているほどですから簡単に普及することは考えられません。電動車椅子等の重度の移動制約者、エレベーターのない中層住宅に住み階段を背負って下りなければ外出できない障がい者のニーズを支えるためには、それぞれが協働作業をする必要があり、協働することで4万人がようやく家を出て行くことが可能になります。車輌や運転者などのSTSに係わる資源の共有化と連携によって移動ニーズに応えていく必要がある。
当面、期待することはタクシー事業者とNPOが連携するためにはNPOがガイドラインに基づく運営協議会の推薦を得て運輸局の許可を得る必要があるが、北海道ないでは設置している自治体が1箇所しかないためにNPOが許可を得ることが出来ずに共同配車が出来ないでいる。各自治体が運営協議会を設置するように指導が必要であり、基本的には都道府県単位で設置し生活圏域等の単位による支部協議会の設置によってNPO活動が推進するように国レベルでの指導を期待します。
・社会共助システムの構築
札幌を含めて北海道の多くの地域では1年の多くを寒冷積雪期間の中で過ごすことになります。冬期間の積雪や降雪の中で外出することは健常者でも困難な状況で、障がい者にとっては実質的に外出を断念せざるを得ない状況です。朝起きたら数10cmの雪が積もっていることも珍しくなく、歩道は歩行できない状態で、車道の轍を避けながら吹雪の中を外出するということは至難で家にこもり、冬期間は入所施設への需要が高まるという北国特有の問題を抱えています。
介護においては、家族介護の軽減を重視し家族介護のアウトソーイングとしてヘルパーや訪問入浴がサービスとして普及していますが、現実に24時間介護(あくまでも象徴的な表現で必要な介護を保障するという意味です)を実施するためには保険料の若年者負担だけではなく保険料の上昇など多くの課題があります。税による社会保障を実現するには国民的な合意が得られないという論調を考えたときに社会保険ではより合意を得ることが困難であると感じています。
STSが担うニーズを公的なサービスだけで担うためには基盤整備や人件費等、1トリップ4千円とした場合、札幌市内の移動制約者4万人に対して月に1回保障するとしても直接経費が19億2千万円となりますが、それでも利用者ニーズを満足させているとはいえないと思います。事業者にとっても十分な利益を得るということが困難で、利用者、提供者双方にとって満足を得るというのは困難だと思います。
障がい者にとってSTSを保障することは就労や就学には欠かせないサービスでありながら、現実には全く保証されていないサービスである。このSTSを社会サービスとしていくためには、介護保険や支援費等の公費によるサービス以外によって実施していくことが必要だと思います。地域が障がい者の社会参加を支え地域の仲間としてともに暮らしていく環境を育んでいくためには共助のシステムを創っていく必要がある。
STSにおいては利用者がデパートで買物をしたいというニーズに対して、自宅での外出準備は介護保険や支援費のヘルパーが行い、移動はデパートから委託を受けたNPOが行なう、デパートではデパートのサービス介助士が行い自宅の外出準備は公費で行い、他は企業の社会貢献の一環として行う事が出来ないかという検討を地域単位で行うシステムを構築する必要がある。
3. 事業概要
支援費ホームヘルパー(知的障がい児・者、身体障がい児・者)
支援費支給制度のホームヘルパー制度での入浴やトイレ介助等の身体介護や掃除や炊事・洗濯等の家事援助や18歳以上の全身性障害者への見守りを含む日常生活支援、外出時の移動介護等を原則同姓介助を基本として提供します。
ホームヘルプサービスは有償ボランティアから始まりましたが、自立ホームの開設を機に札幌市から事業委託を受けて今日に至っています。ヘルパーの平均年齢は20代前半で体力と気力は他の事業に負けないつもりです。
利用者の主体性を重視したいと思いながら運営しています。
・提供地域 札幌市内(主に東区、北区、西区)
・提供時間 24時間、年末年始を除く(但し定期利用については年中無休)
・内容 身体介護・家事援助・日常生活支援・移動介護
・変更は原則として前週の木曜日に調整をします。
・人員 正職員常勤12名、パート常勤6名、非常勤20名
・派遣契約時間 月5千時間
移送サービス「バード」
車椅子のまま乗り込むことが出来る、リフト付福祉車輌を使用して、自宅から病院やデパートなどの送迎を行ないます。運転者は有償ボランティアと常勤のスタッフが行なっていますが、10段以上の階段やストレッチャーでの送迎にも対応しています。
いつでも誰もが自由に移動できるということを目指して行なっています。全国14地域の団体と連携をとって活動をしています。
・提供地域 札幌市内及び近郊
・提供時間 24時間(原則として3日前の予約を前提とします)
・使用車輌 専用3台(他に兼用3台)
・トリップ 月400トリップ
・収支 収入月90万円 支出ガソリン代30万円人件費70万円その他20万円
・利用料 30分又は5kmを1単位として\1,000-。
支援費及び介護保険利用契約者の乗降介助を行う際には、車輌に伴う費用として2kmまたは10分を1単位として200円。
支援費及び介護保険利用契約者の外出介助を行う際には、車輌に伴う費用として2kmまたは10分を1単位として100円。
同乗者または相乗者がいる場合には1名100円、2名以上は1名につき50円。
8:00から18:00以外について25%を加算する。
深夜帯22:00から6:00については50%を加算する。
同乗者については、1名1回分500円を加算して請求する。
相乗りについては、1名各自5kmまた30分を1単位として500円、3名以上の同乗については1名について400円とする。
乗降車地が札幌市以外については1kmについて50円を別途請求する。
巡同型移送サービス及びディ・サービスでサービス実施地域を超える場合については1回につき1名200円とする。
共同住居「自立ホーム24」
障がいの種別や程度に係わらず誰もが地域で生活することを基本として、共同生活でお互いに助け合いながら生活する場を提供します。ケアは利用者の必要とするサービスを基本として支援費等の公的なサービス利用を基本としています。不足分のサービスはボランティアとしてインフォーマルサービスとして提供しています。痰吸引やてき便・胃瘻等の医療的なケアはインフォーマルなサービスとして提供をしています。
最初に利用された方が重度心身障がいを抱えていたということもあって、スタッフは他の施設での研修を受けるようにし、呼吸で会話が出来るようになって欲しいと思いながら日々奮闘しています。
来年度は身体障がい者福祉ホームとして10名定員で再OPENの予定です。
・利用定員 4名
・対象者 原則18歳以上の障がい者であれば利用が可能です。
・居室 1室1名
・利用料 月額\65,000-(朝夕2食分と水道光熱・日用品費を含む)
・スタッフ 24時間2名体制(その他1名管理人が近くに住んでいます)
午前中のみ現在、非常勤で看護師が対応しています。
・主な設備 痰吸引器、携帯用酸素、車椅子対応昇降形洗面台、バリアフリー浴室、福祉車輌等
・短期利用 利用は1日食事込み約\2,400-の他に介助料が必要です。
介助は支援費を利用することも出来ますが、常時介助が必要な場合は支援費でのサービスでは不足することもありますのでご注意ください。
1日を朝・昼・夜・夜間の4区分にして支援費での身体介護1時間を原則として夜間は2単位となります。入浴や食事介助、トイレ介助、寝返りなど通常の人員での対応が困難な場合は別途、1時間単位での加算となります。
・食事 食事はスタッフが入居者の希望を考慮して献立を考えて調理しますが、夕食は材料のみ配食サービスを利用する日もあります。バーベキューを玄関で行なうこともあります。
・行事 旅行や外出等の行事は入居者の希望を考慮して年に数回実施しています。今年は初めて温泉1泊旅行を全員で行きました。
・その他 入居者は個別に訪問看護を利用して健康管理を行なっています。
日中活動は関連サービスのデイ・サービス2箇所、作業所4箇所等を入居者の要望によって適宜利用していただいています。
障がい当事者ヘルパーが常時1名補助スタッフとして介助を担当しています。
食事の時間以外の決まった日課はありませんので、個々の入居者によってお風呂やその他の時間は違います。
金銭管理は個々に行なっていただいてます。
4. 提案
1)都道府県単位による福祉有償運送運営協議会の設置
ガイドラインに基づく運営協議会は自治体の設置によるものとされていますが、小規模自治体が独自に運営協議会を設置することは、各論に対する課題整理の時間が掛かりすぎ基盤整備のバラツキを生じる結果となる。現にガイドライン発表後半年を得ても北海道では212市町村で1箇所のみの設置となっている。今後、飛躍的に運営協議会の設置が進むということは現状では考えにくくガイドラインの猶予期間である2005年3月までにNPOが許可を得ることは極めて困難な状況であり、このままではガイドラインが発表されたにもかかわらずNPOの白タク状況が改善されないままとなっている。この際、運営協議会を都道府県単位で設置し、下部に広域自治体単位の受付窓口を設置し、有償運送の実施を推進すべきと考える。
2)地域福祉移動懇話会の設置
NPO、事業者、行政、経済界等の関係者が障がい者の社会参加手段の確保について話し合うことを目的として開催する。介護保険では通院等の必要最小限の範囲でしか外出支援が認められないが、例えばデパートで買物をしたいというニーズに対して、介護保険のヘルパーが自宅での外出準備を行い、自宅からデパートまではデパートの巡回型移送サービスとしてNPOが迎えにいき、デパートではサービス介助士が買物介助を行う事が出来ないかということについて検討し実施する。デパートやスーパーでは既に顧客サービスの一環として買物客の無料送迎バスを実施しているが障がい者用のサービスを実施することで購買層の拡大へと繋がるのではないか。仮に購買層の拡大と収益の増加に繋がるのであればNPOへ送迎を委託することが可能となり公費外による社会サービスの提供が可能となる。障がい者の地域生活を支援するSTSを地域に密着したサービスとしていくことは極めて重要であると考えるので社会共助のシステムを構築するためにも懇話会の設置が重要だと考えます。
3)セダン型自家用車の福祉有償運送での使用の許可
現在、国では構造改革特区の申請によって福祉車輌以外のセダン型車輌の福祉有償運送での使用を認めているが、多くの地域では特区の申請を行なわないために運営協議会による許可を受けてもセダン型車輌の使用が出来ない状況です。財政的な基盤が弱いNPOの多くは自己資金で福祉車輌を購入することは困難でありこのためにセダン型車輌使用している団体は活動を自粛せざるを得ない状況となります。また、車椅子を使用していない障がい者であっても移動困難者は多く、高齢者や知的障がい者の多くはセダン型車輌を使用したSTSを望んでいます。介護輸送では介護事業者がセダン型を使用することを条件付で既に認めているという現状を考えるまでもなく特区の全国実施が望まれます。
4)移動を基本的人権として捉え社会サービスとして明確に位置づける。
障がい者等の移動制約者にとっては移動手段が確保されないために通学や通所、通勤手段が確保されないために不利益を被っている。移動手段を基本的人権として位置づけることが必要であり。移動を権利として保障する法整備が必要である。交通バリアフリー法ではSTSについては見直しの対象となっているが、大規模輸送ではニーズに応えることは出来ないので個別輸送に特化したSTSをサービス基盤の一つとして明確に位置づけ総合交通施策として課題の整理を行う必要がある。
5)ガイドラインをどう捉えるのか
今回発表されたガイドラインは規制緩和の一環として法律上の課題をゆるやかにルーズに解釈することでNPO活動を支援することを目的として発表されたものとすれば、活動を規制することを目的としたものではなく奨励することを目的としているものである。
法解釈に線引きを引くとするならば、今回のガイドラインは事業規制からNPO活動の奨励ヘとシフトした位置に線引きをしたと理解すべきであるにもかかわらず、一部に事業許可と同様の位置づけとしてガイドラインを解釈するような考えもあるようですが、私としては大きな過ちであると考えます。NPO活動の意義は安心安全という事業許可の論理ではなく公共活動としての社会貢献策についてこそ議論されるべきで、事業許可の範疇で議論されるならば収支を前提とした営利事業としての論理では解決されない移動制約者の移動権保障を守るというSTS本来のNPO活動の起点に戻ってガイドラインを捉える必要があるのではないか。
1. STSの必要性
権利保障の中でも特に移動については権利意識が希薄で移動制約者の権利を保障すべきという行政の意識はほぼOに近い状態です。
障害者等の移動制約者にとっては移動を保障することは重要な課題でとりわけ障がいの多様性を考えると個別輸送によらなければ解決は不可能。
タクシーを初めとする運輸事業が障がい者のニーズを拒否してきたという歴史的な背景からSTSが始まった。
共助活動としてSTSが始まった。
2. ボランティア活動の意義
福祉が救貧対策から人権保障へと変わってきた中で行政措置としての公費の支出ではニーズに答えきれなくなってきている。
公金としての使途制限から脱却するためには公の共通理解を得る必要がある。
普遍的な共通理解を得るためには時間が必要だがその間のニーズに応えていくにはボランティア意識としての活動が必要。
活動が公としての理解を得られることで公的な位置づけとなる。
3. 公共福祉としてのSTS
バスや鉄道、タクシー等の公共交通機関が果たしてきた役割は交通事業としては大きな役割を果たしていると思う。
地域住民の貴重な移動手段としての役割を果たしてはいるが公共機関の担うべき役割としては移動制約者を公共の福祉の範疇から収支が不利ということで対象者から外し、公共交通といわれている現在の交通事業者は公共の役割を残念ながら果たしてこなかった。
公金支出を受ける事業者としては、当然、公共福祉を担う役割がある。
公共福祉を担う事業者としては非営利事業を行う責務が発生する。
交通事業者として非営利事業として障害者の移動保障をどこまで担って来たのか。
障がい者等の移動制約者にとってはSTSこそが必要なサービスである。
STSを担うことが公共福祉としての移動事業にとっては必要ではないか。
|