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■行政説明
 厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課長 山田亮氏より、現在の行政の状況、今後の方向性について、行政説明が行われました。
 「平成14年度に里親制度について大幅な改革を行った。最近2年間では、毎年300人ずつぐらい委託児童数が増えている。制度改正というのもあるが、なによりも、永年の里親の皆さまのご苦労に対する社会の注目がいろいろ高まってきたことが、こういう動きにつながっていると思う。昨年、「社会的養護のあり方に関する専門委員会」において、家庭的な養護というものが非常に重要であるという考え方が強調された。児童養護施設、乳児院等の施設においてもグループケアなどの、できるだけ小現模なケア形態が求められるとともに、家庭的養護の中心として里親の重要性も強く打ち出された。今回の児童福祉法改正案では、「要保護児童の養護をする主体として、里親の位置づけを明確にすること」「もうひとつは、これまで、児童養護施設等の施設長の権限として位置づけられていた児童に対する監護、教育、懲戒に関する権限を里親にも法律上明確にすること」があげられている。法律上の根拠を明確にすることで、これまであった支障というものを一つ一つ取り除いていくという取り組みである。また、16年度の予算の中で「里親養育援助事業」「里親養育相互援助事業」という里親に対するバックアップ体制を事業化した。まだ予算化していない自治体もあるので、こういう制度がそれぞれの地域で活用できるよう里親会からも働きかけをしていただきたい。現在の新エンゼルプランが16年度で最終年度となる。17年度以降の新々プランでは、児童虐待の問題、要保護児童の問題などについて、数値目標を設けて、着実に推進できるようにしていきたいと考えている。現在、要保護児童の中で里親に委託されている児童の割合が7.4%であるが、これを17年度から5年間に10%まで引き上げたい。都道府県にも意欲的に取り組めるような体制を作っていきたい。」などの説明がありました。
 
「里親制度を飛躍的に発展させるために〜これからの里親制度と里親のありようについて考える」
コーディネーター 網野 武博(上智大学教授)
助言者 村瀬嘉代子(大正大学教授)
シンポジスト 金川世季子(養育里親:埼玉県)
杵淵 紀子(養育里親:東京都)
岩渕 慎次(里子会 副会長)
 
 
<金川 世季子氏>
 研修会をはじめ、里親の集まりに積極的に出席するように心がけてきた。自分を見直すことができ、子どもたちと接する方法を見つけられた。社会から預かった子どもを児童相談所、実親、里親、学校の先生、病院の先生、その子どもにかかわっているそれぞれの立場で対等に協力しあって育てていく。里親は「お金持ちの慈善家がすること」ではなく、「社会のだれにでもできる制度」にしなくては、里親開拓は難しい。
 6人の子どもたちと多くの方々に支えられた事を感謝し、里親になってよかった。子どもに恵まれない家庭、実子以外の子どもと暮らしたいと願う家庭と、親に恵まれない者同士家庭を築く、この素晴らしい里親制度のこれからの発展をますます願う。
<杵淵 紀子氏>
 子どもと向き合うとき、ありのままを受入れて、抱きしめてと言われるけどそんな簡単なものではない。子どもが問題を起こし、どうしていいのか分からず、自分自身が何をやっても空回りの時もあった。その子どもが成長し、結婚することに。「お父さん、お母さんだから、あいさつしてほしい。」小さな結婚式だけれども、とても感激した。そして、新しい命の誕生。「お母さん、生まれたぜ。おれの子どもだぜ。おれの守る家族なんだぜ。」「俺の守る家族」と言った言葉で、今までの大変だった思いを忘れてしまった。
 里親というのは、すぐに結果は出ない。ずっと後、後でこういう喜びの結果を子どもからもらえるということを、身をもって経験した。血のつながらないことは、何の問題ではない。一緒に生活することがどんなに大切かと言うことを、子どもから教わった。
 児童相談所には、高い専門性と、こうした里親子を見守って、一緒に育てあってくれる体制が必要だ。
<岩淵 慎次氏>
 自分を語るうえで、里親家庭で育ったことは絶対はずせない。しつけが厳しい母だったが、その厳しさが、今の自分にとってすごく生かされている部分があると感じている。自分で自分をつくることなんていうのはできない。いろんな人と出会って、そしていろいろな経験をして、少しずつ何かを感じ、そこで成長していくもの。里親さんだけでなく、今まで出会ってきた人、そして経験、その全てが今の自分を作り上げたと思う。里親制度を発展させるには、社会的に里親子のことをもっと知ってもらうことが重要。もっとメディアなどを活用していくべき。
 
 各発言者からの発表のあと、児童相談所とのかかわり、子どもの名字をどうするかといった、里親さん誰もが抱えている問題などについて、様々な視点でのお話がありました。日々の生活の光景が目に浮かぶような内容に、会場の方々も引き込まれ、あっという間の3時間でした。
■全体会
 大会の最後に、開催県の東京都里親会高瀬子会長より、今後全国の里親が自らの養育力を高めると共に、里親制度の一層の発展に取り組んでいく総意として「第50回全国大会 東京宣言」が提案され、満場の拍手で採択され、会長より宣言文の朗読がありました。来年度開催県沖縄県里親会上間会長のあいさつの後、里子会の有志メンバーによる「島人ぬ宝」の歌と手話が披露され、素晴らしい歌声と三線の音色は会場の人々に感動を与え、来年の沖縄での再会を誓いました。
 
 
●次回第51回全国里親大会は、10月9日(日)沖縄県で開催されます。
 
 子どもは、いつの時代も、どのような社会状況下においても、家庭で保護者の正しく温かい愛情の元で養育されるべきです。しかし、今日、様々な事情により、家庭で暮らすことの難しい子どもたちが増えています。
 これらの子どもたちは、社会的な養護が必要であり、このための制度として、乳児院や児童養護施設などによる施設養護と里親による家庭的養護があります。
 里親制度は、この社会的養護の一翼を担っておりますが、子ども一人ひとりと真剣に向き合い、時間をかけて愛情を注ぐことができるという、優れた特徴を有しています。このように優れた制度であるにもかかわらず、わが国では、施設養護に偏り、里親制度は十分活用されておりません。
 今後、国及び地方公共団体はもとより、社会全体が、養護の必要なこどもたちのために、里親制度の拡充に総力を結集すべきです。
 私たち里親としても、これまで培った里親養育の知識・経験を糧に、社会の理解と協力を得るとともに、名実ともに社会的養護の主要な担い手となるよう、今こそ立ち上がらなければなりません。
 よって、私たち里親は、全力を傾注して次の取り組みを行うことをここに誓います。
1、子どもの養育に当たっては、正しい理解と温かい愛情を持って子どもに接するとともに、子どもの権利を十分に尊重します。
1、社会的養護を担う一員であることを常に自覚するとともに、児童相談所と連携し、養育計画に基づく養育を行います。
1、子どもの健康管理に留意するとともに、安心・安全な生活の場を確保し、子どもの健やかな成長に寄与します。
1、多様な子どもの状況に十分対応できるよう、研修などに積極的に参加するとともに、自己研鑽に努め、養育力の向上を図ります。
1、子どもたちが地域社会の中でいきいきと生活できる環境を確保するため、日々の活動や里親会活動などを通じて、地域の方々や学校、医療機関などの理解と協力が得られるよう務めます。
平成16年10月10日 里親一同







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