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『Manga Design』と漫画家の調べ方
 
 ここで、もう一度『Manga Design』に戻って、『ナニワ金融道』を描いた青木雄二を例に、漫画家の調べ方についてお話しします。この本では、『ナニワ金融道』を描いた青木雄二を含む135人の漫画家が選ばれています。日本語で説明があり、その最初のページの一番下に、彼の誕生日、デビュー、代表作が書かれています。それから、絵があり、その裏ページに英語、フランス語、ドイツ語で作品紹介が短く書いてあります。それから、作品のサンプルの絵があります。
 この本で印象的なことの一つは、マンガのテクニックや心理的影響を説明している点です。また、それぞれのマンガが、どのようにしてうまく成り立ち、どうして人気が出たのかも説明しています。それと比較すると、これまで話してきた他の本は、作品のそういった面にあまり注目していません。漫画家が有名になった理由を明らかにしているのは、どの本でしょうか。Amano Masanaoの新しい本だけでしょうか。それとも、他の本もそういうことを扱っていますか。さらに調べるのに役立つように、具体的なことを書いているのはどの本ですか。
 今度は、「作用因子」というコンセプトについて話したいと思います。漫画家のキャリアを考えると、誰の場合でも、マンガを描くだけではありません。他の多くの人が必要です。編集者、出版社など、漫画家の成功を取り持つ人達のことを、この講座でも学ぶと思います。また、外部の力や制約も、漫画家のキャリアに影響を与えます。作品に反映されたり、漫画家の目標達成に影響を与えることもあります。
 私の経験では、マンガのテクニックについて詳しく書いている本は、あまりありません。ですから、Amano Masanaoの本がテクニックについて論じていることに感心しました。
 青木雄二はこの本で取り上げられましたが、取り上げられなかった漫画家もいます。日外アソシエーツが出版した『漫画家人名辞典』という本があります。この辞典は、2003年に出版され、3,300人くらい載っています。何年に何があったか、詳しく載っていますので、青木雄二について調べているのなら、これをもとにさらに調べることができます。しかし、この漫画家にまったく馴染みのない人、例えば、私の大学の学生などにとって、これがどれだけ役立つかは疑問です。ここに書かれていることを、まったく理解できないかもしれません。この本には絵がないということも、一因だと思います。他にもいくつか載せてあります。『日本一のマンガを探せ!』には、とても短い説明ですが、『ナニワ金融道』のことが書いてあります。長谷邦夫著『ニッポン漫画家名鑑』にも記述があります。最後に、2003年の朝日新聞に載った青木の死亡記事も、皆さんにお渡しした資料に入れておきました。実は、この記事には、他の資料にないことがたくさん書かれています。
 漫画家を研究する際、その人の経歴が重要だと思います。どんな作品があるか、誰に師事したか、誰の影響を受けたか、どんな生い立ちかなど、とても大切になります。そして、編集者など、漫画家を取りまくさまざまな「作用因子」の存在もあります。また、どの漫画家協会に属しているかも大切です。
 1992年出版の500人の漫画家を集めた本を2冊取り上げましたが、青木雄二は、どちらにも載っていません。というのも、当時、まだあまり有名だとは考えられていなかったからです。1990年に、『週刊モーニング』に連載を開始したばかりでした。ですから、1992年のいずれの漫画家人名録にも載っていません。しかし、今なら主要な漫画家の一人に数えられるはずです。青木雄二が私や多くのアメリカ人の興味を引くのは、自分の人生経験に基づいてマンガを描いたという点です。社会の裏側で生きて、さまざまな人を知っていました。ですから、彼のマンガにはリアルさがあります。オハイオ州立大学経済学部の教授の一人が――この作品は、1995年頃の発表だと思いますが――私にこう言いました。「バブル崩壊で何が起こっているのか、日本経済を理解したいけれど、本を読めないという人は、このマンガを読んでみればいい」と。問題の大きさが分かる入門書だと言っていました。ですから、当時の日本に関する情報源として、このマンガはとてもすばらしいもののようです。論文執筆などのために、青木雄二について調べる場合、参考資料は少ししかありませんでした。ですから、この『Manga Design』は、大きな前進だと思います。少なくとも、どのように考えればいいか、漫画家が作品にどう取り組んだか、ヒントを与えてくれます。
 
 以上、マンガやマンガの関連資料の収集と研究の方法について、お話しいたしました。皆さんが研究を進める際の参考になれば幸いです。







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