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【関連資料2】
 以下は、平成15年5月9日、当研究プロジェクトの調査活動の一環として聞き取ったものである。
 
安明進氏聞取り
 
 金正日政権をどう見るか。北朝鮮のテロは韓国人を数千人拉致しているし、日本人数百人を拉致している。それだけでなくアラブのテロ国家と連携してテロ要員の教育を請け負っている。シリア、パレスチナ、イラン。イラクは分からない。
 麻薬販売も70年代の後半に始め、80年代に本格化した。これは3号庁舎(労働党工作機関)でやっていたが、91年に金正日がある会議の席で、「3号庁舎は麻薬で外貨をよく稼いでくる。人民武力部や国家保衛部や社会安全部は何をしているんだ」と怒鳴ったので、3つの部署も麻薬販売をするようになった。そこで、表面化してきた。それまで、80年代に韓国や東南アジアに麻薬を売っていたのは関心を呼んでいなかった。
 3号庁舎の915病院に日本のやくざの麻薬専門家を呼んで1年6か月麻薬開発の技術指導をしてもらった。91年に呼んで、92年に帰した。つまり、人民武力部等別の機関も麻薬販売に入ってきたので、差別化をはかり質を高めるために3号庁舎がやった。なお、麻薬には覚醒剤も含まれている。
 92年から94年の間に、人民武力部がソ連崩壊後のロシアから生物兵器の専門家を呼んだ。権熙京ロシア大使は共和国英雄の称号を受けて3号庁舎対外情報部の部長になった。なぜ英雄称号を受けられたかと言うと、核兵器開発で最も革新的な部分の技術をロシアから入手することで決定的な役割を果たしたからだ。どんな技術なのかは分からない。
 92年の初めに、金正日政治軍事大学の分校の烽火大学の前にある人民武力部国防科学院で大陸間弾道弾のミサイル開発についての技術的な課題をそこで完全に解決した。そこの3人に金正日が英雄称号を与え、そして平壌市内の高給アパートを与え、科学院との通勤用に日本製の高級バスを3台与えた。3人の名前は分からない。
 これは金正日政治軍事大学の中で、そのころ国防科学院で大陸間弾道弾を作る技術開発に成功したという噂話が教官たちの間でささやかれていた。ミサイル開発に成功したというのではなく、ミサイル開発に必要な決定的な技術開発に成功したということです。
 1990年代の初めに、北朝鮮は日本を完全に射程圏内に入れた。韓国だけを攻撃できる能力では体制を維持できない。日本を攻撃できないと防衛できない。究極的にはアメリカ本土に届くミサイルを持つことだ。日本のターゲットの第一は米軍基地で、第二は日本の主要都市だ。なぜなら日本の主要都市を攻撃すれば、「米軍がいるから我々が攻撃される。米軍は出て行け」という声が起こるからだ。
 89、90年に与党の代表だった金泳三が朴哲彦と一緒にソ連を訪問してゴルバチョフに会いにいった時、金正日はテロリストを派遣して金泳三を殺そうとした。金日成がそのことを知って止めた。テロリストには途中で帰国命令が出た。青瓦台襲撃事件やラングーン事件を見ても、テロ政権であることは明らかだ。国際社会は、9・11事件の後、イラクのテロ政権は倒さなければならないと考えたが、もっと注目すべきは北朝鮮だ。日本の目の前にある脅威は北朝鮮だ。北朝鮮が脅威であることを分かっていながら、それを除去しようとしないのは馬鹿なことだ。相手がこちらを攻撃しようとしていることが分かっているのだから、それに対し先制攻撃しないと国を守ることにならない。
 92年4月24日、25日が人民軍創建日でその前の日に、人民軍将校たちのパーティがあった。そこで金日成が将軍たちに「万に一つわが国がアメリカと戦争して負けた場合にどうなるか」と聞いた。将軍たちは立ち上がって「絶対に負けません」と言ったが、金日成は、「負けることを仮定して考えたらどうなるか」と言った。それに答えられる将軍はいなかった。そこで金正日が、「首領様におかれては、我々が負けることに備えてどのような対応が必要かを質問されている。正しい答えをしなさい」と言った。将軍たちがみんな黙っているので金正日が立ち上がって、「朝鮮のない地球はありません。地球を破壊します」と言った。自分の体制が崩壊する時には、黙っては死ねない。もっている武器をすべて使うと言った。これは誰かの情報ではなく、北朝鮮内部の教育資料に書かれている話だ。金正日がこれくらい大胆であり、大人物だということを宣伝するために教育資料に載っている。政権が倒れる時は道づれにするというのだからこちらが金正日を先に倒す必要がある。これが教育資料になったのは金日成が死んだ後だ。脱北者の中で軍隊経験があるものはみんな知っている。彼らは、韓国や日本やアメリカに持っている武器をすべて使うはずだから、時間的余裕を与えない形で亡ぼさなくてはならない。
 防衛のための国防力が必要なのではなく、日本の安全のために敵を攻撃できる武力がいる。このような北朝鮮の状況というのは、日本が攻撃的な武力を持つに十分な理由になるわけだから、何も躊躇せずに堂々と攻撃的な武力を持つべきだ。
 また、北朝鮮を先制攻撃するためには、どこに何があるかを正確に知る情報機関が必要だ。アメリカが、ロシアや中国のことを考えて、自分たちが攻撃を受けない限り北朝鮮に対して先制攻撃をすることはないだろうし、またそのような重要な軍事情報を絶対に日本にはくれない。今こそ、北朝鮮の攻撃から日本を守るため、日本の国民に対して何をするかを訴えるべきだ。
 なぜアメリカはテロ政権と規定しているのか。日本も自国が脅威を受けているのだから自国の立場でテロ政権と言うべきだ。清津連絡所の300人以上の訓練された工作員が日本国内潜入の準備を整えている。彼らが本格的な活動を始めれば大混乱になる。一昨年、日本が北朝鮮の工作船を沈没させたからその後工作船は入ってこないだろうと思っていれば、それは大きな誤解だ。北朝鮮は韓国に対し、数百回、潜水艇・潜水艦を派遣している。このような潜水艇・潜水艦を北朝鮮は持っている。工作船や潜水艇を派遣してくるということは日本を工作員の力で破壊できる力を維持し続けているということだ。北朝鮮をどのように見るかは、この研究会の報告書に終わらせてはならない。日本政府がそれを知らなければならない。
 加えて、韓国についてどう考えるかを考え合わせるならば、より危険度が強まっていると言える。韓国が完全に赤化統一されるとは私は見ていないが、北朝鮮が掲げている「民族共助」の方向に韓国は走っているので、日本と北朝鮮の間で衝突が起きた場合、韓国は北朝鮮側につく。なぜ今米軍がソウル以南に移動しようとしているのか。韓国当局の内部分析によれば、アメリカは韓国民によって在韓米軍が人質になるのではないかと考えているからだ。その危険性を計算に入れてソウルの南に移動しようとしている。アメリカが臆病になっているのではなく、逆に、アメリカが北朝鮮を攻撃したら、3万7千人の米軍人を黙って置いてはおかないという意識を持っている韓国人は多い。同じ民族である北朝鮮を米軍がたたくことを我々は座視しない、と思っている韓国人は多い。率直に言って、現在の韓国の政権も、日本の潜在敵国だ。この研究会の報告書にはその説明も必要だ。
 
【質疑応答】
 清津連絡所に300人の工作員がいるということだが、既に日本に入りいつでもテロができる訓練された工作員は何人いるか。
 日本に既に200人浸透している。その協力勢力を含めれば数千人になる。200人のすべてが北朝鮮から浸透してきた人間ではなく、朝鮮総連等の人間も含まれている。これは金正日政治軍事大学の教官から聞いた話だ。
 この200人は専門的なテロ活動の教育を受けているのか。
 そう見ていい。訓練が足りない場合は、日本からの短期訪問団の一員として北朝鮮を訪問し、他の団員たちが国内を回っている間に、テロ教育を受けて帰る。日本政府が今なすべきことは、まず経済支援をしないことだ。次に少しずつ瓦解に向かい、人民の不満が高まっている。支援は抵抗勢力を殺すことになる。食糧支援は日本に対する脅威を極大化させることになる。食糧支援は人道支援だというけれども、人道支援ではない。食糧支援をしながら毎年数百万人が餓死し続けることをずっと見続けるより、支援を遮断して、数年間の間に不満が高まり、北朝鮮の政権が倒れる方が餓死者を少なくする道だ。北に人道支援や経済支援を続ければ、食べられなくなった人民が韓国だけでなく、日本に向かって大量に向かってくることも想定される。北朝鮮からの大量難民が来るという人がいるがそういうことはない。彼らは、相対的貧困感や差別を感じ、犯罪に走るだろう。
 安明進氏が知っている金正日暗殺未遂事件は。
 91から92年の間に6か月間、大学で呉克烈が通常の課程を中止してテロ訓練をさせた。クーデター訓練のようなものだ。やらされている自分たちが、対南工作ではないのではないかと疑っていた。92年に咸鏡南道で反乱未遂事件があったと聞いている。
 その話は聞いたことがない。どのくらいの規模だったか。
 軽歩兵教導指導局(人民軍特殊部隊、「第8軍団」が改称)の一員が韓国に亡命している。その男が第7軍団の反乱鎮圧のためにヘリコプターに乗って派遣された。その男が処理したという。
 92年の事件はフルンゼ事件ではないか。
 そうだ。第6軍団だった。そこにヘリコプターで鎮圧に行った人が韓国にいる。
 インタビューしたいね。
 金正日の周りにいる人間の中で誰が実弾が入った銃を持っているか。
 うーん。何人かいるのは間違いない。白頭山のマークをつけている。
 難民の中に武装難民を意図的に入れて日本に送り込む方法等の教育はされたか。
 聞いたことがない。
(以上)







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