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惠谷 私の考えでは、おそらく北朝鮮は核爆弾を持っているだろうし、まだ持っていなくても、今つくりつつあるから、半年後とかいつかはできるでしょう。一方で経済が非常に困難で、2,200万人の国民のうち、200万人の幹部は問題ないんだけれども、2千万人が大変苦しんでいます。私の個人的な意見では、一刻も早く金正日体制というものを打倒すべきだと思うんですが、先生はどういうふうにお考えでしょうか。
フョードロフ 理論的に言えば、私は賛成です。しかし、どのような措置を使って可能かということです。どのようすることができるのか。
惠谷 それも理解できます。ただ、先ほど先生が、今、大量の経済援助をすると、北朝鮮は核開発をやめる可能性もあるというふうにおっしゃいましたが、どんなに援助しても金正日は秘密裏に核開発は続ける。がゆえに、援助をするべきでないと私は考えますが、先生はいかがでしょう。
フョードロフ 大量の経済援助問題を解決しなければいけない、ということは私も賛成です。今の状態では、非常に苦しい状態のなかで経済援助を与えると、金正日の国内の立場をもっと強くすることになります。一方、金正日はどんなに挑発しても、必ずいい方法で西側がこたえる、だから挑発によって目的が達成されるのではないか、と彼は考えると思います。
 犯罪には、いつもこういう問題があります。挑発者にどのような態度をとらなければならないか。挑発者に犠牲者が金を払うと、挑発者の立場を強めることになり、彼はもっと強く要求します。これと同じ問題です。どのような力を利用して、北朝鮮の問題を解決できるかということは、まだ分からないのです。誰も知りません。私も全然分からないのです。
惠谷 今回モスクワに来て、いろいろな方と話をしたときに、2,000万の国民が餓死している、非常に苦しい状況にあるのは北朝鮮の歴史的な伝統なので、それは考えなくてもいいのではないかという意見がありましたが。
フョードロフ そういう意見もあります。餓死している理由はいろいろあります。北朝鮮にとって一番苦しい時期は、91年以降でした。ソ連がすべての援助を中止したときです。また90年代の中ごろも、非常に苦しかったのです。そのとき北朝鮮当局は、配給制度を一時緩和して、市場経済を部分的、一時的に導入しました。だから生き残りの水準、貧しさの水準はいろいろな時代で違います。
 こういう例もあります。東ドイツの例です。20年前にドイツの社会制度は非常に安定していたんです。社会主義国のなかでは一番安定した国だった。警察も強いし何でも強かったんです。全部政府によってコントロールされていました。にもかかわらず、一年後に全てがなくなった。全ての政権と全ての政治・経済システムが。ですから、北朝鮮が今の経済状態のなかではなくなる可能性も私は否定しません。特にこういう国内の問題によってですね。しかし、予想ですから結論するのは非常に難しいです。閉鎖された国ですから、実際に何が起こっているか、研究者はよく分からないのです。
惠谷 先生は北朝鮮に行かれたことはあるのですか。
フョードロフ 一度も行っていません。
惠谷 今の意見には私も全く同感で、認識も一緒です。結論は非常に難しくて、一番いい結論は、北朝鮮が国内で崩壊していくことだと思っています。ですから、そのためにも経済援助は一切しないというのが現在可能な具体的方策ではなかろうかと思います。
フョードロフ 賛成です。
惠谷 今日はありがとうございました。
 
■インタビューその6(2003年12月1日午後1時半)
ロシア科学アカデミー極東研究所
 ワシリイ・ミヘーエフ副所長(78年から平壌ソ連大使館勤務。81年から84年まで一等書記官。最後の勤務は89年。朝鮮語に堪能)
 
惠谷 12月に6者協議が始まりますけども、その場においてロシアの北朝鮮に対する対応をどのようにお考えになっていますか。
ミヘーエフ副所長 12月には6者会議は必ずあると思います。なぜかというと、2週間前に北朝鮮から学者のグループが来ました。ここで会議があって、北朝鮮の学者たちは、平壌はこの6者協議を準備していると言いました。
 ロシアの北朝鮮に対する政策、態度はどのようになるかというと、2、3点を強調しなければなりません。
 まず第一に、北朝鮮の問題はプーチン大統領の注目をそんなに引いていないということです。核拡散問題についてのみ、プーチン大統領は北朝鮮に興味を持っているのです。プーチン大統領の北朝鮮に対する態度とイラクに対する態度を比べてみると、「オデッサ人が言うように」二つの大きな差があります。なぜかというと、北朝鮮はイラクと違って、ロシアの大手企業は本当に興味がないのです。イラクには石油がありますが、北朝鮮には特に何もありません。ロシアの大手企業は東ヨーロッパに興味を持っています、例えば民営化の過程に興味を持っていますが、北朝鮮には民営化プログラムはないですから、ロシアの大金持ち、大手企業はそのような興味がないのです。だから、今の6者協議に関しては、ロシアの経済人、ビジネスマンは北朝鮮に興味を持っていないので、大きな役割を果たしているのはロシア外務省だけです。
 またもう一つ。特に今のロシアの核危機に対する路線には、二つの論理の影響がありました。一つの論理は、核超大国の立場。核問題といいましても、ロシアとアメリカはすべての国々よりも核開発で一番上ではないでしょうか。この点からいうと、核拡散についてのロシアの責任はアメリカと一緒です。まずこれが一つの論理です。核開発の超大国の論理です。この論理からいうと、ロシアはまずアメリカと同じように、北朝鮮に対する厳しい措置をとらなければならないではないでしょう。
 もう一つの論理は、ロシアと北朝鮮との関係です。90年代のコズイレフ外相当時のロシア外務省は北朝鮮を忘れ、ロシアはそのとき北朝鮮問題に関する自分の役割などを失いました。そのときにアメリカも日本も、ロシアと北朝鮮の問題を話したくなかったんです。ロシアと北朝鮮との関係改善は、特に首脳会談の外交によって改善され、北朝鮮の問題に関するロシアの立場を強くしたと思います。首脳会談といいますけれども、会談そのものの内容はそれほど重要ではなかったけれども、ロシアの立場は北朝鮮問題でもっと強くなってきたのです。
 一番目の論理からいうと、ロシアは厳しい政策をとって北朝鮮との関係をもっと悪くしなければならない。もちろんそのことからいろんな結果が出るでしょう。だからロシアは一番目の論理と二番目の論理の間にあって、いろんな問題を調整しています。
 6者の最初の会議まで、ロシアは二つの論理がぶつからないように努力していたんです。これは実際にうまくやっています。プーチン大統領はブッシュ大統領と会ったときに、核拡散防止条約などについて話しました。そして、ロシアの外交官は北朝鮮の外交官と会ったときに、ロシアと北朝鮮との関係についていろいろ話したんです。
 しかし、北京における6者協議があったときに、ロシアは初めてはっきりと、一番目の論理に基づいて自分の政策をみんなに公表しました。だから、その二つの論理の間にはもう差はありません。そのとき北朝鮮のリーダーは、モスクワは以前の北朝鮮に対する責任を守っていない、と非難しました。
 またもう一つの点ですけど、ロシアは中国と違って北朝鮮に影響を与えるメカニズムがありません。だからロシアは中国と違って、自分で金正日の政策に影響を与えることはできないのです。ロシアは政治的、外交的な措置により、金正日とのいい関係を利用して、外交的、政治的に少しやることはできますけども、それ以上はできない。
 特に一番目の論理から、ロシアは北朝鮮に言いました。「あなたの安全は保障しますが、軍事的な措置ではあなたの安全を保障できない」と。だから12月の6者会議では、ロシアの態度は同じようになるのではないかと思っています。ロシアは核のない朝鮮半島と繰り返します。しかし、金正日は自分で安全を保障できないでしょう。
 ロシアは6者協議において、もちろんこれからも出席して参加したいということを述べますが、しかし、この協議のリーダー役を目指してないということも強調しておきます。なぜリーダーシップを目指してないかといいますと、北朝鮮は2か国間の関係、米国との関係ですべての問題を解決しようと思っているからです。もう一つの理由は、ロシアは中国と違って、北朝鮮には経済的、政治的にも圧力をかけることができないからです。しかし、朝鮮問題の調整過程には、ロシアは参加したいのです。
 この会議のもう一つの一番重要なテーマは、どの国の条件に基づいて北朝鮮の問題が解決されるかということです。アメリカの条件は、まず北朝鮮はすべての核開発をストップすれば、アメリカもこれを理解して経済援助を与える。北朝鮮の条件は、アメリカが経済援助を与え、その後に北朝鮮が核開発をストップするということです。協議の参加者はこの点についての自分の態度を決めなければなりません。
 もう一つのニュアンスは、ロシアは日本人の拉致問題をこの6者協議で議題に上がらないように努力します。拉致問題は6者協議で話さないほうがいい。拉致事件は6者協議には関係なくて、日本と北朝鮮との関係で、この問題を扱わなければならないと思っているんです。
 ロシアは積極的ではなくて、静かにこういうことを進めていくと思います。
 ですから最後に結論を出すと、ロシアの今の立場は、この上に書きますけど、北朝鮮、この間には分かれているラインです。一番厳しい立場は米国です。その近くには日本がいます。日本も厳しいです。また上のほうはアメリカに近いですけども、これはちょっとおかしいかもしれませんが、中国です。もっとやわらかい立場は韓国です。ロシアは二つの立場を持っています。二重奏の立場です。核拡散では非常に積極的、北朝鮮の利益を考える北朝鮮に近いです。しかし、ロシアはこのラインを越えません。みんなと一緒ですけれども、もっとやわらかいと思います。







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