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 今、ブッシュ大統領は北朝鮮を攻撃して政権を変えるつもりだということを言っています。韓国の学者によると、北朝鮮の核開発の問題とは関係ない、ということでした。ブッシュは実際にイラク、イラン、アフガン、また北朝鮮の政権を変える計画を持っており、今の問題はブッシュの政策のためになるんだと、韓国の学者は書いています。むしろ、ブッシュは北朝鮮の問題は中近東と別問題で、本当に北朝鮮を攻撃する気だと。
 ブッシュ大統領は、日本やロシアの国益に反するということをよく分かっているんです。今のところ、ブッシュは私たちの意見を聞くはずです。例えば、イラクの今の戦争を考えてみると、ミサイルが攻撃対象と違うところ、民間の家などにも何回も当たりました。ウラジオストクまで北朝鮮から15分です。ロシアにもミサイルがあり、対空ミサイルなども多いですから、北朝鮮で戦争が起こったら、非常に緊張するのではないでしょうか。中国も緊張します。ロシア製のミサイルはソビエト製で古いですから、どこに飛んで行くか分からない。そのときに何が起こるでしょうか。
 北朝鮮の核開発問題は、お互いに自分の国を破壊することになるんです。プラスにならないほうが多い。そのため、中国も日本もロシアも、北朝鮮のためにお互いに話し合うんです。実際に北朝鮮にミサイルや爆弾があっても、どんな国にも脅威ではありません。資源はない。石油はない。ガソリンはない。エネルギーもない。食糧もない。二週間で国は全部なくなります。北朝鮮はどの国を占領できますか。韓国でも占領できないでしょう。ロシア、日本、中国は言わなくてもいいでしょう。
 だから、挑発していますけれども、本当の意味で脅威ではないのです。世界秩序に対する脅威はありますけど、実際の脅威はないのです。北朝鮮の脅威という話を聞くと、一般のロシア人、特にウラジオストクやモスクワに住んでいるロシア人はみんな笑っています。どんな脅威か、と。だから私たちは、自分自身を脅かしているんじゃないですか。私たちはみんな、中国も、日本も、北朝鮮のためのゲームをやっているのです。日本が恐怖感を持っているということを聞けば、北朝鮮は非常にうれしいはずです。
 韓国の学者と話しましたけれども、韓国の学者は全然北朝鮮を恐れていません。もう一つ、誇りとしているんです。「ああ、これは朝鮮の爆弾だ」といいます。だから、実際にそんなに気にしないほうがいいですよ。
惠谷 よく分かるんですが、そうしていると、2千万の国民がどんどん餓死していくという問題があると思います。
トカチェンコ 今の北朝鮮の状態を見ると、飢えてしまう人もいます。ですが、飢餓状態は北朝鮮の歴史的な伝統なのではないでしょうか。いつもそうだったんです。
 最初に朝鮮半島に入ったロシアの学者の本を読みました。彼は釜山港に入って、釜山から北のほうに上がって行ったんです。山に木もなかったのは、草を含めて全部食べてしまったからです。釜山でも草を食べました。北朝鮮で一本の木を見つけましたが、すべては砂漠のようだったんです。だから飢えの問題は、歴史的な問題ではないでしょうか。
惠谷 北朝鮮に行ったロシア人の日記、そのロシア人の名前は分かりませんか。
トカチェンコ その本を持っていないですけれども、60年代の初めに発表されました。そのときに彼は平壌に勤めていました。『観光客の日記』といいます。東洋学研究所の友人から借りて、読んですぐ返しました。
惠谷 そうですか。分かりました。
 
■インタビューその3(2003年11月26日午後3時)
ロシア原子力省戦略安定研究所(ISS)
 ヴィクトル・ミハイロフ所長(九二年〜九八年、原子力エネルギー大臣。99年から現職)。インタビューには、ヴラジミル・ボクダノフ副所長(保安担当)、ヴラジミル・メドヴェジェフ副所長(分析担当、退役中将)、ヴォリデマル・ヴァラヴァ科学局副局長らが同席。
 
惠谷 今日は二つの質問をしたいのです。一つは現在のロシアの核、特にテロリスト攻撃用の、英語で言う「バンカーバスター」について。もう一つは、北朝鮮の核技術の能力をどのように評価されているかということです。
ミハイロフ所長 核兵器について言えは、核兵器は必ず発展します。また、必ず改良するようにしています。どの兵器も常に作動しています。誰と戦うかというと、その敵のなかにはテロリストもいます。通常型の大きな爆弾は、テロ攻撃には必要ないと思います。実際に合わないんですよ。ですから、特に小さな原爆が必要なのです。
 そんなに大きな破壊力ではなくて、環境に悪い影響をあまり与えない、ミニマムの影響を与えるような爆弾が必要です。こういう原爆が地中に入って爆発し、しばらく時間がたつと自由に行動できるように、放射能などが残らないように爆発させなければなりません。ですから、アメリカはご存じのように、5キロトンの原子爆弾の開発を許可しました。つまり、5千トンということですね。
 ロシアでも以前から、開発が許されているんです。私たちは、幅広い核兵器の開発をやっています。しかし、爆弾を岩山のなかに何メートルも入れるような原爆をつくらなければならない、という課題があります。非常に複雑な技師的な課題です。米国は今、そのような兵器を開発していますが、ロシアに続いているのです。ロシアはどのような原爆が開発されているということを、常に見ています。だから、小規模の爆弾を独自に開発しているのです。
惠谷 ロシアの場合、何キロトンとは公表はしてないんですか。
ミハイロフ はっきり言えないですけれども、一番重要なことは、もっと深いところまで入ることですね。こういうことを今、特に開発しているんです。
惠谷 もっと深いというのは、アメリカと比べてという意味ですか。
ミハイロフ アメリカと比較できませんが、ロシアでも独自にいろいろやっています。ロシアはアメリカに負けません、どんな開発でも。逆に、アメリカはいつもロシアの後塵を拝しています。どんなに難しい時代であっても、ロシアは核兵器開発では世界で一番です、今でも。
惠谷 英語でバンカーバスターと言うように、ロシア語で何かそういう愛称がありますか。
ミハイロフ プロニカュージャヤ・ボムバ、つまりになかに入る爆弾ということです。地下に入る爆弾と。
惠谷 日本語に訳すと、地中浸透爆弾ということですね。
ミハイロフ そうです、地中浸透爆弾です。
惠谷 次に、北朝鮮がプルトニウム爆弾をつくっているのは、間違いないと思うんです。専門家の方に素人の日本人が核爆弾の構造を説明するのは失礼ですが、ただ私がどの程度理解しているかを分かっていただくために、簡単にここに図を描いてみます。マンハッタン計画のときのプルトニウム爆弾の開発ポイントは、この球体の32面を同時に爆発させる技術でした。これを千分の一秒単位で中心部に向かって爆発をさせる技術が大変だったと。
ミハイロフ ミリ秒と言います。国際語でミリ・セカンド。その後はマイクロ・セカンド。その後はナノ・セカンド。その後はピコ・セカンド。
惠谷 この技術は、もう既に50年前以上のもので、現在は、例えばビデオカメラとかの技術で、一瞬に爆発させる、点火する技術は難しくないと私は考えています。
ミハイロフ 北朝鮮だけでなく、今、こういう設計を見ると、多分、日本の学者も同じ研究をやっているのではないか、と私は考えています。北朝鮮も同じ設計図を描いているのでしょう。もちろん、一番重要なことは技術です。技術は核兵器不拡散の根本です。核兵器ではないが、核兵器のために使う通常の技術です。
 ご存じのように核拡散防止条約があり、私たちはこの条約を守っていますので、今のこの設計図についてコメントできません。しかし、分かっていても、本当に兵器をつくることができるかどうか。どんなに知識を持っていても、そんなに簡単ではありません。今の北朝鮮には核兵器は全くないという確信を持っています。一部の知識はありますが、核兵器はありません。核兵器の一部でしょう。しかし、ほんとうの意味で核爆弾をつくる労力、知識、技術も全くありません。
 ご存じのように、こういう事実があります。国際原子力委員会が70年代に北朝鮮に行ったとき、プルトニウムを5グラムしか見つけませんでした。プルトニウムを抽出するのは、すごい負担になります。非常に高いのです。ウラン鉱石を開発していますが、プルトニウムを抽出するのは、一番難しい。だから、原爆に必要なプルトニウムを持ってないのです。
 今、北朝鮮には核兵器がないということで、安全に確信を持っています。北朝鮮は核兵器を持っていません。もちろん開発していますけれども、今のところ、核兵器はありません。しかし、核兵器保有の夢はあると思います。核兵器開発のための政策を進めているけれども、今はまだ、一発もないのです。
 もう一つ、KEDOという組織が設立されました。韓国、日本、米国でつくった組織です。ロシアは、そのKEDOに入っていません。どうしてロシアのことを無視したのか分かりませんが、ロシアは核兵器と核開発には、すごく貢献をしてきました。核兵器のため、核戦力のために原子力研究所の土地を選ぶこと、専門家を育てるとなると難しい。しかし、日本、韓国、米国は、そのときロシアを組織に加えず、3か国でやるということでした。一億ドルを払うとKEDOに入れると、ガルーチというアメリカ大使は私に率直に言いました。KEDOという組織は米国が主導しており、3か国で北朝鮮に原子力発電所をつくることになりました。しかし、どうしてつくらなかったか。どうしてロシアを招待しなかったか。私たちが知っている限り、核兵器に使える量のプルトニウムは北朝鮮にはないということです。
 問題は、北朝鮮の核開発に貢献したロシアは、今でもKEDOに招待されてないことです。日本の大使も一回も私に会いに来ていません。だから、KEDOの活動にネックが生じたのではないでしょうか。
 日本の政府に聞いてください。何を望んでいるのか。彼らは、北朝鮮が最終的に核兵器を持つということを望んでいるのではありませんか。もちろん、15年とか20年後ですが、北朝鮮は必ず核兵器を持つと思いますよ。日本の政府の希望どおり。
惠谷 話を元に戻して、なぜ私がこの図を描いて説明しているのか、申しわけありませんが。もう一度・・・。
ミハイロフ この設計図はよく知っています、日本の学者も北朝鮮の学者も。私はコメントしません。この部分については全然コメントできません。







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