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■インタビューその2(2003年11月26日午前11時)
ロシア科学アカデミー極東研究所
ワディム・トカチェンコ朝鮮研究センター長
 
トカチェンコ研究センター長 北朝鮮の人は、自分で核兵器を持つ国になるかどうかということを、はっきり言いません。6者協議などでいろいろな話を聞くと、彼らは本当に今の状態がよく分かっていないと思います。もう一つ、彼らは国際会議では、損と得の関係でやっています。だから、損にならないかと心配しているんです。自分の核プログラムを高く売りたいという意味です。実際に、北朝鮮の核プログラムは、1994年にクリントン前大統領を挑発しました。しかし、ブッシュ大統領は、今、そのために一セントも使いたくないのです。今の6者協議を見ると、みんな北朝鮮の核開発プログラムを買いたくないという状態です。北朝鮮は、実際にこの核開発プログラムは、どのくらいの金になるかということを知っていると思います。
 今の危機を超えるためには、まず電気エネルギーの問題を解決しなければなりません。電気がないと、こういう危機は解決できません。北朝鮮を見ると、電気エネルギーをつくるためには、まず原子力発電所が必要です。つまり、電気がないから石炭を掘ることができないのです。だから何の出口も見えません。まず、電気のために原子力発電所が必要です。核エネルギーがなければ、石炭を掘るための電気もないということなのです。
 ですから、原子力発電所のかわりに、火力発電所をつくろうという話がありますが、これでは今の北朝鮮のエネルギー問題を、全然解決できません。また、パイプラインでシベリアから天然ガスを送るとなると、予算がないのでガスに払うお金もありません。それゆえ、今の取引の重要なポイントは、まず原子力発電所です。原子力発電所にどのくらいの金がかかるか分かりませんが。
 また、すべての経済の改善、食糧問題を解決するために、彼らの頭のなかには金額はいくらと思っているはずで、これは30億ドルから40億ドルぐらいだと思います。しかし、どの国が金を出すのか。ブッシュ氏はもちろん出しません。だから、韓国か日本です。中国も金を出したくないのです。「お金を出しても、これは無理です。何も効果がない」と中国人は言っています。また、中国人の考えでは、経済が改革されない場合、金では何もできない。だから、無駄に金を使うということになると、中国人は考えているのでしょう。
 ロシアにとって、北朝鮮問題を軍事的に解決することはよくないことです。極東では常にいろいろな紛争があります。ロシアは疲れています。幸運なことに、今回はグルジアでも平和的なクーデターを通じて問題を解決しました。しかし、北朝鮮の今の状態を見ると、戦争で終わる可能性が高いのではないでしょうか。ロシアにはよくないことです。中国にもよくない。だから、大きな戦争になるということを中国も心配しています。中国はまだこれから、もっと速いテンポで経済を発展させなければならないので、戦争は困るのです。北朝鮮の紛争は、中国の発展にすごくマイナスになります。日本もそう考えているんじゃないでしょうか。
 韓国の今の態度は興味深いと思います。韓国も、今私が申し上げたような理由を持っているのではないですか。韓国は、以前に世界の先進十か国のクラブに入ろうと思ったんですけれども、今の北朝鮮問題によって、この計画は実際に失敗すると思っています。
 こういう質問をしましょう。例えば、アメリカが北朝鮮の核開発基地に爆弾を落として、全部破壊することを決めると、そのとき韓国はどのように考えるかということです。実際に、韓国人の顔を見ると、みんな本当に不安で何と答えるかよく分からないでいるのです。実際には北朝鮮と戦争したくない。戦争になれば、韓国も非常に経済が遅れます。
 私が思うに、北朝鮮は考えるのが非常に遅い。すべての問題解決を一人に依存しているという北朝鮮は、ラジカルな一歩をとることはできません。北朝鮮のリーダーシップによって、紛争とか戦争になることはありません。実際に戦争はないのです。しかし、どうして金正日氏は早く決断することができないのでしょうか。実際には政権の安全性がないからです。彼が攻撃されたら、彼の安全を保障する国は一つもありません。中国の役割について言いますと、歴史的な関係だけです。実際に中国は戦争になっても、戦争に参加したくないはずです。参加しないと思います。
 ロシアの役割を見ると、北朝鮮とロシアとの関係はコンサルトだけです。戦争になれば、ロシアと相談するでしょう。それだけです。特にユーゴスラビア紛争とか、コソボ事件、また今のイラクやアフガニスタンなどの戦争を見ていると、ロシアは何もできません。
 ですから、核兵器についていうと、原爆を本当につくったかどうか。多分つくったと思いますけれども、今の政権の唯一の保証です。実際に、北朝鮮は外国人に核兵器を持っていると言っています。
 私は北朝鮮人に、「あなたが今どんなことを言っても、あなたの国は10年前に核兵器をつくったという事実を知っています。10年前にあなた方はシュワルナゼ、そのときのロシアの外相に、その事実をはっきり言いました。だから10年前に核爆弾はもうつくられたということは事実だと思います」と、はっきり言いました。そのとき、彼らは全然コメントしないのです。そのような状態です。
 今、アメリカが言っているように「悪の枢軸」、あるいは北朝鮮を世界の国々から除こうという政策、これも正しくないと思います。忍耐を持って、時間はかかりますけれども、今と同じように、6者協議とか何かの会議を通じて、北朝鮮を納得させなければならないのではないでしょうか。私の意見では、時間を長くかけるほうがいいと思います。金正日とよく話し、長く話し合ってもいいと思います。話し合いを通じて、今の6者の態度も分かってくると思います。
 アメリカの政策も必ず変わります。来年はご存じのように大統領選挙ですから、新しい大統領になると、また政策も変わるかもしれません。最近のことをよく思い出してください。クリントン前大統領は、平壌に行くつもりでした。北朝鮮の人民軍総政治局長がアメリカを訪問したときに、オルブライト米国務長官に金正日は、「外相が好きだ」ということを言いました。あのとき、そんなにすぐにアメリカと接近できるということが分かりました。アメリカも新しい大統領になると、また友好的になる可能性もあります。
 中国もこういうことを分かっています。だから6者協議において、常任組織をつくろうとしているんです。例えば執行委員会とかをつくって、長く話し合いができる場をつくりたいと思っているのです。私たちの考えでは、6者の首脳会議は核開発の問題だけでなく、アジアの諸問題を解決する組織になるほうがいいと考えています。ヨーロッパにはEUとか、統一ヨーロッパとか、統一通貨とか、いろいろな組織、共通項がありますけれども、極東にはありません。6者協議は、太平洋と極東諸国を一つにする国際会議、国際組織になるほうがいいのではないでしょうか。6者協議には、一番重要な国々が入っていますので、とてもいいと思います。
 私たちはこういうことを常に考えています。しかし、不安定な状態です。私たちはどんなに予測しても、次の日にもうこの予測はゼロになるんです。こうした状態では、何もできません。
 平壌とワシントンで、2か国間の話し合いのパイプ、チャンネルがあります。だから、6者協議が知らないうちに、2か国のチャンネルで、いろいろなことを決めることができるのではないでしょうか。だから、日本にとってもロシアにとって、北朝鮮とアメリカの直接取引は、今考えられないような事態になる可能性もあります。日本もロシアも予測できない直接チャンネルがあるのです。だから、この2か国が何を決めるか、私たちは知らないのです。
 モスクワと平壌との関係は今非常にいいのですが、平壌はこれから何をするか情報は全然ありません。また、何を持っているか、何があるか、これもはっきり分かりません。だから最初の6者協議のとき、会議を始める前に、まず、北朝鮮には本当に核兵器があるかどうか、核兵器をつくるプランがありますかということを質問しました。しかし、みんな知らないので、何やら神話か伝説について話し合っているようでした。
 ソ連邦の外務省は、6者協議に招待されて非常にうれしかったのです。外務次官と話しましたが、ロシアにとって一番重要なことは対話を始めることです、6者の間で。それはロシアにとってもとてもいいことです。
惠谷 分かりました。北朝鮮が核を持っているというのは、神話、伝説のような状況であることは事実なんですが、先ほども言われたように、トカチェンコさんは核武装していると思うのですね。
トカチェンコ そうです。私たちはもう10年前から知っています。核兵器を持っています。持って、今武装しているんですけれども、北朝鮮は核爆弾で何をするか自分でもよく分からないと思いますよ。利用できないのですから。
惠谷 10年前から知っているという根拠は、北朝鮮がシュワルナゼ外相に、核開発を考えるということを言った根拠以外に、何か根拠がありますか。
トカチェンコ 1989年に、シュワルナゼ外相は何のために北朝鮮に行ったのか。理由は、これからソ連邦は韓国と外交関係を設立するということを、北朝鮮に通告するためでした。北朝鮮の指導者たちは非常にショックでした。そのときに、韓国とソ連邦の関係が樹立されれば、北朝鮮はソ連邦との条約を破棄すると言いました。だからそういう状態になれば、北朝鮮は必ず自分の核兵器をつくると言ったのです。
 私が2000年に発表した本のなかで、この事実を具体的に詳しく書いてあります。同じ時期にモスクワで発表された北朝鮮についての情報は、北朝鮮が核兵器を開発するようになってきたということでした。ロシアの新聞『論拠と事実』にも発表されました。
 また、もう一つの根拠は、北朝鮮は高エネルギー、超高温で利用されるという機械や設備を買おうとしたことです。
惠谷 どこからですか。ロシアからですか。
トカチェンコ ほかの国は知らないけれども、ロシアのことです。彼らはいつもこういう設備とか機械を買おうとしていました。軍事と関係ない設備で禁止されていないため、北朝鮮の人は新しく設立した大学の実験室のために使うと言って、買いました。北朝鮮で働いていたロシア人専門家によると、北朝鮮はウラン鉱石を積極的に開発しており、あり得るということでした。
 しかし、残念なことに、ロシアの専門家は寧辺という核開発センターに一度も入ったことがありません。私が驚いたのは、国際原子力委員会、ウィーンの委員会が初めて北朝鮮を訪問し、設備を調査して写真をたくさん撮ったとき、そういう設備があることを知らなかったので、写真を見てびっくりしました。最初にこの設備を見たのは、アメリカ人だったんです。
 旧ソ連邦は1858年に北朝鮮のために実験炉をつくり、具体的な支援を続けていましたが、その後北朝鮮は自分たちでつくりました。そのときの私たちの考えでは、中国が支援していたのではないかと思っています。そのときにソ連邦と中国の関係は非常に悪かったからです。
惠谷 先ほどのロシア人技術者というのは、いつごろ北朝鮮で働いていたんですか。
トカチェンコ 1957年と58年。その後は何も建てなかったです。もちろん、ご存じのように、北朝鮮の学者はロシアで勉強していたんです。モスクワ大学の物理学部とか、またバウマン名称工業大学。最近も北朝鮮から学生が来たと思いますけれども、どの大学で勉強しているかは知りません。モスクワには少なく、シベリアのクラスノヤルクスとか、ノヴォシビルスクの大学で勉強しているのではないかと思います。







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