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第2段階:状態悪化、危篤
■生命維持が期待できないと判断された時期で、死が間近に迫り死の直前の数日間
・療養者の意識レベルが低下し、死が切迫した状態
・予測される変化や状況について家族に伝える
・夜間の連絡方法を伝える(遠慮しない様に)
■看護ケア
1. 環境づくり:本人をひとりにしない。聴覚は最後まであることを家族に言葉かけをし、安心感を伝える。
2. 安楽を提供:安楽なポジションとマウスケア。家族によるタッチングやマッサージなど
3. 家族に囲まれた中での看取りをできるように配慮する。
■死亡直前:全身の機能低下に伴い、様々な症状が出現する。
1. 死前兆候:・身体的症状:食事摂取機能の低下、尿量減少、失禁、呼吸リズムの変化、死前喘鳴、四肢冷感、チアノーゼ
・意識レベルの変化:不穏、感覚の低下
■医療者の態度
1. 家族に対して:様々な状態の変化に動揺し、どうしたらよいか分らず、不安を抱くことになるため、その症状に対応しながら家族の不安な気持ちをサポートする。
・死が近くなったと判断したら、予測されることについて伝える。状況に合わせた頻回の訪問とサポートの後、看取りが近づいてきたとの連絡を受けた時には速やかに訪問する。
・臨終間近の変化と急変の可能性について前もって伝えておく。いよいよの時、呼吸の変化(チェーンストークス呼吸)など
・ケアへの参画について、死への具休的な準備など
 
第3段階:臨終の時
■死の直前から死の瞬間までの間で、一人の人の人生の幕が下ろされる厳粛な時
・心拍数の低下や呼吸の変化により明らかに数分後に看取りが予測される時期
 
・ひとことひと言の中に愛と悲しみがあり、祈りがある・・・
 そして精一杯の心の叫びがある・・・そのときがやってきた・・・
 その時が・・・ひとり一人が感謝を告げ・・・癒し・・・祈りへ・・・
・本人と家族の信仰上の儀式などの尊重
■看護ケア:
・家族が最愛の人と十分な別れができる様に配慮する
・医療スタッフはその場を占領しないよう配慮する。
・最愛の人の手を握り、体に触れ、伝えたい言葉が伝えられる様伝える。
 
第4段階:永眠(死そのものの訪れ)
■死の判定(通常死の瞬間に医師が立ち会うが、間に合わない、あるいは予測された死について家族に話してある場合は看護師と共に死を確定し医師に報告する)
・本人に対する尊厳を示す。
・装着していたチューブ類や点滴などを外し、外観を整える。
・家族や親戚、親しい人とのお別れを十分にする機会を提供する(対面する、死に水をとる、体に触れる、話しかける)
・感情の表出を促す:家族への心からの労いの言葉がけをする。家族により怒りや敵対心などを表出する場面があってもすぐに反応しようとしない。
・本人と家族の信仰上の儀式などを尊重する。
 
第5段階:死後のケア(エンゼルケア)
■死亡確認後、死後硬直がくる前に行う処置
・本人の生前の希望の尊重
・故人に対する尊厳を示す
・生前のケアの続きとして心をこめて家族とともに体を清める
・希望により‘湯かん’などへの対応
・愛用していた服や化粧などで整える
・生前と同様に丁寧な遺体への対応
・生前と同様に家族への配慮
 
第6段階:家族ケア:遺族ケア
■療養者の死後、残された家族へのケアを必要とする時期
・死別期のケアは療養者の死を持って終わらない。
・遺体の見送りに始まり、その後のケアの段階
・家族が愛する人を失った悲しみからの立ち直ることを助けるグリーフケアが重要となる。
・家族の悲嘆へのケア:家族内のサポート態勢の確認と意識づけ
・遺族会:最愛の人を亡くした人達が互いの体験を話し合い支え合う場。
 
看取りに臨む前に・・・
■看護者である前にひとりの人間として:
1. 死をタブー視しない:生死は他者の死ではなく、自分自信にとっても課題であることを自覚する。
2. 他者の死に向き合うことは、自分自信の死に向き合うことになる。
3. 生死に向き合うことは真実に向き合うことになる。
 
 ・・・例えば、友人の死や身内の死に遭遇したときの自分はどうであったか。
 ・・・もし、自分が予測もしない状況の中で、がんと告げられ余命半年と伝えられたとき、残りの時間を意識し、残された時間をどう過したいか。残された‘いのち’をどう生ききるかを考える。
 
看取りの基本姿勢
■看取りとは、限りなき他者への関心であり、傍らに居て耳を傾け、語り合う
■その人の価値観や信念、生き方を尊重した心で看る
■死を学び、死に学ぶ:その人の生き様が死に様である
■看護師の死に対する姿勢がケアに反映することを認識する
・死を忌み嫌うのではなく、怖がる自分の感情に気づく
・自分自身に湧きあがる感情を無視しない
・自分自身の思いを素直に表現する
■看護師自身の人生観、死生観、看護観を深めていく
■在宅ホスピスケアのコア(核)メンバーとして看護職が存在していることを再認識する。
 
より良い死とは
■看取る側と看取られる側をイメージする
・あなたが考える理想の看取りを実現するには?
・あたなにとってより良い死とは?
・あなたの最愛の人のより良い死とは?
 
在宅ホスピスケアの担い手
〜看護師に求められる能力〜
 
1. 苦痛を緩和するための適切な看護処置ができる
2. 療養者と家族への信頼と安心感を提供できる
3. 療養者と家族の思いを汲み取り、率直に話し合いができる
4. 家族メンバーの思いを調整できる
5. 療養者が望んだ時、死へのプロセスを受け入れられる様「死」の話ができる
6. 病状の変化に伴う観察と看護判断ができる
7. 死の予測も含め、家族の状況に合わせて伝えることができる
8. 在宅ホスピスケアができる死生観を持つ
 
在宅ホスピスケアの要件
 
1. ホスピスケアとしての要件:(1)24時間ケア(2)症状緩和(3)療養者と家族を対象としたケア(4)学際的なチームケア
2. 在宅ケアとしての要件:(1)医師による往診(2)看護師による訪問(3)緊急時の入院態勢
3. 在宅ホスピスケアの構成条件:
 (1)構成メンバー間のケアに対する共通認識(ケア開始時のミーティング開催、問題発生時のケア会議開催、死亡後の症例検討開催etc)(2)速やかでオープンなコミュニケーションを取れる態勢(3)責任の所在を明確にしておく:
4. 在宅ホスピスケアの条件:
 (1)絶対条件:療養者と家族が在宅ケアを切望すること。看取る家族がいること。(2)望ましい条件:病院の主治医が在宅ホスピスケアに理解していること。延命医療を希望しないこと。緊急時の後方ベットの保証etc
 
かけ橋としてのホスピス
 
 〜ホスピスとは、治療が困難な進行性の疾患に対して苦痛を緩和し、最後の瞬間まで生きることを支え、療養者と家族のQOLの向上を最大限に追及するチームあるいはコミュニティ全体で行うケアの概念である〜
 
1. 聴くと言う橋を架ける
2. 痛みの基礎研究に橋を架ける
3. 地域に橋を架ける
4. 家族に橋を架ける
5. 急性期医療に橋を架ける
6. スピリチュアル的側面に橋を架ける
7. 喪失を乗り越えて成長するための橋を架ける
 
You matter because you are you
 
 あなたはあなたのままで大切なのです。
 あなたは人生最後の瞬間まで大切な人です。
 ですから、私たちはあなたが心から安らかに死を迎えられるだけではなく、最後まで精いっぱい生きられるように最善を尽くします。
 
Dame Cicely Saunders







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