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2、病院から終末期になって退院をする場合
(1)準備期(訪問看護を依頼されてから訪問開始まで)
 この時期に、入院している病院との引継ぎと、在宅療養の為の環境整備をする。
☆めざすこと
 本人、家族が在宅生活をスムーズに受け止められるように、また、安心して自宅に戻れるように精神面、環境面の整備を行う。
☆訪問看護のポイント
(1)できる限り退院前訪問をし、本人、家族へ主治医から説明された内容をどう両者が受け止めているか確認をする。
(2)本人、家族の不安(病状について、緊急時の対応、往診医導入、再入院ができるか、医療機器管理や使用方法、介護への不安等)を聴く。
(3)主治医の変更の有無(往診医導入か否か。主治医の空白を作らない)継続医療処置等と使用物品の確認と処理方法についても確認する。
(4)病棟看護師から看護サマリー等で継続看護内容を確認する。
(5)在宅ケアの為の環境整備やケア計画を立てる。
 
(2)訪問開始期(退院から1週間)
☆めざすこと
 本人、介護者、他の家族がそれぞれの不安を表出できると同時に、自宅に戻った喜びを感じ安心できる在宅生活となるよう支援する。
☆訪問看護のポイント
(2)病院から継続する医療処置、医療機器等の指導、管理をする。
(3)本人、介護者、主介護者以外の家族の意思を確認、調整をする。
(4)主治医(往診医)との連携を密にする。
(5)本人、介護者の不安(夜間等の緊急時の対応、今後の症状の変化、連絡体制、病院への再入院のできる可能性など)の解消に努める。
(6)本人が安楽に感じるように支援をする。
(7)介護負担の軽減をはかる。
 
(3)臨死期まで
☆めざすこと
 死期の予測を行い、死が迫った症状を介護者、他の家族が理解し、受け止め、本人、家族が心残りのない最後が迎えられるよう支援する。
☆訪問看護のポイント
(1)死期の予測をする(臨終の時を家族に知らせ、縁者や友人などに連絡できるようにする)。
 訪問看護師の定期的な訪問により観察した結果から臨死期の予測を行う。
(2)死に逝く症状を介護者に判りやすく説明する。
(3)連絡方法を家族に判りやすく伝える。
 連絡先の再確認をする。
(4)本人、家族が死に向かっている状況を受け止められるよう支援する。
 いつ死が訪れてもおかしくない事を家族に伝え、急変しても誰の責任ではない事を説明し他の家族と心の調整を図れるように心がける。家族の予期悲嘆に寄り添う。
(5)主治医との連絡を密にする。
・こまめに連絡し、臨終が迫っている事等、症状や状況を伝える。
・家族の意向を主治医に伝え、看取りの方向を確認しながら支援する。
・死亡確認の連絡先、死亡診断書の記入についても再確認する。(時間内、時間外や死後のケアについて含む)
(6)臨死期の医療的介入や看取りの場所について家族が選択できるよう支援する。
 
3、すでに在宅生活をしている高齢者が終末期になってから訪問看護を依頼してきた場合
(1)訪問看護を依頼されてから訪問開始まで
☆めざすこと
 本人、家族、関係者が現状をどう理解しているかを知り、信頼関係をなるべく早く作りケアの方針を決める。 
☆訪問看護のポイント
(1)本人、介護者、家族、ケアマネジャー等の関係者は、主治医からどのように説明されているか確認する。
(2)短期間に信頼関係を築く。
(3)本人、家族の不安を理解する。
(4)訪問看護のサービス内容を説明する。
(5)在宅で看取りが可能な条件か判断しケアの方向を決める。
(2)訪問開始から1週間
☆めざすこと
 終末期である事を本人、介護者、他の家族が受け止め、臨終の準備が出来るよう支援する。
☆訪問看護のポイント
(1)主治医、他の関係者との連携を密にとる。
(2)死の予測をする。
(3)現在の状況(臨終期がかなり近い事、自宅で死を迎えるという事など)を本人、家族に理解してもらう。
(4)医療機器の管理をする。
(5)介護者の負担(精神面、身体面、経済面など)の軽減をはかる。
(6)看取りの場所や医療的介入について家族が選択できるように支援する。
(7)連絡方法を家族に知らせ、実際に連絡ができるようにする。
(3)臨死期まで
☆めざすこと
 死期の予測をし、本人、介護者、他の家族が死を受容し、静かに臨終時の準備が出来るよう支援する。たとえ受容できたとはいえない状況と感じられても本人と家族が語り合えたことに重要な意味があることを訪問看護師は理解する。
☆訪問看護のポイント
(1)死に逝く症状について介護者に理解しやすく説明する。
(2)本人、家族が死のプロセスについて理解ができているか確認する。
(3)介護者の不安を理解する。
(4)主治医との連絡を密にする。
・こまめに連絡し、臨終が迫っている事等、症状や状況を伝える。
・家族の意向を主治医に伝え、看取りの方向を確認しながら支援する。
・死亡確認の連絡先、死亡診断書の記入についても再確認する。(時間内、時間外や死後のケアについて含む)
(5)看取りの場所を家族が選択できるように支援する。
 
4、臨死期、臨終時、死後
(以下は、訪問看護の対象になったプロセスの違いを問わない)
(1)臨死期
☆めざすこと
 できるだけ本人が安楽で穏やかな状態でいられ、家族が悔いなく看取る事ができるよう支援する。
☆訪問看護のポイント
(1)家族に呼吸停止に至るまでのプロセス、死亡確認の仕方を説明する。
(2)主治医に連絡し、医師による死亡確認の依頼、連絡をする。
(3)家族の状況により必要があれば、訪問看護師は臨終に立ち会う事も考慮する。(死の教育をしても看取る事の困難な時もある。・・家族を孤独にしない。)
(5)死後のケアの方法等を説明、指導、実施する。(写真、着物の準備含む)
 
(2)臨終時
☆めざすこと
 臨終を迎えた人を敬い身の回りを整える。介護者、家族にこれまでの看取りの苦労を称える。
☆訪問看護のポイント
(1)主治医に死亡確認をおこなってもらう。
(2)家族と共に、死後のケア、更衣、死化粧を行う。
(3)医療機器の回収、整理をする。
(4)葬儀社、役所等の連絡方法や死亡診断書の説明をする。
(5)葬儀などの細かい段取りや相談は家族や地域の世話役に任せ、立ち入らない。
(3)死後(グリーフケア)
☆めざすこと
 遺族の悲嘆に耳を傾け理解を示し、生活の再構築ができるよう支援する。
☆訪問看護のポイント
(1)家族の話を傾聴する。
(2)看取りまでの経過と決断を支持し、亡くなった家族を偲び、介護者や家族を心から敬う。
(3)遺族の悲嘆の深さを共感する。また、病的悲嘆の状態であれば、専門医等の必要性を知らせる。
 
*問題が浮上しやすい状況における訪問看護師の対応
1、主治医との連携が困難な場合
☆めざすこと
 利用者、介護者、親族と主治医の関係を尊重しながら最期の場面を考慮して連携を図る。
☆訪問看護のポイント
(1)利用者と介護者の意思に添う。
(2)介護者や家族から主治医に直接、自分の意思を伝えられるよう支援する。
(3)主治医の治療方針が理解できない場合でも、その場で否定をしない。
(4)頻回に主治医と面談を行い、ケアの方針や利用者や家族間の病状に対する理解の程度を伝え、主治医との意見の調整をおこなう。
(5)担当者だけで調整が困難な場合は、担当者だけで調整をしない。管理者や他の医師等に相談することも考える。
(6)利用者の意思と主治医の意向があまりにも合わない場合は、利用者と家族に主治医の変更も可能であることを伝え、利用者に選択を促す。
 
2、家族間の意見の調整が困難な場合
☆めざすこと
 残された家族が後悔しないためにも、利用者本人の意思が伝わるように支援する。
☆訪問看護のポイント
(1)自宅での看取りだけでなく、病院への入院という方法もあることを親族に伝えつつ、本人の意思を言葉が、親族全員に伝えられるよう調整する。
(2)家族間の争いにならないように、発言に注意する。
(3)キーパーソンを中心に家族の意見や方針を決定していくため、だれがキーパーソンになるのか確認する。
(4)主治医に相談し、必要であれば同居家族以外の親族にも、治療方針や現在の状況、今後の予測など、説明してもらう。説明に対しての理解状況によっては補足する。
(5)最後まで調整困難な場合もあるが、調整できなかったからと言ってと担当者自身が自分を非難しない。長い家庭内の歴史があり、調整不可能な場合もあることを認識。
 
3、利用者や家族が死を受け止められない場合
☆めざすこと
 死を受け止めきれない思いを傾聴する。家族には今おきている症状と予測される事を伝える。
☆訪問看護のポイント
(1)本人が生きてきた歴史を語れるよう傾聴する。
(2)本人の家族への思いが表現できるようにする。
(3)最期の瞬間が間近な状況であることを、主治医から家族に話してもらう。
(4)家族が思いを表出できる場面をつくる。
(5)今出来ることを家族が心をこめて行うことが大切であることを家族に伝える。
 
4、単身生活者や介護者が全くないが在宅死を希望する場合
☆めざすこと
 利用者本人の気持ちに添い、できるだけ希望する看取りの体制をつくる。
☆訪問看護のポイント
(1)利用者の希望を十分に傾聴する。
(2)身寄りが全くないか、別居親族がいるか確認する。(身寄りが居ない場合は、ケアマネジャー、市町村や区役所の担当ケースワーカー、または保健師等と連携し、公的な制度の利用やサービスの調整を行う。別居親族が居る場合は本人の希望を伝えながら、親族の方の連絡先、連絡方法、希望等について確認し、サービス調整を行う。)
(3)緊急時の対応や、夜間、休日の対応を担当事業者間で一致させる。
(4)在宅での看取りの場面をかかわりの当初から念頭に置き連絡体制を整える。
 
5、利用者が急な死(予測しきれない死)を迎えた場合
☆めざすこと
 予測しきれない死が有り得ることを念頭に置く必要がある。このような場合、動揺せず死を謙虚に受け止め、残された家族に敬意を表し心残りをできるだけ少なくするよう支援する。
☆訪問看護のポイント
(1)訪問看護師はあわてず冷静に対応する。
(2)できるだけ早急に訪問し、家族をいたわる。
(3)死体検案について配慮する。病院の医師やかかりつけ医に早急に連絡し対応を確認する。主治医が病院の医師である時は連絡が取りにくい場合がある。救急の窓口や在宅移行時の担当者(MSW、相談室等)に連絡し、主治医等の指示に従う。急な死を迎えた場合、死体検案の必要性について理解し、説明する。







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