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平成16年度 日本財団助成事業
平成16年度 在宅終末期看護セミナー 後期
日時:平成17年1月20日(木)〜22日(土)
会場:日本教育会館 7階中会議室
<研修の目的>
(1)終末期にある在宅療養者及び家族介護者への援助技術を理解し、実践できる。
(2)終末期における在宅生活を援助するために多職種との協働体制などの条件整備ができる。
(3)終末期看護を行う看護師として自己認識を深め、セルフコントロールができる。
 
日程 研修内容 担当
1月20日・木 9:00〜9:30 受付
●研修オリエンテーション
●日本訪問看護振興財団 挨拶
財団法人 日本訪問看護振興財団
事務局
9:30〜12:30 ●在宅終末期ケア(緩和ケア)を実践するための条件整備について
・訪問看護ステーションにおける24時間体制
・プロトコールに基づいた個々の緩和ケアの進め方
・医師、訪問看護師、療養者、家族、福祉職等の協働体制
・緊急時等における医療提供体制
・緩和ケアチームの体制
社会福祉法人日本医療伝道会総合病院
衣笠病院ケアセンター
所長 佐野かず江
12:30〜13:30 昼休み
13:30〜16:30 ●チームケアとしての終末期(緩和ケア)看護について
・効果的な協働のあり方と継続看護
・スペシャリストの活用
・インフォーマルサポートの活用
・コーディネーターとしての役割
・効果的なチーム運営
在宅看護研究センター
代表 村松静子
がん専門看護師
中西真理
16:30〜17:00 ●演習・自己学習
1月21日・金 9:00〜9:30 受付 財団法人 日本訪問看護振興財団
事務局
9:30〜12:30 ●家族への支援
・家族の心理プロセス
・予期的悲嘆
・家族参加を促すケア
在宅緩和ケア支援センター「虹」
代表 中山康子
12:30〜13:30 昼休み
13:30〜16:30 ●臨死期のケアと看取り
・療養者・家族へのケア
・死後のケア
●グリーフケア
・グリーフケアの実際
県立広島病院
緩和ケア支援センター緩和ケア支援室
室長 阿部まゆみ
16:30〜17:00 ●演習・自己学習
1月22日・土 9:00〜9:30 受付 財団法人 日本訪問看護振興財団
事務局
9:30〜12:30 ●終未期(緩和ケア)看護の実際
・課題レポートによる事例展開
県立広島病院
緩和ケア支援センター緩和ケア支援室
室長 阿部まゆみ
12:30〜13:30 昼休み
13:30〜16:30 ●ストレスマネジメント 県立広島病院
緩和ケア支援センター緩和ケア支援室
室長 阿部まゆみ
16:30〜17:00 ●まとめ(自己学習)
注)プログラムは変更になる場合もございますので、予めご了承ください。
 
H16年度 在宅終末期看護セミナー・後期
 
講師名簿
氏名 所属・役職 〒・住所 電話・FAX番号
阿部まゆみ 県立広島病院緩和ケア支援センター緩和ケア支援室
室長
734-8530
広島県広島市南区宇品神田1-5-54
082-252-6262
082-252-6261
佐野かず江 社会福祉法人日本医療伝道会総合病院衣笠病院ケアセンター
所長
238-8588
神奈川県横須賀市小矢部2-23-1
046-852-1282
046-852-1348
中西真理 在宅看護研究センター
がん専門看護師
169-0073
東京都新宿区百人町1-17-10STビル2F
03-5386-6058
03-3310-7899
中山康子 在宅緩和ケア支援センター「虹」
代表
982-0813
宮城県仙台市太白区山田北前町49-20
022-244-7003
022-244-7003
村松静子 在宅看護研究センター
(日本在宅看護システム株式会社)
代表
169-0073
東京都新宿区百人町1-17-10STビル2F
03-5386-6058
03-3310-7899
<50音順>
 
 
 
 
在宅終末期ケア(緩和ケア)を実践するための条件整備について
2005年1月20日(木)
社会福祉法人日本医療伝道会総合病院
衣笠病院ケアセンター
所長 佐野かず江
 
H17年1月20日(木)
日本教育会館 7階中会議室
H16年度 在宅終末期看護セミナー(後期)
「在宅終末期(緩和ケア)を実践するための条件整備について」
I 訪問看護ステーションを取り巻く現状
1 訪問看護ステーションの現状
・約5500箇所の事業所指定
・平均利用者数:52人 月平均訪問件数:285回 訪問看護師数:4、8人(一人当たり平均訪問件数67回)
・24時間連絡体制加算・緊急時訪問看護加算届け出は約7割
(厚生労働省15年度事業所調査・財団看護調査)
・一般的に訪問看護ステーションの利用者の多くは高齢者である。
・終末期ケアに積極的に対応していると回答した訪問看護ステーションは全回答の6割であったが、H13年1月から11月までに在宅で死亡した対象者がいた訪問看護ステーションは3割以下。終末期ケアを積極的に行う意思があっても実施していない訪問看護ステーションが少なくない。
(H13年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金事業
「終末期ケア体制のあり方に関する研究」調査)
・慢性的訪問看護師不足
・入院日数の短縮化等政策的意図でますますの退院促進傾向(医療依存度の高い方、ガン末期患者、小児、精神疾患を持つ患者等)と後方支援体制への課題
・介護保険制度の改定
・介護保険制度開始により看護職以外が、病状判断を含めて看護の必要性等医療介入の判断をすることが多くなった。病院退院時等介護支援専門員が主たる退院時調整を担うようになった。
・訪問看護ステーションの病院看護師等への連携不足 啓蒙活動不足
2 高齢者終末期ケアの現状
(1)高齢者は必ずしも悪性疾患で終末期を迎えるわけではなく、自然に生命の最後を迎える場合もある。しかし多くの高齢者が複合疾患を持っているために、長い療養を経て、機能の低下からくる呼吸不全や代謝不全の結果、死を迎えるという経過をたどることもある。
(2)高齢者の終末期ケアにおいて、医療を提供する側には、肺炎、心不全等は今日ほぼ治療可能な疾患であり、良性疾患ということで最後まで出来るだけ治療を続けるべきだという考えが浸透している。一方、医療を受ける側には、「医者にお任せする」という風潮がまだ強く、死を自分の問題として考えたり、死を話題に出すことを避ける傾向にある。したがって、医療を提供する側も受ける側も共に、高齢者であっても悪性疾患ではない場合、出来る限り治療をし、延命を図ることが大事であるという考え方をする傾向が強い。
(3)死の話題がタブー視されている現状から、高齢者本人による治療の選択について話し合われていないことが多く、話し合いが必要になったときには寝たきりになっていたりすることがある。または認知症による障害が起きたりする。そのような場合は自己決定・自己選択、あるいは家族と語り合うことさえすでに困難であることも多い。悪性腫瘍の場合であっても、高齢者は告知されていないことが多い。
(4)老々介護、遠距離介護など、介護の形態が多様化し、介護期間も長い場合が多い。高齢者の終末期ケアは、がんターミナルケアにおける一般的な経過と一致しないパターンが見られることも多い。また、介護者は、高度化した医療機器を取り扱わなければならない状況におかれたり、診療報酬の影響から早期退院をせまられ、介護状況が整わないまま在宅介護が開始されたりし、介護者の負担が増大する要因が増加している。
(H13年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金事業
「終末期ケア体制のあり方に関する研究」調査一部抜粋)
 
II ホスピスケア・緩和ケア・ターミナルケアの言葉の持つ意味
 ホスピスケア:
 主としてがん末期患者を各人の個性と家族のつながりを尊重した全人的アプローチによって、入院体制あるいは在宅の中で最期まで支援すること。全人的アプローチとは、患者に終末への過程で生ずる身体的・精神的・社会的・霊的(宗教的)ニーズに対しての各面からのアプローチであり、さまざまな職種の専門家で組まれるチームケアが期待される。ホスピスはたんに末期のがん患者のための施設ではなく、ケアの理念
 緩和ケア:
 病気の治癒を目指した治療がもはや有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケア(total care)である。痛みやその他の症状のコントロール、精神的、社会的、そして霊的問題への援助が緩和ケアの主要な課題である。緩和ケアの目標は、患者とその家族のためにできる限り可能な最高の生命の質(quality of life)を達成することにある。
 ターミナルケア:
 すべての疾患や老衰においても通用する呼称。
岡安大仁,ホスピスケア・緩和ケア・ターミナルケアとは.
臨床看護,21(1):33-36, 1995
*ケアの提供者が一般的な概念を理解しつつ、自分なりに定義化するプロセスが重要
 
III 訪問看護ステーションにおける24時間体制
 終末期ケアに取り組むステーションの体制として
 それぞれのステーション規模や職員体制により体制について違いがある。
☆めざすこと
 地域に住み、家庭内で終末期を迎える療養者を家庭内で介護するということは、利用者、家族にとって不安が伴う毎日である。その、不安を少しでも軽減することをめざす。
☆体制作り
(1)終末期ケアのめざす方向性をスタッフと共有する
(2)地域における訪問看護ステーションの機能を明確にする
 地域で何を期待され、何を求められているかを知る。
(3)地域で終末期を迎えた利用者や家族が安心して過ごすための対応ができるような、体制を作る
(4)個々の訪問看護師の雇用条件を考慮した役割分担をする
 訪問看護師の雇用条件はさまざまである。できるだけ、話し合いを持ち、納得した体制作りをする。
(5)地域のステーションとの連携を築く
 情報交換や話し合いができるような信頼関係を築く。
(6)体制作りは、設置母体と十分に話し合いを持ちながらすすめる
 組織の中で何を期待されているかを知り、どのような体制が取れるか話し合う。
 
*看護師にも個人としての生活がある。看護師自身の自己管理が出来ない状態では人に真摯に向き合うことの困難さ、個人の限界を共通理解する。
 
利用者に対して24時間体制の提示
 24時間連絡先の明確化:訪問看護利用者に対して連絡先を明確にする。
 24時間連絡体制の具体的利用方法の説明。(紙はなくなるもの。渡しただけではいざというとき利用者は使えない。) 資料1参照
 
IV プロトコールに基づいた個々の緩和ケアの進め方
 プロトコール:施設内基準・・医療処置管理ではないので施設により基準は変わってくると考えられる。
○療養者側の条件
 以下のいずれかの条件(あるいは複数)に該当すること
(1)慢性疾患を持ち、在宅介護を要する寝たきり及び寝たきりに準ずる状態にある後期高齢者(すべての積極的治療をしないと言うわけではない状態も含む)
(2)本人が在宅での緩和ケアを望んでいる。
(3)家族が在宅での緩和ケアを望んでいる。
(4)看取る家族が居る
(5)症状がコントロールされている。
(6)往診するかかりつけ医がいる。
(7)積極的な延命治療を希望していない。
(8)緊急時の入院先が確保されている。
 
○看護師の条件
1)看護経験
 (1)病棟、外来あるいは在宅での、終末期ケアが必要な患者の看護経験があり、以下の知識、技術を持っていること
(1)在宅終末期ケアの援助のあり方に関して理解していること。(あるがままの姿を受け止める、その人が望む生活という視点、基本的ニードを満たす)
(2)訪問看護ステーションでの教育プログラムを受け、少なくても2ヶ月以上(概ね100件以上)訪問看護実践していること。 資料2参照
(3)緩和ケアの原則について理解とケアの提供。(癌末期疼痛管理、コミュニケーション、家族のサポート)・・医療処置管理看護に関するプロトコールに準じてケアの提供をする。
 (2)上記(1)の経験がない場合は、(1)の該当者とともに訪問して、必要な知識、技術を習得した後に独立して行う。
 
○医師との連携条件
 訪問看護ステーションと医師との間で療養者ごとに予測されること緊急時体制を含めた指示書面に基づき行う。(協定書に関してはその必要性に関連して作成する。)
 
○在宅終末期ケアの支援目標
(1)本人が、その人らしく最後まで望んだ生き方ができるように援助し、最後まで生き切って逝けるよう支援する。
(2)家族にとって自分達で看取りをしてよかったと十分満足でき、残された家族が後悔を残さず、その後の人生を過ごせるよう支援する。
(3)本人と家族が限られた時間を共有し、過去の関係性を本人や家族が語りあえるよう支援する。
(4)言葉で語る事が困難な状況であっても、これまでの人生における関係性を修復し、新たな関係性を築いていくという事を本人と家族が認識できるように訪問看護師は意識的に関わっていく。
(5)看取りの場所や医療的介入について、本人、家族の自己決定を支え最期を迎えられるよう支援する。
 
 個々の緩和ケアの進め方(時期別に見る訪問看護のポイント)
1、長期にわたり訪問看護を実施していた高齢者が終末期を迎える場合
(1)終末が近いと判断されてから臨死期まで
☆めざすこと
 現在の状況を十分に家族、介護者が理解しやがて迎える最期の時を迎えられるように精神面および環境面を整備する。
☆訪問看護のポイント
(1)現在の本人の状況を介護者、家族に理解してもらう。
(2)身体的変化について説明をする。
(3)本人の思いを受け止め、人生の終焉を迎えるための支援をする。
(4)家族の思いを受け止め、寄り添う。
(5)家族が死を受容できるように支援をする。
(6)安楽の援助をする(疼痛コントロール、排便コントロール、安楽体位、水分補給など)。
(7)家族が不安を解消できるように、緊急時の連絡方法、今後の症状の変化、主治医との連絡方法、死の症状などを前もって説明しておく。
(8)介護負担が可能な限り軽減されるように、介護保険サービスや、その他のサービスの導入や利用方法を説明する。
(9)死の予測をする(近似値で予測し、別居家族や親族に連絡し、駆けつけられるように手配する)。







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