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オピオイドの効果が不十分な場合
■適切な量であるか検討する
・眠気がなければ、増量を検討する
・レスキュードーズを適切に(1日量の1/6を1回量)を使用し、効果をみる。レスキュードーズとは、痛みの増強に対して臨時に服用する追加薬をいう(速報剤の塩酸モルヒネを用いる。塩酸モルヒネ末/塩酸モルヒネ水(オプン)/塩酸モルヒネ錠)経口が無理な場合はアンペック坐剤
■痛みの種類を再度アセスメントする
・神経因性疼痛などオピオイドが効きにくい痛みであれば、鎮痛補助薬の併用
・骨転移痛、炎症があればNSAIDsを併用
■投与ルートが適切であるかアセスメントする
・経口の場合、小腸まで到達しているか
・坐剤の場合、下痢、下血などはないか
 
痛みの閾値に影響を及ぼす因子
低下させる因子(痛みを感じやすい) 上昇させる因子(痛みを感じにくい)
不快感
不安/不眠
疲労
孤独感
恐怖
怒り
悲しみ
うつ状態
倦怠感
内向的心理状態
社会的地位の喪失
唾眠
休息
周囲の人々の共感
理解してもらえること
人とのふれあい
気晴らしとなる行為
不安の減退
気分の高揚
緊張がないこと
鎮痛薬・抗不安薬
抗うつ薬
* 痛みの閾値各人各様であり、いろんなことで感じ方が変わる。
 
痛みが日常生活に及ぼす影響
身体的 Physical
・機能的能力の低下
・強さ、持久力の低下
・不十分なまたは中断する睡眠
・嘔気、食欲の低下
 
社会的 Social
・性機能、情動の減少
・社会的な関係性の低下
・外見の変化
 
心理的 Psychological
・レジャーや楽しみの低下
・不安や恐怖の増大
・身体への意識の集中
・コントロール感の喪失
・うつや苦悩
 
スピリチュアル Spiritual
・存在する意味の変化
・苦悩の増大
・神や信仰心の再評価
 
 
痛みの継続的アセスメント
・ポイント
1. 痛みの強さの経時的記録(ペインフローチャートを用いて薬物療法の効果を評価し客観性を高める)
2. 痛みの部位、質、出現パターンを把握する
3. 非言語的サイン
4. 薬剤に関する患者と家族の受けとめ方
5. 安楽な環境
6. 利用者の満足度
 
7. 精神的、社会的、スピリチュアルな側面
 
ペインフローチャートの活用I
・モルヒネ使用時に起こりえる原因の考え方
1. 痛みの強さに対して投与量が少ない
2. 胸水、腹水、イレウス等の急激な悪化
3. 消化器症状(嘔気/嘔吐、通過障害、下血、下痢)があり、経口的にモルヒネが充分に吸収されない
4. モルヒネが効きにくい痛み
・神経因性疼痛の場合:鎮痛補助薬の併用
・炎症による痛み:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の併用
 
ペインフローチャートの活用II
・決まった時間に痛みが強くなる場合:
1. ある特定の時間に強くなる
2. 体動により強くなる(体動前にレスキュードーズを使用)
3. 夜間に強くなる(寂しさ、不安、孤独感などから痛みを増強させている可能性がある)
 
・痛みの訴えと鎮痛薬の効果が一致しない場合:
1. トータルペインの観点から再アセスメント
2. 鎮痛薬のみでコントロールしようとせず、精神的ケアや向精神薬などの適応を考える
 
利用者と家族への情報提供
項目 内容
痛みの原因 どうして痛むのか/どのように治療するのか
治療の目標と意味 痛みの消失を維持できることが目標であること
望む生活を取り戻すための治療である
黙って痛みを我慢しても利点がないこと
治療の方針 痛みは徐々に軽減していくこと/効果が不十分でも治療法があること/薬剤を中止する方法
治療の内容 薬の名称、投与法、投与時刻について表などを用いる
臨時追加服用 レスキュードーズの服用法
副作用とその防止策 投与薬の副作用についてあらかじめ説明しておく
モルヒネの嘔気、便秘、眠気など
除痛程度 どれくらい除痛できたか正確に伝えることを促す
 
症状マネジメントの留意点
・利用者の体験している症状に着眼し、どのように表現しているかを把握する苦痛をもたらしている原因と成因を明確にする
・症状マネジメントする知識と技術をもつ(薬剤以外の...)
・疾患のみではなく病と共にある利用者に関心を持ち、生活者としての視点で捉える
・痛みや苦痛な症状の経験は人それぞれ異なる。利用者の言葉を信じ、一方的に決めつけることは禁句(痛みは外からは見えない・痛みの程度は本人が判断するもの)
・利用者の対処能力を高めるケア
・痛みの治療やケアに関する十分な情報の提供
・1つ1つの行為に関する利用者の意思の確認
 
看護に活かすコンプリメンタリーセラピー
・コンプレメンタリーセラピーとは:基礎となる考え方は、西洋学的な二原論ではなく、‘心と体は一体化している’という視点で、人間をホリスティックに捉え、理解するなかでより包括的にアプローチする方法を指している。このような点から看護ケアに取り入れる多くの利点を持っている。
・病を持つ人々を理解する‘癒し=ヒーリング’は、治療としての受身的なセラピーだけではなく、療養者自身が取り組むことにより免疫機能とQOLの向上に深く関与し、その人のなかで次第に調和がとれていくプロセスに関わっている。
・癒しは自らの人生をマネジメントしている実践的感覚をもつ事により心の充実感が得られることを目的としている。
 
療養生活で活かすコンプリメンタリーセラピー
・癒しを目的としたケアは生活を豊かにする。
・看護師は利用者が選択した場所で、その人が持てる力を生かし生き抜くサポーターとして存在する。
・日本では、支持療法(サポーティブケア)と呼ばれ、医学的代替療法(Altemative medicine)とは逸している。
・コンプレメンタリーセラピーの種類:呼吸法/リラクセーション/マッサージ/意図的タッチ/セラピューティックタッチ/ハーブ療法/イメージ療法/瞑想療法/アレキサンダーテクニックス/音楽療法/絵画療法など120種類が含まれる。
 
治療期の特徴と看護ケア
 病状の説明、治療方法の説明と本人の選択、治療が安全に行われるように保証する。
 
1. 本人および家族の病気の理解を助けること
2. 病いを受け止める時の本人と家族の心理を理解し支援する
3. 治療を選択する利用者と家族を支援する
4. 治療中の利用者の生活を支援する(副作用対策の方法を)一緒に考える、社会生活、経済的な問題などの相談)
5. 治療中の利用者を支える家族の支援







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