痛みの原因による分類
1. 侵害受容性疼痛
組織を実質的にあるいは潜在的に傷害する刺激
(侵害刺激)による痛み
2. 神経因性疼痛(neuropathic pain)
末梢神経あるいは中枢神経の損害や障害による痛み
3. 心因性疼痛
痛みの原因が身体的には存在しない
侵害受容性疼痛
■主な特徴
1. 内臓痛:内臓器の閉塞、浸潤、圧迫により生じる。
・臓器被膜の伸展、血管壁への浸潤、腫瘍による血管の圧迫、それに伴う欠陥の攣縮、血管の閉塞、炎症、壊死、虚血による発痛物質の産生
・鈍い痛み、締め付けられる痛み、深い痛み
・痛みの局在性が不明確なことが多い
・モルヒネなどのオピオイド(リン酸コデイン、レペタン、塩酸モルヒネ、アンペック、MSコンチン)が奏功
・関連痛が生じることがある(図参照)
侵害受容性疼痛
■体性痛:筋肉、骨、皮膚、粘膜に生じる。
・軟部組織の機械的圧迫、骨膜など皮膜の牽引、組織損傷による発痛物質の産生
・骨破壊によりプロスタフラジンが放出され侵害受容器を刺激することにより発生する
・痛みの局在性がはっきりしている
・局所の運動により増悪、叩打痛
・疼く痛み、刺し込む痛み
・NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬−アスピリン、インダシン、ナイキサン、ボルタレン、ロキソニン、ロピオン)が奏功
神経因性疼痛 I
(Neuropathic Pain)
・主な特徴
1. 末梢神経または中枢神経の分布領域における損傷あるいは機能障害より生じる。神経周囲の結合組織の圧迫や炎症による痛み(肺がんによる上腕神経叢や上部胸神経根の圧迫や浸潤)
2. 損傷された神経支配領域の特異的な痛みあるいは発作的な痛み
・痺れ感、締め付けられ感、つっぱり感、刺す様な痛み、電撃痛、激しい痛みの発作
3. 感覚の変化(感覚低下、反射の減少、感覚過敏、過敏痛)
神経因性疼痛II
(Neuropathic Pain)
・がん患者における痛み
1. がんの増大における神経浸や圧迫
2. 骨転移に伴う神経損傷、圧迫
3. 放射線照射(放射線照射後の神経組織の損傷)
4. 化学療法(シスプラチン、タキソール、ビンクリスチンなどにより痺れ感、感覚低下など末梢神経障害などが生じる)
5. 術後神経叢障害
6. 帯状疱疹後神経痛
鎮痛薬(オピオイド)
■最もすぐれた鎮痛薬である
・モルヒネに対する誤解(モルヒネを投与すると死期を早める、モルヒネによる中毒症状など)
■モルヒネの理解を助ける
・モルヒネは病期(末期)で薬剤ではなく病状で始めるもの
・痛みを持った人がルールに従って内服すれば、耐性や依存症は発生しない。
・モルヒネは症状が緩和することにより快適に日常生活を送れるように援助する薬である。
■モルヒネの実像
・激痛に悩むがん患者に対し、数ヶ月間、あるいは数年間モルヒネの標準量を毎回4回ないし6回投与し続けても、精神障害などは発生しない。
・痛みの軽減に伴い投与量を減らす、中断することが可能
鎮痛補助薬
・神経因性疼痛はオピオイドが効きにくいため鎮痛補助薬を併用する。神経因性疼痛に用いられる鎮痛補助薬として、抗うつ薬、抗けいれん薬など
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一般名 |
商品名 |
抗うつ剤 |
アミトリプチリン |
トリプタノール |
イミプラミン |
トフラニール |
クリミプラミン |
アナフラニール |
アモキサピン |
アモキサン |
抗痙攣薬 |
カルパマゼピン |
テギレトール |
パルブロ酸ナトリウム |
デパケン |
フエニトレイン |
アレビアチン |
抗不整脈 |
メキシレチン |
メキシチール |
リドカイン |
キシロカイン |
N-D受容体ブロッカー |
ケタミン |
ケタラール |
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オピオイドの副作用対策
便秘:まず、原因を考える。(完全/不完全閉塞?)
・大腸刺激性下剤(ラキソベロン、プルセニド)
・緩下剤(酸化マゲネシウム、ミルマグ)
・浣腸、坐剤の使用
・水分摂取・食物繊維の摂取
■嘔気/嘔吐:まず、原因を考える(現疾患による?)
・中枢性制吐剤(セレネース、ノバミンなど)
・末梢性制吐剤(プリンペラン、ナウゼリンなど)
■眠気:軽度の場合は数日様子をみる、気分転換
・強度の場合はモルヒネの減量
■せん妄:他のオピオイドヘの変更
・落ち着いた環境を提供する
WHOがん疼痛治療法
・経口的に
・時刻を決めて:痛みが出てから使用するのではなく、時間を決めて一定間隔で
・段階的に:痛みの強さにあわせて選択する
・個人差を考えて細かい配慮をする
・痛みの治療の第一歩は、痛みのアセスメント!
・除痛の目標設定:
第1目標:痛みがなく安眠できる
第2目標:安静時に痛みがない
第3目標:体動時に痛みがない
それぞれの薬理的に予測される「最大効果間での時間」「作用時間」を考慮し使用時間を設定する。除痛効果が途切れないよう定期的に使用することが原則
そして、痛みの消失が維持され、平常の生活に近づくこと
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