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図表2-33 平成16年1月〜7月の犯罪発生マップ〜夜間(18時〜翌6時)〜
【北部エリア】
 
【南部エリア】
 
出典)滋賀県警察本部
 
ウ 行政の地域防犯取組動向
 現在の行政の地域防犯に関する主な取組の概略は以下のとおりである。
 
≪草津市地域安全に関する条例(平成12年7月9日制定)≫
・地域安全意識の高揚と積極的な地域安全活動の推進、地域安全に関する環境を整備し、安全で安心して暮らせる地域社会の実現を図る
≪草津市地域安全連絡会議(平成12年9月29日発足)≫
・市防犯防災対策室、草津栗東防犯自治会、市青少年育成市民会議、草津市立少年センターで構成
・地域安全対策の調整、関係団体との連携、情報交換等実施
≪その他主な活動≫
・15年度 啓発看板・広報、地域安全市民意識調査
 市立幼・小・中への不審者対策連絡会議設置
・16年度 大学生対象の防犯意識啓発事業、「安全・安心パトロールカー」事業等
 
エ 主な地域防犯団体の活動概要
≪玉川学区地域安全連絡協議会≫
【防犯活動への取組の背景、経緯】
 南草津駅中心地区は、立命館大学の進出、南草津駅整備を契機に、また国道1号線、京滋バイパスが縦断している等により、県内有数の犯罪多発都市である草津市の中でも犯罪が多発する地区となってきていたことから、草津署からパイロット地区の指定(平成13〜14年度)を受け、平成13年4月に、学区の青少年育成区民会議、自治連合会、幼稚園、小学校〜高等学校が参画し推進委員会を立ち上げ、パトロール重点に活動を開始した。また指定に伴い、県内犯罪発生情報の提供を受けることとなった。
 パトロールは夜間、少年たちがたむろしはじめる午後8時〜9時、交番警察官も参加してもらい2班構成(各班10名程度)でパトロールを実施し、たむろする青少年に対して成果をあげた。
 活動に関する費用(例えば、学区内の4箇所に防犯の垂れ幕設置、学校やマンション掲示物の印刷費、パトロール時のお茶代)はパイロット事業の補助金を充当した。
 2ヶ月に1回発行の「町内会ニュース」の紙面上で、パトロール活動の報告と参加募集広告を掲載しはじめ、パトロールに参加する市民の広がりに努めた。
 パイロット指定が終了する平成15年度には、この推進委員会を核に、自治会、自治連合会、PTAが中心となって、民生委員児童委員協議会、青少年育成区民会議等10団体に呼びかけ、平成15年12月に現在の連絡協議会が発足した。
 
【主な活動組織の概要、活動内容・成果】
 現在、当連絡協議会は玉川公民館が事務局となり、自治会、社会福祉協議会、青少年育成区民会議、少年補導委員、体育振興会、幼稚園から大学までの各教員、小学校・中学校の各PTA、民生委員・児童委員協議会、交通安全協会、こども安全リーダー、子ども会、更生保護女性会等の各組織を構成団体として組織化されている
 15年度の当連絡協議会の活動費用の財源は「草津市地域安全連絡会議」からの支援費で、パトロールの腕章、ジャンパー作成費等に充てた。同支援費は16年度には年間数万円に減少した。
 16年度の主な活動は、パトロール実施団体の連絡調整、パトロールの実施、通学路および公園の安全点検、防犯教室・講座の開催、防犯の日(毎月20日)の立ち番、小学生の登下校時の見守り、防犯広報・啓発、防犯灯の点検などである。
 16年度には、子どもたちの気の緩みやすい夏休み期間中のパトロールを開始した。
 また、特にある町内会では、メイン道路の街灯を水銀灯や蛍光灯からレトロ調の街灯への切り替えを16年度中に完了予定である。さらに電力会社に相談し、街灯の照度を計測してもらい対応をはかることも実施予定である。
 活動推進の成果としては、(1)南草津駅前の学生のたむろが減少した、(2)各種の意見や提案を寄せてもらえるようになり住民の関心がよりオープンになってきた、(3)住民層広範に「不安に関する関心」を持ってもらえる目線になってきたということがあげられる。
 
【今後の活動発展の課題、地域での役割の方向性・展望】
 新しい転入住民(マンション住民層7,000世帯)と旧住民層(戸建て住宅住民層、300世帯)間の会話が少なく当活動への参加者は限られている。自治会自体の加入については、マンション開発時の条件で入居者に自治会加入を勧めており、多くの方は市指定ごみ袋が必要なため加入している。両者の連帯感向上のため、任期1年で班長を選出してもらい2ヶ月に1回の会合を開催しており、この機会を通した交流と連絡伝達が行われている。
 ただし新住民層の居住地区にも定年退職層が増加してきており、時間的な余裕があるので参画し提言してくれるようになってきた。両者の融合という課題解消はあと少しで達成される模様である。
 警察署や行政と連携するだけでなく、地域住民にとって身近な活動として地域の自治会等が中心となって、「市民で守る」という視点から自覚をもって取組むことが必要である。現在でもすでに現役退職をされた人たちのボランティア団体(萩の会、芋の会、酒味湯の会その他)がいくつか組織化されており、月に何回か駅前通りや京滋バイパスのごみ収集等の活動や施設訪問を行っている。これらのサークルには、当協議会からお願いして、防犯上の視点から小学校の庭木の手入れや子どもの見守りをしてもらっている。
 平成13年からはある町内会で「まちづくり委員会」を設置し、7人を選定して長期的に取組むべき課題について検討してもらっている(前述の街灯整備もこの委員会の発案)。委員会への参加は自由にしており町内会ニュースでも提案・参加を呼びかけている。この仕組みからいろいろなボランティアが育成されていくことが期待されている。
 今後の対応課題としては、大災害時の住民の安全確保のため、住民の住居表示の明確化を進めて、正確な住民人口を把握をする必要がある。
 
オ 今後の地域防犯活動の発展・定着に資する地域資源例の概要
≪立命館大学≫
【防犯の取組、地域活動団体との連携等の実績】
 2001年度に学内外の事件・事故の増加に対応するためにプロジェクトを設置し、検討した結果、学生への啓発や防犯ベルの貸し出し、学内への照明増設・防犯カメラ設置など防犯システムの強化に着手した。
 特に、市内で本学学生に対する暴行傷害事件が多発した時期には、職員が周辺地域のパトロールを実施した。また、玉川学区が非行少年防止のモデル地区となっていたため、定期的な地域パトロールにも大学職員が参加している。
 
【今後の連携促進の可能性、障壁】
 今後は、玉川学区地域安全連絡協議会での情報通信や共同した取組、警察や関連団体との連携をさらに進めていく意向である。
 
≪老人クラブ≫
 毎週金曜日、会員が学校の下校時間に通学路にて立ち番をしている。
 
≪アルカリマガジン≫
【防犯の取組、地域活動団体との連携等の実績】
 「アルカリマガジン」という組織は、大学の経済学部の友人3人が「なにか事業をしたい」と話していた際、既往の「アルバ」のような紙媒体の事業ならできるのではないかと企画したことが発端である。検討の結果印刷費がかかることに気づき断念し、ホームページを媒体に実施しようということになった。
 15年9月15日に事業を立ち上げ、続いて12月15日にホームページを立ち上げた。現在、中心のコンテンツは、主に学生向けの草津市内の飲食店、食料品店、美容院、電器屋さん等の100軒ほどの店舗広告。店舗からは広告料をとらず無料で実施。
 事業開始にあたりコンテンツ探しに試行錯誤していた頃、国道1号線沿いの県湖南地域振興局が目に留まり、飛び込みで伺い、「なにかいっしょにできる事業がないか」と相談した。窓口の方が「学生の自警団づくりを県が取組んでいるから防犯関係のことなら、なにかあるのではないか。」と県民生活課を紹介いただいた。
 大学の友人にも自転車を盗まれたり、原付バイクを盗まれたりしていたので当方も関心を示し、県民生活課を訪問し、ポケットマニュアルをいただき「スキャニングして毎日更新で記事配信をします。」と約束し、被害防止と対応方策を学生向けに配信した。
 
【今後の連携促進の可能性、障壁】
 県や草津市から防犯に関連する情報をいただいて配信する取組を実施したい。また若者が不安に思っていること等を元にして防犯マップを作成し情報発信していきたい。
 ただしあくまで、防犯関係の取組は地域の自主的な団体(まちづくりや自警団活動をテーマに活動する地域の学生サークル。玉川学区地域安全連絡協議会に参加している)の告知・広報役(活動メンバー募集含め)に徹した活動を展開する意向である。
 
(2)住民の、地域の安全性に関する認知状況、および防犯活動への参加意向
 今回実施した「不安感マップアンケート」回収結果から、主に以下の点が明らかになった。
 
ア 地域の安全性に対する評価・危険だと感じる理由
 安全側の評価が4割、危険側の評価が3割弱となっている。理由としては、「実際に犯罪が多いから」「不安に感じる場所が多い」が4割強の高い回答が得られている。
 
イ 地域連帯感(近所づきあい)に対する評価
 「見知らぬ人ばかり」「見かける顔はあるが親しい付き合いはない」との回答が4割弱を占めている。20代前半人口割合の高さ(大学生居住)、平成7〜12年の定住率(約50%)の低さなどからも、地域コミュニティの熟度が低いことがうかがえる。
 
ウ 地域で行われている防犯活動の認知度
 防犯パトロールが5割強の人に認知されている。
 通学路・公園等の安全点検、あいさつ運動などの活動が約3割に認知されている。
 
エ 地域で行われている防犯活動への参加経験・不参加理由
 「参加したことがない」人は5割弱となっている。不参加理由としては「仕事が忙しく参加する時間がない」が最も多く3割強を占めており、次いで「顔見知りが少なく参加しにくい」とする意見が約2割を占めている。新旧住民の交流機会を増やしていくことにより、地域防犯活動への新しい参加者を得るきっかけづくりを行っていく必要がある。
 
オ 今後の地域防犯活動のあり方について
 「セキュリティシステムの強化」「防犯情報発信の強化」「警察警備体制の強化」が上位を占めている。「まちなか環境のイメージアップ」が重要であるとする割合が比較的高く、不安感の高いまちなか環境に対しての問題意識の高さがうかがえる。







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