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2.4 MEPC52の動向及び対応
2.4.1 強制要件に係る文書の改正に係る検討及び採択(議題5関連)
(1)概要(MARPOL条約附属書I、II、IBCコード全面改正の採択)
 今次会合で、海洋汚染防止条約(MARPOL)の附属書I(油による汚染防止のための規則)及び附属書II(ばら積みの有害液体物質による汚染の規制のための規則)、さらにIBCコード(国際バルクケミカルコード)の全面改正案が審議された。
 MARPOL付属書Iについては、今次会合で多少の修正の後、採択された。発効は、2007年1月、適用は一部規定について2010年1月の予定。
 MARPOL付属書II及びIBCコードについては、以下の詳細な報告のとおりの審議を経て採択された。発効は、2007年1月の予定。
(2)プレナリーにおける審議(MARPOL条約附属書II及びIBCコードの改正関連)
(イ)ディープタンクにおける食物油の輸送
 ディープタンク又は植物油輸送用に設計されたドライカーゴ船の独立タンクに食物油を積載して輸送する際のガイドラインに係る決議については、MEPC52における採択を目途に、MEPC51で原則承認されていた。プレナリーにおいては、今次会合において本決議を採択するため、事務局が用意したMEPC52/5/7について検討し、DGにおいてこれを最終化することを委任することになった。
(ロ)植物油の輸送
 マレーシアは、提案文書(MEPC52/5/5)を基に、植物油の輸送に関して、厳しい規則を実施することにより、不要な貿易の混乱を生じてはならないとする再三の要請を行った。マレーシアによれば、パーム油の輸送は2007年には5230万トンに達すると見積もられており、植物油輸送のためのタイプ2船型の船舶が今後不足する。従ってパーム油輸送に関する附属書II及びIBSコードの船型要件に係る規定の実施は2010年まで延期することをマレーシアは提案した。
 また、GESAMP/EHS WGが行った浮揚性に係る区分けによる固形化油脂の再区分化に関に対しては、マレーシアは留保を表明するとともに、全ての代表に対してこれの根拠となるデータを明らかにすべきと指摘した。
 一方、オランダ、パナマ、米国による、植物油の輸送に係る環境保護の観点からの共同提案(MEPC52/5/6)についても検討した。これに際し、MARPOL附属書IIは1992年のBCH24から検討が続けられており、今回の同文書の最終化まで続けられてきた研究によれば、海洋生物に対して植物油は有害であり、特に海鳥及び海岸のアメニティに対して影響を及ぼすものであること、また、植物油産業界の代表も最初の段階から検討に加わってきたことなどを指摘した。
 さらに、MEPC51では、鉱物油と同様の物性を示す植物油は海洋環境に対して同等の有害性を持つことを銘記したこと、そのため、MARPOL附属書Iに基づきフェーズアウトしたシングルハルタンカーを植物油の輸送に使用することは、MARPOL附属書IIにおいては認められないと委員会が合意したことなどをオランダは指摘した。
 以上の二つの異なる観点に関して、MEPC51以降、コレスポンデンスグループにおいて、MEPC51の検討結果をベースに検討を続けた結果、海洋環境保護と植物油輸送業界の経済的な混乱回避のバランスをとるため、代替措置をMARPOL附属書II第4規則1.3パラグラフに追加規定とすること、及びこれに伴う説明文書をIBCコード第17章に追加することを提案することになった(MEPC52/5/6)。これに関し、米国代表は、本提案はよい妥協案であることを指摘し、同国がMEPC49において本件に係る態度を留保したことについては、委員会が本提案を受入れるならば、取り下げる用意がある旨報告した。
 以上を考慮した結果、委員会はオランダ、パナマ及び米国の共同提案を採用することに合意した。
(ハ)改正MARPOL条約附属書II及び改正IBCコードの実施
 ノルウェーは改正MARPOL条約附属書II及び改正IBCコードの実施に係る問題点を指摘する文書(MEPC52/5/4)を提出しており、これについて説明を行った。これに関し、委員会はBLG9において本件を検討すること、検討にあたっては、改正附属書及びコードの発効日の観点から次回会合で速やかに検討し、結果をMEPC53に報告することなどを指示することに合意した。
 ノルウェーは、改正IBCコードは、ガス危険スペース及びガス危険ゾーンにある電気設備に係る規定についての改正を含んでいること、これはMSCにおける採択事項であること、この新しい規定は2007年1月1日以降にキールが据えられるケミカルタンカーに適用されることなどを指摘した。また、DE及びBLGにおいて同様な改正作業が並行的に行われており、一つはSOLASに基づくタンカーの要件、もう一つはガスタンカーのためのIGCコード(Gas Carrier Code)であるが、IBCを含めて3つの改正の発効日が異なることから産業界に混乱を来していることを指摘した。
 委員会は、MSCに対して2007年1月1日をSOLAS及びIGCコードの改正の効力発効日とするよう要請することに合意した。また、仮にこのような調整が図られなかった場合は、主管庁に対して、これらの改正をできるだけ早く実施することを要請する勧告を策定することとなった。
(3)DG(ドラフティンググループ)における審議
(MARPOL条約附属書II及びIBCコードの改正関連)
(イ)DGへの委任事項
 各提案文書及びプレナリーにおける意見を全て考慮し、MARPOL条約附属書II及びIBSコードの草案、及びこれらに付されるMEPC決議を採択のため最終化すること。
 今次会合における最終検討及び採択のため、MARPOL条約附属書II及びIBSコードの草案をプレナリーに提出すること
(ロ)DGにおける作業方針の確認
 DGにおける審議の冒頭、作業に使う予定の回章文書2538(Annex II)及び2539(IBC Code)、並びにMEPC文書MEPC 52/5/1及びMEPC 52/5/2の間には違いがあることが確認された。このため、作業は二つのMEPC文書をベースにし、必要に応じて回章文書に反映していくこととした。
 また、特定の名称及び重要な頭文字をとって省略されるようなものについての名称に関しては、次のように(例Pollution Category, Ship Type, Noxious Liquid Substances(NLS))大文字を用いることとし、MSCにおけるドラフティング作業との調和を図るため、この点についてはMSCに申し送ることに合意した。
(ハ)附属書IIの見直し
 定義に関して、我が国からの提案により、“Chemical Tanker”の定義を導入することが合意され、合わせてNLS tankerの定義も記載することとした。また、MARPOL 附属書II にあるCertificate of Fitness及びIBCコードにあるCertificate of Fitness forについては、MARPOL 附属書II 及びIBC CodeにあるCertificate of Fitness for the Carriage of Dangerous Chemicals in Bulkついては、調和を図る必要はないということが合意された。
 その他エディトリアルな修正が全般にわたって行われた。
(ニ)IBCコード
 SOLAS条約との調和を図る目的の二つの提案、インドからの適用船舶の長さにかかる提案(MEPC52/5/8)、防火要件に適合するための改造にかかる我が国からの提案について検討を行った。
 文書MEPC52/5/8のパラグラフ5及び6については、エディトリアルな修正と認められ、これを反映することとなった。しかしながら、同文書のパラグラフ3及び4については、内容的な変更と見なされ、BLGにおける検討が適切であるとされた。
 また、我が国からの提案については、慎重に検討した結果、内容的な変更であると見なされ、改正案の中には含まないこととした。
 第17章については、第10章の電気設備に関するデータ欠如部分の取扱にかかる決定が既になされており、これとの食い違いをさけるため、パラグラフ10.1.6の冒頭の部分を削除することとした。しかしながら、データ欠如部分に係る誤解を避けるため、第17章にこの変更の意図にかかる説明書きを追加することとした。
 質量濃度で60%を超え70%未満の過酸化水素水溶液については、第17章に含まれているが、質量濃度で8%を超え60%未満の過酸化水素水溶液については適用しないことが合意された。GESAMP/EHS WGが近い将来ハザードプロファイルを提供する期待を踏まえ、質量濃度で8%を超え60%未満の過酸化水素水溶液に係る規定パラグラフ17.5.3及び第15章の15.5.3は本コードに再度挿入し、そのまま残すこととした。
 プレナリーからの指示に従い、IBCコード第17、18、19章のリストに記載された物質に関して、現時点でアップデートされたデータがある限り、これらの物質についての見直しを行い、IBCコードのアップデートを図った。しかしながら、CGは今後もIBCコードのデータのエディトリアルな修正は必要であると認識した他、IBCコード第17、18、19章のリストの変更の対象物質に関しては、MSCに対して注意喚起することを委員会に要請することとした。
 IBCコード及びこれの採択のために添付されるMEPC決議に係る文書は、CGにおける作業の結果として、MEPC52/WP11のAnnex 2に見え消し訂正の形で記載されている。
(ホ)ディープタンクにおける食物油の輸送
 ディープタンクにおける食物油の輸送を認める事務局文書MEPC 52/5/7にあるMEPC決議文書の草案について検証を行った。
 最終的に本草案はCGにおいて最終化され、MEPC52/WP11のAnnex3に添付されている。
(4)最終プレナリーにおける審議
 最終日プレナリーにおいて、今次会合における審議に関して以下のような結果が導かれた。
(イ)MARPOL 73/78の附属書II(MEPC52/WP11 Annex1)の改正案が採択された。
(ロ)MARPOL 73/78の附属書IIの改正に伴うIBCコードの改正案(MEPC52/WP11 Annex1)が採択された。また、MSCにおける採択に先駆けて、IBCコード第17、18、19章のリストの変更の対象物質についてMSCの注意喚起を図ることとした
(ハ)ディープタンクで植物油の輸送を認めるとするMEPC決議案(MEPC52/WP11 Annex3)が採択された。
(ニ)採択された上記文書のエディトリアルな修正については、事務局における修正に委ねることとし、Pollution Category, Ship Type及び Noxious Liquid Substancesなどに大文字を使用したこと、それに伴うIBCコードの修正についてはMSCの作業との調和のため、同委員会に申し送ることとした。
(ホ)我が国及びインドからの内容に係る提案に関しては、BLG小委員会にその検討を申し送ることとした。
 
 また、我が国から、改正IBCコード案のMEPC52/WP1のパラグラフ2.1.4については、事務局の手違いで、“a list of products with the required safety data but omitted from either chapter 17 or 18 due to missing pollution data (columns A1, A2, B1, B2, E2) of the revised GESAMP Hazard Profiles (annex 4);”となっているため、正しく(columns A1, A2, B1, B2, E2)からB2を削除して同文書を最終化することを申し出たところ、これが認められた。
 なお、フィリピンからMARPOL附属書IIパラグラフ4.1.3の船型要件に係る規定については、MEPC51において行った留保を取り下げる旨発言があった。
 
2.5.1 IBCコードの改正(議題3関連)
 国際バルクケミカルコード(IBCコード)については、MEPC52での検討結果を踏まえたMEPC52/WP.11/Add.1をベースにドラフティングが行われ、特段の内容の変更なくDG作成最終案文どおり採択された。なお、タシット方式の受諾日を2006年7月1日、発効予定日を2007年1月1日とすることが合意された。
 また、本件改正に関連して、物性データ不足によってIBCコード第17及び18章から除かれた物質の一覧表にまとめたMSC/MEPCサーキュラーが承認された。
 
2.5.2 MARPOL Annex II関連物質のリストに提供するデータのcost implications(MSC79/22/3)(議題22関連)
 事務局より、本件に関する報告があった。委員会は、事務局が更に改正IBCコードの最終化を勘案して勉強中であり、MSC80及びMEPC53での検討に情報を提供することをノートした。







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