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はしがき
 本報告書は、日本財団の平成16年度助成事業「船舶関係諸基準に関する調査研究」の一環としてRR-R5 液体貨物調査検討会において実施した「液体貨物の安全輸送に関する調査検討」の成果をとりまとめたものである。
 
RR-R5(液体貨物調査検討会)委員名簿(敬称略、順不同)
 
委員長 吉田千秋(理工学振興会)
委員 若林明子(淑徳大学)  関口秀俊(理工学振興会)
岡村敏(識者)  太田進(海上技術安全研究所)
城田英之(海上技術安全研究所)  金子栄喜(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)
高野裕文(日本海事協会)  黒越仁(日本船主協会)
石綿雅雄(日本化学工業協会)  菊地武晃(日本海難防止協会)
濱田高志(日本海事検定協会)  内田成孝(全国内航タンカー海運組合)
三好泰介(新来島どっく)  権田恵(商船三井)
奈良博文(東京マリン)  瀧上正孝(近畿運輸倉庫)
オブザーバー
岸本研一(日本海事協会)  熊野幹夫(日本化学工業協会)
田井洋介(日本海難防止協会)  林和宏(新来島どっく)
菅原隆(商船三井)  高橋佳司(近畿運輸倉庫)
 
関係官庁
(永井啓文(安全基準課))  (松本友宏(検査測度課))
今村智之(安全基準課)  矢加部文(検査測度課)
(村岡英一(環境・海洋課海洋室))  高橋治(検査測度課)
小林久幸(環境・海洋課海洋室)  長崎孝俊(環境省環境保全対策課)
 
事務局 柳瀬啓 (日本造船研究協会)  前中浩(日本造船研究協会)
 
注:( )内は前任者を示す
 
1.1 目的
 現在IMOのBLG小委員会ではGESAMPのハザードプロファイルの見直しに基づく汚染分類の変更、IBCコード改訂の検討をおこなっている。
 本年度はGESAMPが新たに再評価した物質のハザードプロファイルに基づく汚染分類の変更によるケミカルタンカーの操作、構造に影響する調査に基づき、MEPC49で合意された改訂での問題点を検討し、ESPH10で情報収集を行った。
 
(経緯)
 BLG 1において現行5分類を3分類に変更するにはそれぞれの長所短所をリストアップして議論すべきという方針となり、BLG 2において事務局より比較案が提案された。しかしながら分類調和に基づくGESAMPのハザードプロファイルの見直しが平行して進められているのでその結果をとりいれないと評価できないとして結論は延期された。
 BLG 3においてはオランダから改正ハザードプロファイルの解釈の提案があったが新規にA類となるものが増えることから日本は別の解釈を提案した。
 BLG 4ではオランダが修正案を提出したが日本の主張をほぼ認めたものであり、A類(3分類ではXに相当)の総数は現行より少なくなっている。
 この時点でハザードプロファイルの見直しは65物質であった。
 BLG 5においてはさらに168物質の見直しが報告されたが、2002年には結論を出すのは困難であるとの意見が多く、2004年に汚染分類方式を変更するかどうかの決定を延期することとなった。
 BLG 6、7においては欧州諸国の3分類方式と日本等の5分類方式について議論がされてきたが2002年にはMEPCでの検討事項となった。しかしMEPC47でも結論がでなかった。
 
 IBCコード改訂についてはデータ様式、基準の明確化が検討されており国内では海査407号の改正が必要となるため、改正案の作成を行った。
 IBCコードについては従来不明確であった危険有害性の定義、クライテリアを明確にすると同時に、国際的分類調和(GHS)の動向を取り入れることとなっておりBLG7において事務局より改定案が提案された。日本は従来から改訂作業については事務局に協力しているがBLG8に向けエディトリアルなチェックを行い、MEPC49に日本案を提案した。
 
 本年度はBLGが開催されなかったがESPH10に対応して国内輸送への影響を調査した。またIBCコード改訂におおきな影響を与える国際的分類調和の動向についても調査した。
 
2.1 MEPC51の動向及び対応
2.1.1 ESPH 9からの報告(議題11関連)
 植物油輸送に関するガイドラインについては米国ほかが植物油輸送に供される船舶の不足について懸念を表明し規制の影響を調査するよう主張したほかは多くの支持を集めDGにて審議されることとなった。我が国はESPH 9の報告を支持するとともに米国の影響調査についても支持した(関連MEPC/51/6)。
 植物油輸送船の不足に関しては、パナマから2(7)規則はIBCコードタイプ2ケミカルタンカーの規則を満足するダブルハル構造のタイプ3のケミカル/HNSタンカーの使用のみを許可し、かつ船舶の不足の事態が起こった場合にのみ適用されるべきとの提案がなされ、シングルハル油タンカーの植物油輸送への使用は適切でないことが合意された。結局ガイドラインについてはUSA、フィリピン、マレーシアが留保したまま承認された。
 ほか、第17章から船穀材料を削除することについてはIACS懸念を表明し、MSCで審議されることとなった。
2.1.2 修正されたMARPOL条約付属書I及びIIの追跡調査(議題12関連)
 MARPOL条約附属書I及びIIの見直しについては特段の反対なく承認された。我が国は附属書IIの番号付けについて提案し、MEPC52にて検討されることとなった。
 
2.2.1 MEPC51からの報告(IBCコードの全面改正)
 ESPH作業部会で作成されたIBCコード改正案について、MEPC52で採択するためにMEPC51で承認され回章されることが報告された。今次会合で、本改正案の承認が行われないと、SOLASとMARPOLの下で異なるIBCコードが存在することになるとMEPC議長は付け加えた。
 本改正案の第11章について、我が国から、SOLAS条約第II-2章(2000年改正)が反映されていないことを指摘し、併せて次回MEPC52に本改正案をクロスチェックして、提出すると発言した。
 本改正案の第6章(構造材料)について、IACSから材料及び貨物のCompatibilityの要件が欠けており、挿入するよう提案があった。委員会は、Expert Groupを結成して、改正案(MSC78/WP.4)を用意した。
 MSCは、BLG8が作成した第10章(電気設備)に関する改正案及び今次会合で作成した第6章(構造材料)の改正テキストを組み込んで、本IBCコード改正案を承認し、MEPCに対し、MEPC52で最新版にUpdateした本コード改正案で採択を行い、その報告を次回会合MSC79に報告することを要請した。
 
2.3.1 洗浄剤の評価(議題2関連)
 日本1件、米国2件、ベルギー1件、及び希12件の計16件の提案があり、サブグループで評価の結果、全て承認された。
2.3.2 新規物質の評価(議題3関連)
 新規物質の評価は、24件の物質が提出されており、うち23件は、植物油に関するものであった。審議の際、植物油の混合物の提案(Blended and Co-mingled Vegetable Oils: ESPH/10/3)に関しては、混合物の評価ガイドラインの審議後に行うこととしたが、その結果、植物油の混合物は他の混合物と同様に決められたガイドラインに従って評価することで合意された。
(1)Vegetable Oils(ESPH10/3/1〜21)
 提案されている21件の植物油に関して、提出されたデータを基に審査が行われた。この際、GESAMP/EHSで評価されていない以下の3つの物質については、査定が却下された。残りの18件の植物油に関しては、全て査定された。
(未査定物質)
Palm fatty acid distillate (ESPH10/3/12)
Palm acid oil (ESPH10/3/11)
High erucic acid rapeseed oil (ESPH10/3/7)
 尚、ここでFFA(遊離脂肪酸)の含有量に関して議論があり、GESAMP/EHSで評価した際のFFAの含有値以下のものだけが該当することとされた。通称(別名)については、この名前から想定できない通称のみ、インデックスに掲載することとされた。
(2)dimethyl disulphide(ESPH10/3/23)
 提案の内容が承認された。これに従い、MEPC.2/Circ.10に掲載されていた同物質のカラム“i”は“IIA”、期限は無期限と修正された。
2.3.3 仮査定物質リストMEPC.2/Circ.9の見直し(議題4関連)
 追加及び修正・見直しが行われ、以下のことが合意された。
・日本提案であるPoly(iminoethylene)-graft-N-poly(ethyleneoxy) solution (90% or less)の有効期限が17/12/05と変更、延期が必要であれば、BLG9へ提出。
・今年末(17/12/04)に期限となる物質について、確認し、独、仏、ベルギーから提出された物質(Methylal technical, isononylaldehyde, Polycarboxilic acid)については、17/12/04までGESAMP/EHSにデータが退出された場合のみ、1年間、期限を延長することとされた。
2.3.4 混合物に対する汚染分類と船型要件の基準(議題6関連)
 ESPH/10/8のsection 5に従って、議論が行われた。その結果、一部修正の上、承認された。
2.3.5 BCHコードの見直し(議題9関連)
 BCHコードの見直しが必要であることが合意され、これをBLG、MEPC、MSCへ提案することとされた。
2.3.6 その他
(1)現存物質に対しての安全要件の見直しについて、MSCの合意内容に矛盾があることが指摘され、ESPHとしての対処を親委員会に諮っては如何かとの意見があった。しかしながら、MSCの合意内容が優先されるとの推測からC1、C2、C3のデータは必要となることが予想される。
(2)事務局(又はGESAMP/EHS)では、必要なデータが無いためにTableから削除された物質などについて、再度確認を行い、データが推測できる物質(例えば過酸化水素)や、ミスで欠落したものなどを明らかにする予定。従って、C1、C2、C3のデータが無い物質については、至急データを提出する、又は推測する等の必要がある。
(3)MEPC52及びMSC79以降は、旧規則の物質リストと新規則の物質リストの2本立てとなり、必要なデータが無いものについては、旧規則のリストに載ることになる。旧リストに載っている物質に対しては、そのリストに載っている期限内に、必要なデータを提出することにより、新規則リストに移り、IBCコード改正時にTableへ載ることになる。
(4)C3データ予測に関しては、GESAMP/EHSの40/9の報告にC1、C2、D1、D2より推測するガイドラインが掲載されているので、これにより多少問題が回避されるであろう。







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