10.3 業界ベースでの経済効果
次に、5.で述べた旅客船事業者へのアンケート結果及び10.2の個船ベースでの経済効果を踏まえ、船体・機関計画保全検査を実施した場合に関係業界全体に及ぼす経済効果を推定する。
10.3.1 大中型フェリーの修繕工事費の傾向
旅客船事業者へのアンケート結果に基づき、船体関係の入渠時修繕費と総トン数との関係、機関関係の入渠時修繕費と総トン数・運転時間・機関馬力との関係を図示すると、次のとおり。
図10.3.1 船体入渠時修繕費/総トン数
図10.3.2 機関入渠時修繕費/総トン数
図10.3.3 機関入渠時修繕費/運転時間
図10.3.4 機関入渠時修繕費/機関馬力
これらから、船体関係の入渠時修繕費は、総トン数との間に一定の相関関係があり、また、機関関係の入渠時修繕費についても、R-2乗値で比較すると、運転時間や機関馬力よりも総トン数との相関関係の方が強いことが分かる。
このため、船体・機関合計の入渠時修繕費と総トン数の関係を図示すると、次図のとおりとなる。
図10.3.5 船体・機関入渠時修繕費/総トン数
因みに、アンケート回答社(有効回答分)69隻、657,174総トンに対して、上記の相関式を適用すると、船体・機関入渠修繕費(百万円)=0.0058×総トン数+4=3,816百万円となる。
他方、アンケート回答による実際の修繕費合計は、4,134百万円であり、約8%の誤差があるが、マクロ的な傾向分析に用いる限り、上記の修繕費推定式は概ね利用可能なものであると考えられる。
なお、同じくアンケート結果から、船体・機関別の入渠時修繕費の比率(各社合計の比率)を求めると、船体:機関=39:61≒4:6となる。
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