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3. 申請書類
 
 船体計画保全検査を受けることを希望する者には、その旨を記載した申請書(任意様式:申請者が当該船舶の船舶所有者でない場合には、当該申請書の適当な欄に当該船舶の管理を申請者に委託した旨を船舶所有者が記載すること。)に下記の書類を添付させ、原則として、船舶所有者又は船舶管理会社の所在地を管轄する管海官庁又は定期的検査の受検予定地を管轄する管海官庁に申請を行わせること。なお、添付させる下記の書類の部数は、下表のとおりとする。
(1)船舶安全管理認定書等交付規則(平成12年運輸省告示第274号)に定める適合認定書(仮適合認定書を含む。)及び船舶安全管理認定書(仮船舶安全管理認定書を含む。)(以下「任意ISM証書」という。)の写し(受有している場合に限る。)
(2)船舶安全管理規程(上記告示第1条に規定する「船舶安全管理規程」をいう。ただし、船体の保守管理等に関する規程類(船舶管理会社及び当該船舶にかかるもの)に限る。以下同じ。)
(3)船体保全計画書(4.(2)(a)、(b)参照)
(4)船体保全計画の技術的妥当性を説明する書類(4.(2)(c)、(d)参照)
(5)船体の保守管理等に関する記録
(6)その他管海官庁が必要と認める資料
(7)以下の参考資料
(1)一般配置図(写し)
(2)船体中央横断面図(写し)
(3)船舶検査手帳(写し)
(4)船舶件名表(写し)
 
提出書類の部数
 
4. 承認基準
 
(1)優良・適切な船体の保守管理等体制
 船体の保守管理等が船舶安全法施行規則第12条の2第1項に規定する「国際安全管理規則」に適合する安全管理システムにより実施されていること。なお、この要件については、当該船舶及びその船舶管理会社が任意ISM証書の交付を受けていることを標準とする。これ以外の場合にあっては、5.(1)に基づき、これと同等の船体の保守管理等体制が維持されていることを確認する。
 また、上記の優良・適切な船体の保守管理等体制の下で、船舶安全管理規程に次の事項が規定されており、船体の基準適合性維持のための妥当性が認められるものであること。
・船体の保守管理面全般について、点検・整備に係る項目、間隔、方法、記録の作成・管理、実施者・責任者、修理交換等に係る判定基準、保全計画作成手順、船用品の管理等
・運航管理面で船体の基準適合性維持に直接影響する事項(例:荒天時の運航手順)
・船員管理面で船体の基準適合性維持に直接影響する事項(例:船体の保守管理に関する教育手順)
 
(2)技術的妥当性を有する船体保全計画
 船体保全計画書は、船舶安全管理規程中の附属文書等として位置付けられ、以下の(a)及び(b)に適合するものであること。
 また、船体保全計画の技術的妥当性を説明する書類は、以下の(c)及び(d)に適合するものであること。
 なお、承認対象とする計画の期間は、5年程度を標準とする。また、原則として、建造後1年目の第1種中間検査は入渠/上架の省略対象としない。
 
(a)船体計画保全検査の対象として、船舶安全法施行規則第24条第1項第1号イに規定する船体の外観検査の準備にかかるもの及び次に掲げるもののほか、入渠/上架を省略した場合に水線上から確認できない部位がすべて含まれていること。ただし、別途機関計画保全検査の対象とされている機器等については、この限りでない。
(1)船底外板・船側外板
(2)舵
(3)錨
(4)錨鎖
(5)船底弁(ディスタンスピースを含む。)
(6)船外弁(ディスタンスピースを含む。)
(7)シーチェスト
(8)サイドスラスター
(9)フィンスタビライザー
(10)シャフトブラケット
(11)プロペラ(変節装置を含む。)
(12)プロペラ軸(船尾管内又は船外にある中間軸を含む。)
(13)船尾管シール装置
(14)船尾管軸受
 
(b)上記の船体計画保全検査の対象となる部位について、入渠/上架時を含む点検・整備の時期・間隔・方法及び修理交換等に係る判定基準が記述されていること。また、入渠/上架を省略する場合におけるこれらの部位の基準適合性を維持・確認するための追加措置について、点検・整備の時期・間隔・方法及び修理・交換等に係る判定基準が記述されていること。なお、当該追加措置としては、例えば、次のようなものが考えられる。
・適切な長期仕様の船底塗装(初めて塗装する場合にあっては、検証確認のために入渠する計画等を含む。)
・定期的かつ一定頻度での船体内部点検(注意箇所における継続的な板厚計測の実施を含む。)
・特定の機器類について、長期仕様の材質の選択
 
(c)上記(b)の船体保全計画の記述内容について、対象となる部位の衰耗状態等の予測が可能であること等、第1種中間検査(特1中を除く。)時の入渠/上架を省略した場合にあっても、船体の基準適合性を維持できることが技術的に推定可能であると認められること。
 
(d)上記(b)の追加措置の内容について、必要に応じ、当該措置に関する高度な知見を有しているメーカー等の確認を得ており、その妥当性が認められるものであること。
 
(3)適切な船体の保守管理等に関する記録
 船体の保守管理等に関する記録には、船舶安全管理規程及び船体保全計画書に基づく記録として、少なくとも以下の項目が含まれること。
(a)船体の保守管理等の時期及び内容
(b)船体の保守管理等の結果(計測データ、損傷の状況、修理内容等)
(c)船体の保守管理等の責任者の署名
 
(解説)
 船体計画保全検査の申請書類と承認基準とは密接な関連があるため、承認基準に照らしながら、準備すべき書類や審査のポイント等を説明します。
 
(1)任意ISM証書の写し
 承認基準4.(1)にあるとおり、本制度では、当該船舶及びその船舶管理会社が任意ISM証書の交付を受けていることが標準とされています。
 これは、ISMコード自体では、運航・船員・保守の全般について安全管理システムを構築することが要求されており、また、保守管理についても船体以外の設備・機関等も対象とされていますが、本制度では船体の保守管理等(運航・船員管理のうち船体の健全性維持に直接影響するものは含む。)がISMコードに適合する安全管理システムにより実施されていればよいため、任意ISM証書の交付を受けていることは必ずしも義務とされていません。しかし、予め任意ISM証書の交付を受けていない場合でも、本制度の承認を得るためには、該当部分について任意ISM証書の交付を受ける場合と同等の審査が行われます。すなわち、安全管理システムを構築すべき範囲はやや限定されますが、審査の深度自体が浅くなるものではありません。したがって、新たに本制度の承認を受けようとする場合でも、当該限定された範囲についてのみ安全管理システムを構築することと、社内の安全管理体制全般について安全管理システムを構築して任意ISM証書を取得することとの間で、労力に大きな差が生じる訳ではありません。任意ISM証書を取得すれば、全社的な安全意識の向上や対外的な信用度の向上等の波及的なメリットも期待できることから、ここでは、特段の事情がない限り、事前に又は本制度の申請と並行して任意ISM証書を取得し、本制度の審査時にはISM以外の計画保全固有の対応準備に注力することを標準的な方法として奨めています。
 なお、ISMコードの要件のうち、船体計画保全検査を実施するために必須となる要件、すなわち、船体の基準適合性維持に直接影響する保守管理体制等の範囲については、「参考1: 船体計画保全検査を実施するために必要なISMコードの要件」を参照して下さい。
 
(2)船舶安全管理規程
 ここでは、ISMコードに適合した船舶管理を実施するために必要となる保守管理、運航管理及び船員管理に関する各種規程類のうち、船体の基準適合性の維持に影響するものを集合的に指しています。具体的な文書体系は、各社の事情に応じて構築されるため、必要となる文書類を一概に言うことはできませんが、盛り込まれるべき内容は、以下のようなものです。任意ISM証書を取得済みの場合は、基本的には、自社の管理文書のうち、以下の内容が含まれている規程類を提出することで可能です(具体的な文書の名称等は問いません。)。ただし、新たに船体保全計画書を作成する場合は、これらの規程類との整合性を図る必要があります。
 
(1)安全管理の基本方針
(2)組織、体制
 船体の保守管理等に必要な組織、体制を明確にするとともにそれぞれの職務分担、責任及び権限を明確に規定する。
(例)
*会社及び船内組織図
*船舶安全管理体制のフロー図
*職務分担、権限と責任を明確に記述し、指揮系統をフローで示す。
*管理責任者(陸上の海務部長等)を選任する。
(3)業務内容
 船体の保守管理等に必要な業務内容(点検・整備に係る項目、間隔、方法、記録の作成・管理、修理交換等に係る判定基準、船用品の管理等)と分担(実施者・責任者)を明確にする。
 また、船体計画保全の対象部位については船体保全計画書に基づき業務を実施することを規定する。この際、計画保全対象部位とそれ以外の部位に関する取扱い等を明確に整理する。なお、4.(1)中の「保全計画作成手順」としては、安全管理システムの中で船体保全計画が継続的かつ適切に作成、見直しが行われるように、保全計画の作成に係る基本的考え方(継続的なデータ管理・分析等)や承認・変更手順等を規定する。
(4)教育・訓練
 船員法で定められている繰練及び教育訓練以外に、船体の保守管理等に関する教育訓練(研修会、講習等)を実施する。
(5)緊急事態対応
 緊急事態発生に備え、社内(陸上及び船内)に事態に対応するための組織を定め、指揮命令系統、社内及び公共機関を含めた社外への連絡体制ネットワークをフロー等で示す(運航管理規程を準用)。
(6)不具合事項管理
 船体(船底・船側外板)及び水線下の装置(舵、錨及び錨鎖、船底・船外弁、シーチェスト、サイドスラスター、フィンスタビライザー、シャフトブラケット、プロペラ、プロペラ軸、船尾管シール装置、船尾管軸受等。以下、「諸装置」という。)に発生した事故及び不具合に対する措置と再発防止対策を計画するとともに、事故報告書及び不具合報告書の提出を規定する。
 また、安全管理システムの是正又は見直しのため手順(例えば整備基準の見直し)を規定する。
 事故報告書及び不具合報告書には、次の項目を記述する。
*発生箇所と内容
*発生日時・場所
*発生に至る顛末
*発生原因
*実施した措置と結果
*再発防止のために必要な改善点
(7)文書管理
 船体の保守管理等に必要な文書、図面、記録の作成・改廃・配布について、職務分担、責任と権限を明確に規定する(陸上及び船内)。
 ファイリングを適切に行い、関係者が必要な時に必要な書類等を直ちに取り出せるよう整理して保管する。
(8)内部監査
 船体の保守管理等のための安全管理システムを定期的に社内で監査し、結果を検討し、評価するための規程を定める。
 監査方法としては、次の二つの方法を定めなければならない。
○内部監査:
内部監査員を選出し、定期的に陸上及び船内の安全管理システムについて次の点をチェックし、その運用状況を検証する。
*各規程が守られ、安全が確保されているか。
*書類及び記録のチェック。
○経営者による見直し:
経営者が直接安全管理システム全体を評価・検証する。
*安全管理システム及び結果に不備があれば、安全管理委員会を設立し、必要な見直しを行う。
 
 なお、何らかの事情により、任意ISM証書の取得ができない場合は、ISMコードに準拠して上記の内容を含むものとして、通常、次のような規程類を作成する必要があります。この場合の考え方は、「参考1: 船体計画保全検査を実施するために必要なISMコードの要件」を参照して下さい。
イ. 組織に関する規程
ロ. 教育、訓練規程
ハ. 船内業務規程
ニ. 緊急事態対応規程
ホ. 不具合事項管理規程
ヘ. 文書管理規程
ト. 内部監査規程







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