5.3.3 入渠時期の決定要件
アンケートにおいて、今後、船底検査制度が見直され、検査のための入渠が1年を超える間隔で可能となった場合、どのような要因に基づいて入渠時期・間隔を決定するかを調査したところ、次表のとおりであった。
その結果、単独要因としては、年間の運航スケジュール上、入渠可能な時期を選択するとの回答が最も多く、複合要因としては、機関の健全性を確保でき、かつ、年間の運航スケジュール上、入渠可能な時期を選択するとの回答が最も多かった。
また、各要因が含まれる回答数から、入渠時期の決定要因として強い順は、年間運航スケジュール、機関整備、船体整備の順であることが推定できる。
項目 |
要因 |
会社数 |
船舶数 |
(1) |
メーカー指定の解放時期等に基づき、機関の健全性を確保できる整備期間 |
0 |
0 |
(2) |
2年間保持可能な船底塗装等に基づき、船体の健全性を確保できる整備期間 |
0 |
0 |
(3) |
年間の運航スケジュール上、入渠可能な時期(非繁忙期等) |
6 |
24 |
(4) |
上記(1)及び(2)の要因 |
4 |
9 |
(5) |
上記(1)及び(3)の要因 |
7 |
25 |
(6) |
上記(2)及び(3)の要因 |
4 |
9 |
(7) |
その他(時期の指定がない) |
2 |
6 |
|
項目 |
会社数 |
船舶数 |
上記(1)が含まれる要因 |
11 |
34 |
上記(2)が含まれる要因 |
8 |
18 |
上記(3)が含まれる要因 |
17 |
58 |
|
5.3.4 入渠希望時期のパターン
同様に、アンケートにおいて、今後、船底検査制度が見直され、検査のための入渠が1年を超える間隔で可能となった場合、想定される入渠時期のパターンを調査したところ、次表のとおりであった。
「2年―1年―2年」の間隔を希望する船舶(38%)が最も多いが、毎年の入渠を続けるとの船舶(29%)、2年毎の入渠を希望する船舶(22%)がそれに次ぐ。総じて、全体の約7割の船舶が入渠間隔の延長を希望しているが、その殆どは2年以内の入渠間隔を想定している。
入渠時期のパターン |
平均入渠間隔 |
会社数 |
隻数 |
隻数比率(%) |
毎年 |
1年 |
7 |
21 |
29 |
2年毎 |
2年 |
5 |
16 |
22 |
2年―1年―2年 |
1年8ヶ月 |
12 |
28 |
38 |
14月―22月―24月 |
1年8ヶ月 |
1 |
2 |
3 |
18月―18月―24月 |
1年8ヶ月 |
2 |
3 |
4 |
2年―3年 |
2年6ヶ月 |
1 |
3 |
4 |
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5.3.5 入渠修繕費の概要
(1)船体の入渠修繕費用
入渠検査時の年間平均修繕費について調査したところ、船体関係修繕費と総トン数との関係を見た場合、概ね15,000総トン以下の船舶では、2千万円を中心に1千万円から3千万円の範囲に纏まっている。
他方、15,000総トンを超える船舶は、約5千万円となっている。なお、1社が約9千万円と飛び抜けているが、これは会社の整備方針によるものである。
総トン数と船体入渠費用
(2)機関の入渠修繕費用
機関関係の入渠修繕費用を機関馬力別に見た場合、概ね2万馬力以下は、2千万円を中心に1千万から3千万円の範囲に纏まっている。
他方、2万馬力を超える船舶は、約2千万円から1億5千万円まで、非常にばらつきが大きい。
なお、後述「10. 船体・機関計画保全検査の導入効果の評価」においても、分析を行っている。
機関馬力と機関の入渠費用
船体計画保全検査制度の実施の可能性が高いと見込まれる大中型旅客船(フェリー等)について、アンケート調査結果に基づき、機関整備の間隔、入渠間隔との関連、入渠時修繕費用等について、分析を行った。
その結果、次の点が明らかとなった。
●船体計画保全検査制度が導入された場合、全体の約7割の船舶が入渠間隔の延長を希望しており、その殆どは2年以内の入渠間隔を想定している。
●入渠間隔の決定要因としては、運航スケジュールに加え機関の要整備時期との関連が深い。
●主機の構成要素のうち、入渠での解放整備が必要であり、かつ、最も整備間隔の短いものは過給機(通常6,000〜8,000時間)であり、現状では、この間隔を2年程度としている船舶は、比較的年間運転時間の短い船舶(4,000時間程度以下)であって、全体の1/3程度である。すなわち、計画保全検査制度の要件である優良・適切な保守管理体制の確保を前提とすれば、当面、これらの船舶において当該制度の導入の可能性が高いと考えられる。他方、年間運転時間の長い船舶であっても、主機の負荷率が適正でタービンのカーボンによる汚れが少ない場合は、長期整備仕様の過給機を採用する等の適切な措置を工夫すれば、入渠間隔の延長の可能性もある。
●その他、主機の構成要素別に保守整備間隔の実態が明らかとなった。
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