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3.2.3 評価結果
 各物質を収納した輸送物が海没した場合を想定して行った、公衆の被ばく線量評価結果の時間的な最大値とその時の海洋中核種濃度を核種毎に整理した。この海洋中核種濃度は、海洋拡散計算で求めた0-100m水深の平均値である。各物質を収納した輸送物に対する環境影響評価結果は、以下のとおりである。
 
(1)放射化汚染炭素鋼
 放射化汚染炭素鋼の評価結果を表3.2.3-1に示す。
 
表3.2.3-1 環境影響評価結果(放射化汚染炭素鋼)
核種名 半減期
(y)
放射能量
[Bq]
放出率
[Bq/day]
海洋中濃度
Bq/m3
被ばく線量
mSv/y
H-3 1.23E+01 2.54E+12 1.44E+07 1.77E-04 3.02E-13
C-14 5.73E+03 3.14E+11 1.78E+06 2.22E-05 2.25E-08
Cl-36 3.01E+05 7.78E+09 4.40E+04 5.49E-07 2.42E-15
Ca-41 1.40E+05 8.68E+05 4.91E+00 6.13E-11 2.80E-18
Mn-54 8.55E-01 1.11E+09 6.26E+03 6.88E-08 7.49E-12
Fe-55 2.70E+00 8.98E+14 5.08E+09 5.98E-02 1.73E-05
Ni-59 7.50E+04 2.69E+11 1.52E+06 1.90E-05 1.40E-10
Co-60 5.27E+00 1.94E+14 1.10E+09 1.33E-02 1.15E-05
Ni-63 9.60E+01 3.14E+13 1.78E+08 2.21E-03 3.88E-08
Sr-90 2.91E+01 9.12E+07 5.16E+02 6.40E-09 4.05E-14
Nb-94 2.03E+04 2.54E+07 1.44E+02 1.80E-09 1.63E-13
Tc-99 2.13E+05 8.23E+07 4.65E+02 5.81E-09 8.96E-14
I-129 1.57E+07 5.09E+01 2.88E-04 3.59E-15 6.08E-18
Cs-134 2.06E+00 5.98E+08 3.38E+03 3.94E-08 6.17E-12
Cs-137 3.00E+01 1.08E+08 6.09E+02 7.55E-09 8.10E-13
Eu-152 1.33E+01 4.34E+11 2.45E+06 3.02E-05 4.93E-09
Eu-154 8.80E+00 5.53E+10 3.13E+05 3.82E-06 8.93E-10
全α
(Pu-239と設定した。)
2.41E+04 1.94E+07 1.10E+02 1.37E-09 1.85E-11
合計(輸送物1基あたり) 3E-05
合計(輸送物18基を積載した運搬船1隻あたり) 5E-04
※本評価では、「輸送容器によるバリア効果」、「海流による拡散」および「スキャベジングによる沈降」を考慮していない。
 
(2)放射化汚染ステンレス鋼
 放射化汚染ステンレス鋼の評価結果を表3.2.3-2に示す。
 
表3.2.3-2 環境影響評価結果(放射化汚染ステンレス鋼)
核種名 半減期
(y)
放射能量
[Bq]
放出率
[Bq/day]
海洋中濃度
Bq/m3
被ばく線量
mSv/y
H-3 1.23E+01 2.31E+11 1.31E+02 1.60E-06 2.74E-15
C-14 5.73E+03 1.18E+12 6.66E+02 8.32E-06 8.45E-09
Cl-36 3.01E+05 1.79E+09 1.01E+00 1.26E-08 5.58E-17
Ca-41 1.40E+05 3.58E+06 2.03E-03 2.53E-11 1.16E-18
Mn-54 8.55E-01 6.13E+07 3.46E-02 3.81E-10 4.15E-14
Fe-55 2.70E+00 5.18E+13 2.93E+04 3.45E-04 9.98E-08
Ni-59 7.50E+04 1.32E+12 7.46E+02 9.32E-06 6.86E-11
Co-60 5.27E+00 1.93E+14 1.09E+05 1.32E-03 1.15E-06
Ni-63 9.60E+01 1.56E+14 8.79E+04 1.10E-03 1.92E-08
Sr-90 2.91E+01 8.01E+06 4.53E-03 5.62E-11 3.56E-16
Nb-94 2.03E+04 3.30E+09 1.87E+00 2.33E-08 2.11E-12
Tc-99 2.13E+05 2.69E+07 1.52E-02 1.90E-10 2.92E-15
I-129 1.57E+07 1.27E+01 7.20E-09 8.98E-17 1.52E-19
Cs-134 2.06E+00 1.41E+08 7.99E-02 9.30E-10 1.46E-13
Cs-137 3.00E+01 1.84E+07 1.04E-02 1.29E-10 1.38E-14
Eu-152 1.33E+01 7.07E+10 4.00E+01 4.92E-07 8.04E-11
Eu-154 8.80E+00 8.48E+09 4.80E+00 5.86E-08 1.37E-11
全α
(Pu-239と設定した。)
2.41E+04 7.07E+06 4.00E-03 4.99E-11 6.74E-13
合計(輸送物1基あたり) 1E-06
合計(輸送物18基を積載した運搬船1隻あたり) 2E-05
※本評価では、「輸送容器によるバリア効果」、「海流による拡散」および「スキャベジングによる沈降」を考慮していない。
 
(3)放射化汚染コンクリート
 放射化コンクリートの評価結果を表3.2.3-3に示す。
 
表3.2.3-3 環境影響評価結果(放射化コンクリート)
核種名 半減期
(y)
放射能量
[Bq]
放出率
[Bq/day]
海洋中濃度
Bq/m3
被ばく線量
mSv/y
H-3 1.23E+01 6.47E+11 6.47E+11 8.18E-01 1.40E-09
C-14 5.73E+03 1.42E+09 1.42E+09 1.80E-03 1.83E-06
Cl-36 3.01E+05 3.50E+07 3.50E+07 4.42E-05 1.95E-13
Ca-41 1.40E+05 1.81E+09 1.81E+09 2.29E-03 1.05E-10
Mn-54 8.55E-01 4.53E+04 4.53E+04 5.71E-08 6.21E-12
Fe-55 2.70E+00 4.27E+10 4.27E+10 5.39E-02 1.56E-05
Ni-59 7.50E+04 5.05E+06 5.05E+06 6.38E-06 4.70E-11
Co-60 5.27E+00 1.42E+10 1.42E+10 1.80E-02 1.56E-05
Ni-63 9.60E+01 5.83E+08 5.83E+08 7.36E-04 1.29E-08
Sr-90 2.91E+01 3.50E+06 3.50E+06 4.42E-06 2.80E-11
Nb-94 2.03E+04 6.34E+05 6.34E+05 8.02E-07 7.26E-11
Tc-99 2.13E+05 1.55E+03 1.55E+03 1.96E-09 3.03E-14
I-129 1.57E+07 6.73E+03 6.73E+03 8.51E-09 1.44E-11
Cs-134 2.06E+00 8.80E+07 8.80E+07 1.11E-04 1.74E-08
Cs-137 3.00E+01 3.75E+06 3.75E+06 4.74E-06 5.09E-10
Eu-152 1.33E+01 4.14E+10 4.14E+10 5.23E-02 8.56E-06
Eu-154 8.80E+00 2.33E+09 2.33E+09 2.94E-03 6.88E-07
全α
(Pu-239と設定した。)
2.41E+04 1.23E+06 1.23E+06 1.55E-06 2.10E-08
合計(輸送物1基あたり) 4E-05
(瞬時放出)
参考:2E-08
(10年で全溶)
合計(輸送物18基を積載した運搬船1隻あたり) 8E-04
(瞬時放出)
参考:3E-07
(10年で全溶)
※全量が瞬時に溶解することを想定した結果である。
※本評価では、「輸送容器によるバリア効果」、「海流による拡散」および「スキャベジングによる沈降」を考慮していない。
 
(4)黒鉛
 黒鉛の評価結果を表3.2.3-4に示す。
 
表3.2.3-4 環境影響評価結果(黒鉛)
核種名 半減期
(y)
放射能量
[Bq]
放出率
[Bq/day]
海洋中濃度
Bq/m3
被ばく線量
mSv/y
H-3 1.23E+01 4.73E+11 6.57E+04 8.07E-07 1.38E-15
C-14 5.73E+03 1.27E+12 1.77E+05 2.21E-06 2.24E-09
Cl-36 3.01E+05 6.46E+09 8.97E+02 1.12E-08 4.94E-17
Ca-41 1.40E+05 2.18E+09 3.03E+02 3.79E-09 1.73E-16
Mn-54 8.55E-01 7.82E+05 1.09E-01 1.19E-12 1.30E-16
Fe-55 2.70E+00 1.46E+11 2.02E+04 2.38E-07 6.89E-11
Ni-59 7.50E+04 2.91E+09 4.04E+02 5.05E-09 3.72E-14
Co-60 5.27E+00 3.00E+11 4.17E+04 5.03E-07 4.37E-10
Ni-63 9.60E+01 4.55E+11 6.32E+04 7.87E-07 1.38E-11
Sr-90 2.91E+01 1.18E+08 1.64E+01 2.04E-10 1.29E-15
Nb-94 2.03E+04 6.46E+06 8.97E-01 1.12E-11 1.01E-15
Tc-99 2.13E+05 2.00E+05 2.78E-02 3.47E-13 5.35E-18
I-129 1.57E+07 2.09E+02 2.91E-05 3.63E-16 6.15E-19
Cs-134 2.06E+00 3.82E+07 5.31E+00 6.17E-11 9.68E-15
Cs-137 3.00E+01 3.64E+08 5.05E+01 6.27E-10 6.72E-14
Eu-152 1.33E+01 7.73E+05 1.07E-01 1.32E-12 2.16E-16
Eu-154 8.80E+00 2.18E+09 3.03E+02 3.70E-09 8.65E-13
全α
(Pu-239と設定した。)
2.41E+04 8.28E+07 1.15E+01 1.44E-10 1.94E-12
合計(輸送物1基あたり) 3E-09
合計(輸送物18基を積載した運搬船1隻あたり) 5E-08
※本評価では、「輸送容器によるバリア効果」、「海流による拡散」および「スキャベジングによる沈降」を考慮していない。
 
(5)廃液系汚染金属
 廃液系汚染金属の評価結果を表3.2.3-5に示す。
 
表3.2.3-5 環境影響評価結果(廃液系汚染金属)
核種名 半減期
(y)
放射能量
[Bq]
放出率
[Bq/day]
海洋中濃度
Bq/m3
被ばく線量
mSv/y
H-3 1.23E+01 1.27E+07 1.27E+07 1.61E-05 2.75E-14
C-14 5.73E+03 5.33E+06 5.33E+06 6.73E-06 6.84E-09
Cl-36 3.01E+05 1.91E+04 1.91E+04 2.41E-08 1.06E-16
Ca-41 1.40E+05 4.06E+04 4.06E+04 5.12E-08 2.35E-15
Mn-54 8.55E-01 1.59E+01 1.59E+01 2.00E-11 2.18E-15
Fe-55 2.70E+00 4.21E+06 4.21E+06 5.32E-06 1.54E-09
Ni-59 7.50E+04 7.71E+04 7.71E+04 9.75E-08 7.17E-13
Co-60 5.27E+00 1.19E+07 1.19E+07 1.51E-05 1.31E-08
Ni-63 9.60E+01 1.27E+07 1.27E+07 1.61E-05 2.82E-10
Sr-90 2.91E+01 2.07E+09 2.07E+09 2.61E-03 1.66E-08
Nb-94 2.03E+04 5.65E+03 5.65E+03 7.13E-09 6.46E-13
Tc-99 2.13E+05 5.88E+05 5.88E+05 7.44E-07 1.15E-11
I-129 1.57E+07 1.35E+03 1.35E+03 1.71E-09 2.89E-12
Cs-134 2.06E+00 1.59E+07 1.59E+07 2.01E-05 3.14E-09
Cs-137 3.00E+01 3.02E+09 3.02E+09 3.82E-03 4.09E-07
Eu-152 1.33E+01 4.45E+05 4.45E+05 5.63E-07 9.20E-11
Eu-154 8.80E+00 2.86E+07 2.86E+07 3.62E-05 8.45E-09
全α
(Pu-239と設定した。)
2.41E+04 1.11E+08 1.11E+08 1.41E-04 1.90E-06
合計(輸送物1基あたり) 2.E-06
合計(輸送物18基を積載した運搬船1隻あたり) 4.E-05
※全量が瞬時に溶解することを想定した結果である。
※本評価では、「輸送容器によるバリア効果」、「海流による拡散」および「スキャベジングによる沈降」を考慮していない。
 
3.2.4 結論
 東海発電所解体に伴う輸送物中の主な収納物は、放射化汚染炭素鋼、放射化汚染ステンレス鋼、放射化汚染コンクリート、黒鉛および廃液系汚染金属であり、水深200mにおける海没時環境影響評価において、いずれの輸送物1基に対しても、個人被ばく線量は、ICRP勧告による公衆被ばくの実効線量限度(1mSv/年)を十分に下回ることが分かった。また1隻あたり輸送物18基を運送するとした場合、その全量に対して評価をおこなっても最大値は放射化汚染コンクリート(瞬時放出の場合)の8E-04mSv/年であり、個人被ばく線量は、ICRP勧告による公衆被ばくの実効線量限度(1mSv/年)を十分に下回る。
 なお、本評価は、「輸送容器によるバリア効果」、「海流による拡散」および「スキャベジングによる沈降」を考慮していないこと等、既存の環境影響評価よりも保守側の設定である。
 
資料
●財団法人日本造船研究協会、「新燃料の海上輸送における安全性評価に関する調査研究(平成13年度報告書)」
●財団法人電力中央研究所、「放射性廃棄物の安全輸送基準に関する調査研究(船舶が最悪状態に至った場合に想定される危険性の評価について)その2 放射性廃棄物の海上輸送時の安全評価」、平成63年2月
●科学技術庁、「核燃料物質輸送における輸送物海没時の緊急時対策に関する調査」、昭和59年度
●IAEA Technical Reposts Series No.247, "Sediment K and concentration factors for radionuclides in the marine environment", IAEA-TRS-247,1985
●ICRP, "Age-dependent Doses to Members of the Public from Intake of Radionuclides: Part 5 Compilation of Ingestion and Inhalation Dose Coefficients", ICRP Pub.72, 1996
●腐食防食協会編、「材料環境学入門」、丸善株式会社
●三原他、「低酸素かつアルカリ条件における炭素鋼、ステンレス鋼及びジルカロイからのガス発生率及び腐食速度の評価」、サイクル機構技法No.15, 2002.6
 
 「原子燃料物質の海上輸送の安全性に関する調査検討会(RR-R3)」は、東京工業大学原子炉工学研究所が主催する「未処理・大型解体廃棄物の安全輸送に関する研究会」において実施した研究の成果を基に調査研究を実施した。
 本年度は、はじめに解体廃棄物輸送の法規制について、
(1)ガス炉、沸騰水型軽水炉(BWR)と加圧水型軽水炉(PWR)の廃止措置により発生する運転による放射性廃棄物と解体廃棄物の仕様と輸送物の仕様
(2)東海ガス炉の解体計画と解体廃棄物の輸送計画
(3)IAEA輸送規則、IMO/IMDG/INFコードと我が国の規則体系と輸送関連法規、および、それらの規則に対する課題の摘出と対応策、
の調査研究を実施した。次に、次年度実施する運搬船の構造・設備要件の基準策定の基盤として、解体廃棄物輸送時の事故シナリオの作成と環境影響評価について、
(4)解体廃棄物の輸送時の様態と衝突、火災と海没の事故シナリオ、シナリオに基づく確率論的な安全評価、および、輸送物の健全性の検討
(5)解体廃棄物の輸送時の環境影響評価、
の調査研究を実施した。
 本報告書は、平成16年度に実施した上記の調査研究成果をまとめたものであり、平成17年度の原子炉解体廃棄物運搬船の構造・設備要件を策定するための基盤を整備したものである。
 本報告書をまとめるに当たり、執筆いただいた各委員及び積極的に討議に参加された各委員に感謝の意を表する次第である。併せて、「未処理・大型解体廃棄物の安全輸送に関する研究会」に参画していただき、検討資料を作成したり討議へ参画していただいた各委員に感謝の意を表する次第である。
 
注)本報告書は、電力共通研究「低レベル放射性廃棄物の合理的な輸送に関する研究」の成果を一部含む。







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