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表4.6-1 船体保全の方針の記入内容例
 
 OBM管理要領書は、本船でOBM行うための作業スケジュール、作業手順、状態の判断方法、記録、会社への報告手順等を記述したものである。以下に記述する内容例を示す。
 
(1)保全対象部
・上甲板、ハッチ、Cargo Tank、Ballast Tank
(2)点検インターバル
(3)作業方法
(4)コンディション評価の基準
・発錆率、アノード衰耗率等
(5)記録内容
(6)コンピュータシステムの使用説明書
(7)SIとの打ち合わせ内容、時期
(8)SIへの報告事項
 
 点検要領書は本船特有の構造からくる重点点検箇所とその対応方法について記したものである。以下に点検要領書の例を示す。
 
(1)目的
(2)定義と用語
(3)船体、タンク構造
(4)損傷事例
・写真、図で説明。
(5)損傷と原因
(6)テンポラリな点検方法
(7)修理方法
(8)最終的点検方法、検査計画
(9)検査データの分析
(10)コンディションの評価方法
(11)船級のガイド等参考図書
 
 記録書は大手運航会社1社、船舶管理会社2社からいただいた。第3章のヒアリング結果から他社も同様な記録を採用している。
 
 表5.2-1に船体保全関係の記録書簿例を示す。各保全作業が発生すると、その結果が各記録簿に記録される。表中において、参考資料欄に記述があるのは資料編に参考資料を載せていることを示す。また記録簿の収集有無欄での○印は、当該記録簿(または、記録項目等)を資料編に載せていることを示す。
 概要は以下の通りである。
(1)OBM(Onboard Maintenance)関係
 記録は計画時、作業実施時、SIへの報告時に作成される。一般にコンピュータシステムを利用している。
(1)計画時の記録
・乗組員の保全担当者は、次ぎの航海の保全計画を行うため、コンピュータシステムを立ち上げる。
・コンピュータシステムのOBM Maintenance Schedule & Record画面で本船の担当者は保全インターバル及び年初に計画したスケジュールから、今航海の予定スケジュールを確認する。
・確認後、予定作業にマークする。
・日本着時にSIに次航海の作業計画を提出する。
(2)今航海の作業の記録
・コンピュータシステムを立ち上げ、OBM Maintenance Schedule & Record画面で保全を実施した作業に実施日を入力する。これにより、実施済みのマークがシステムに記録される。
・実際の保全内容の詳細をMaintenance Recordに記録する。
 Maintenance Recordには対象部位(バラストタンク等)、航海No. 、作業日、人工(人×時間)、作業方法、対象部位の状況を記録する。
・損傷が有り修理した場合はFailure Reportに記録する。
 Failure Reportには対象部位(バラストタンク等)、航海No. 、作業日、損傷状況、推定原因、人工(人×時間)、作業方法、再発防止の提案、陸上での修理の必要性等を記録する。
・Abnormal Event Reportは損傷があった時は勿論であるが、航海中、何かに衝突した時の異音・振動等の異常を感じた時にも推定の報告を行う。
 航海No. 、異常発生日、本船の位置、状況、処置等を記入し、会社へ報告する。
(3)内地着時
・乗組員の保全担当者はMaintenance Report、Failure Report、Abnormal Event ReportをSIに提出する。
 乗組員の保全担当者はMaintenance Reportにて、今航海の作業結果をSIに報告し、承認してもらう。また、次航の作業予定を承認してもらう。
 
(2)船級検査関係
 船級関係では船級証書、Class Survey Status、Survey Record、Condition Evaluation Record、板厚計測記録報告書がある。
(3)オイルメジャー等の検査
 船級以外の検査にオイルメジャー、CDI検査機関、用船者による検査があり、これ等の記録が残されている。
(4)入渠工事
 入渠工事では入渠時の工程記録、入渠工事完工書、入渠工事報告(本船の保全担当者が作成)がある。
(5)外注工事完工書
 沖修理業者が実施した作業の完工書である。
(6)SIの入渠工事結果報告書
 SIが総括として記録するものでRecord of Survey、Dry Docking Repair Report、Report of Coating for Under Water & Boot Top、Pending Works for Next Dry Docking、Items Related with Vessel's Design、Note (Hull) 及び入渠工事報告書等がある。
 
 表5.2-2にその他の関係記録を示す。
 これ等は船体保全とは直接関係ないが、船体の使われ方の状況を知る記録である。
 以下に概要を示す。
(1)Loading Plan
 本船では貨物積載計画で船体強度を考慮したLoading及びBallastingを行う。その時の記録である。損傷が起こった時に積載方法が原因かどうかの判断に利用できる。
(2)海難報告書
 船員法上、衝突、座礁等の海難が発生した時に行政へ提出する必要がある。その時の記録であり、本船の船体損傷度合い、修理状況が判断できる。
(3)Survey Report(損傷鑑定記録)
 衝突で船体等に損害を生じた場合の鑑定記録である。本船の船体損傷度合い、修理状況が判断できる。
(4)日誌
 重要な保全作業、損傷が起きた場合、本船の航海上の位置、異常部位、損傷状況が記録される。本船の船体損傷の経緯、度合い、修理状況が判断できる。







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