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4.5 船体保全管理マニュアルの例
(1)オーナから船舶管理会社への船体保全方針例
 表4.5-1にオーナから船舶管理会社への船体保全方針の内容例を示す。
 概要は以下である。
(1)費用をミニマムにして、世界的に競争できる船質の維持を指示している。
(2)特に船体の維持に重要なのはペイントである。特に費用もかかることから、塗装に関して指示している。
(3)検査に関しては、その手順、記録、オーナへの報告事項を指示している。
(4)入渠工事に関しては、本船の不稼働になること、費用がかかること、船質維持に重要であること、受検があることから、手順について細かく指示している。
(5)オーナへの報告事項を指示している。報告は入渠関係、Class Survey Status、Survey Report、予算の進捗状況、定期的な本船コンディション等である。
(6)船種別の保全計画では、船体、Ballast Tank、Cargo Hold等の保全方法を概略であるが指示している。
 
表4.5-1 オーナから船舶管理会社への船体保全方針例
項目 内容
1. 目的 合理的な船質の維持
2. 保船の基本方針 (1)保船の責任者 (2)船舶資産の維持の重要性 (3)競争力の維持について
3. 保船計画 (1)船舶を長期維持するための方針 (2)塗装の重要性
4. 保体保全に関する基準計画 (1)船体没水部の計画 (2)船体乾舷部の計画 (3)バラストタンクの計画
5. ペイント (1)ペイントの種類と特性
6. 検査の手順 (1)定期検査 (2)臨時検査
7. 記録の管理 (1)OBMの記録 (2)Dockの記録 (3)受検の記録
8. 入渠工事の手順 (1)入渠時期の決定 (2)造船所の選定 (3)見積の手順
(4)造船所との確認事項 (5)船級規則等の遵守規則の確認 (6)責任関係
(7)工事完了時の確認事項
9. 報告(オーナへ) (1)入渠関係について (2)Class Survey Status (3)Survey Report
(4)証書 (5)改造工事内容 (6)塗装報告
10. 船種別の保船計画方針 (1)タンカー (2)ケミカルタンカー (3)石炭運搬船
(4)チップ船 (5)自動車船 (6)コンテナ船
 
(2)ケミカルタンカーの検査方針例
 表4.5-2にオーナから船舶管理会社へのケミカルタンカー船体保全方針例を示す。保全方針と点検要領書を兼ね備えているものである。当資料は関係船舶管理会社へも提供されている。
 概要は以下である。
(1)目的では、原油タンカーの構造では色々のマニュアルがあるが、ケミカルタンカーに関してはないことから作成し、事故・損傷防止のために作成したとしている。
(2)定義と用語ではケミカルタンカーの構造を説明。
(3)コルゲート隔壁では、その特殊性を説明。
(4)クラック発生事例では、運航船全体の損傷発生例を具体的に紹介。
(5)構造上の応力集中箇所では、船の応力集中箇所を説明。それと実際の損傷とを関連付けて分析。
(6)構造検査では、特殊構造の検査計画、実施の仕方、報告内容、分析の重要性、コーティングの評価方法について説明。
(7)タンク構造物の破損事例では、破損の写真・図を利用し、その修理方法、原因について説明。
 
表4.5-2 ケミカルタンカーの検査方針例
項目 内容
1. 目的 (1)事故を減らすため。
2. 定義と用語 (1)船体構造と用語 (2)原油タンカーの定義 (3)ケミカルタンカーの定義
3. コルゲート隔壁 (1)Bulkheadの構造
4. 当社のクラック発生事例 (1)クラック発生状況 (2)各損傷と原因、修理方法
5. 構造上の応力集中箇所 (1)応力集中箇所の説明
6. 構造検査 (1)検査の計画 (2)検査の実施 (3)報告
(4)検査データの分析 (5)コーティングシステムの評価方法
7. タンク内構造物の破損事例 (1)損傷図 (2)修理方法 (3)原因分析
 
(3)船体点検要領書
 船体点検要領書では、各船種毎に特徴的な損傷例を図で紹介し、その原因を推定しているものが多い。
 表4.2-1中、番号6のタンカータンク内点検要領書ではタンクを13の構造部に分け、船殻部材としての重要度、点検重要度を数値で与え説明している。
 表4.2-1の番号5〜10の船体点検要領書ではNK船級の船体関係点検ガイド、造船所の技術資料、自社運航・管理船の損傷事例から点検要領をまとめている。
(4)OBM管理要領書
 表4.2-1の番号11のOBM管理要領書では、船上保守管理コンピュータシステムを利用した保全管理手順を説明している。
 本コンピュータシステムでは、航海No. を入力すると当航海で実施すべき作業項目及び内容が出力され、当航海の保全計画の作成が簡単にできるようになっている。
 また、保全作業内容とその作業の保全インターバルが表示され、実施した日を入力するようになっている。最終的には、保全実施日が報告書として出力され、担当SIに報告され、進捗管理がなされる。
 本コンピュータシステムは造船系のソフトメーカが開発・販売しているが、多くの管理会社が利用している。また、同じようなシステムが他社から販売され利用されている。
 
 SMSマニュアルはISMコードの規格であるので現状通りとする。
 
 船体保全管理方針書は、保全管理を行うための一般的な方針を記述するためのものである。
 表4.6-1に船体保全管理方針書の案を示す。
 特記事項は以下である。
(1)陸上SI及び海上の保全担当者の役割、権限を明記すること。
(2)保全の手順を明記すること。
・OBM、入渠工事、外注沖修理、検査別に。
(3)船級検査において、定期検査、ESP検査、CAS検査、CAP検査の予定を確実に示すこと。
 また、オイルメジャー検船等の船級以外の検査に関しても方針を示すこと。
(4)船体没水部、上甲板、Cargo Hold、Ballast Tankの管理方針を示すこと。
 施行者、点検インターバル、腐食の判断、アノード取替え基準、塗装の基準、発錆率の基準、サウンドブラストを実施する基準等の方針を明記。
(5)入渠工事は船体保全において重要である。陸上SI、海上担当者へ確実な手順を示すこと。
(6)OBMでは計画の作成が重要である。本船の安全を重要視した計画をSIと本船担当者で計画すること。
(7)OBM、入渠工事、検査の記録に関して各記録Formを提示し、確実にファイリングされ記録が管理されること。
(8)本船からSIへの報告内容、船舶管理会社からオーナへの報告内容を示すこと。







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