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3.3 船種毎の船体保全の現状
3.3.1 原油タンカーの船体保全の現状
(1)船級規則による検査、OBMによる点検・メンテ方法及び記録
(1)最低、船級規則に則った管理を実施している。
(2)タンカーもOBMで積極的に保全を行っている。
(3)オイルメジャーによる検査、荷役ターミナルの担当者による検査、用船者による検査があり記録は厳しく管理されている。
(2)保全のタイムシーケンス(OBM、検査、ESP(Enhanced Survey Program))
(1)各社ともOBMを積極的に実施。年初に計画されたPlanに従い整備を行い、記録を作成し、SI(Superintendent: 陸上要員で本船管理の全責任者)に提出。SIは進捗状況を確認。一般に毎航海、SIは訪船しOBMの進捗状況、船体保全状況を点検している。
(2)入渠は5年に2回。
(3)船体板厚計測
・定検時には板厚計測を行う。5年過ぎから板厚計測を行っているケースがある。
・一般に板厚計測はDock前の停泊時に行う。計測は船級検査官の了解を得て実施。実施者は船級からの免許がある計測業者が実施。
・板厚計測を入渠の半年前から入念に実施している会社がある。
(4)オイルメジャー要請の検査を受け、指摘されたことは確実に対応している。
(5)Ballast Tank
・一般にOBMにて3〜6ヶ月で点検を一巡。SIが1年に1回Ballast Tankを点検することを規定している会社もある。
・会社によっては、Ballast Tankの整備は入渠の1年前から整備、点検を行い、不具合を早期に見つけるようにしている。
(6)Cargo Tank
・一般にDock前の航海時にOBMにてゴムボートを浮かべ全タンク入念な点検を実施。入渠時も点検。
・会社によっては、Cargo Tankの整備は入渠の1年前から整備、点検を行い、Ballast Tankと同様、不具合を早期に見つけるようにしている。
・会社によってはHold Deck裏の錆打ち、塗装も本船作業としているところがある。また、Holdを10年でサウンドブラストを打つところがある。
(3)入渠地
(1)シンガポール及びドバイである。これらは航路上にあるからである。
(4)海外での船体関係PSC状況
(1)一般に証書と安全設備の点検が主である。タンカーは危険物を積載しているため、荷役中は船体の検査は難しく、検査の対象部が限られるようである。
(2)Survey reportにRecommendが残っているかをチェックされ、それとの関係で船体を点検されたケースがある。
(5)メジャー検船等
(1)Tankerは全てオイルメジャー検船を受けている。
(2)用船者検査がある。
(6)整備に参考とするガイダンス
(1)NK船級等の船級ガイダンス。
・NK船級船主/オペレータの為の船級維持の手引き
・タンカー構造強度に関するガイドライン
・Guidance For The ClassNK Condition Assessment Program
・Thickness Measurement and Close-Up Survey of Hull Structural Members(船体構造部材の板厚計測及び精密検査)
・Guidance for Corrosion Protection System of Hull Structures For Water Ballast Tanks and Cargo Oil Tanks (NK Class)。
(2)Guidelines for the Inspection and Maintenance of Double Hull Tanker Structures (Tanker Structure Co-operative Forum)。
(3)Guidance Manual For Tanker Structures (Tanker Structure Co-operative Forum)。
(4)係留設備に関する指針(OCIMF発行、日本タンカー協会翻訳)。
(5)オイルタンカーとターミナルに関する国際安全指針「ISGOTT-International Safety Guide for Oil Tankers & Terminals-を日本タンカー協会が翻訳」。
(6)造船所の技術資料。
(7)クラック、損傷の状況
(1)Single Hull Horizontal Girder クラック。
(2)Single Hull Trans. Bulkhead 腐食破孔。
(3)Single Hull Trans. Frame Stiffener 腐食。
(4)Single Hull Trans 上Deck Plateの腐食
(5)Single & Double Hull Cargo Hold Deck Plate 腐食。
(6)Tank Bottom Pitting Corrosion。
(7)Ballast Tank Longi. Bulkhead Deck Plateの腐食。衰耗部切替え。
(8)Ballast Tank Trans. Strutのクラック。
(9)Cargo Tank Trans. Strutのクラック。
(8)タンク内部(貨物、バラストタンク)の塗装に関して
(1)Cargo Tank
・Double Hull新造船のBottom Plateは塗装。
(2)Ballast Tank
・タールエポキシ塗装
 
(1)船級規則による検査、OBMによる点検・メンテ方法、記録
(1)原油タンカーと同じ
(2)保全のタイムシーケンス OBM、検査、ESP等
(1)船が小さいこと、Cargo Holdのアクセスが簡単なことから、こまめに点検ができ、原油タンカーと異なり入渠前に一括して行う大掛かりな点検はない。板厚計測は入渠中にやるとのこと。
(2)Cargo Holdの点検は乗組員が毎航海実施。
(3)入渠地
(1)国内である。
(4)海外での船体関係PSC状況
(1)原油タンカーと同じ。
(5)メジャー検船等
(1)メジャー検船の重要性は原油タンカーと同じ。
(2)原油タンカーのオイルメジャー検査とは別にケミカル関係のメジャーの検査機構CDI(Chemical Distribution Institute)の検査を受けている。
(3)用船者の検船がある。
(6)整備に参考とするガイダンス
(1)原油タンカーと同じ。
(7)クラック、損傷の状況
(1)コルゲートコーナー部とビルジホッパー部の溶接部にクラック。
(2)横隔壁とStool Shelf Plate溶接部のクラック。
(3)横隔壁及び縦通隔壁のコーナ部とStool Shelf Plateとの接合部のクラック。
(4)Cargo Tank 天井の腐食。
(8)タンク内部(貨物、バラストタンク)の塗装に関して
(1)Cargo Tankはステンレスである。
 
(1)船級ルールによる検査、OBMによる点検・メンテ方法及び記録。
(1)原油タンカーと同じ。
(2)保全のタイムシーケンス、OBM、検査、ESPに関して
(1)板厚計測
・中間検査、定期検査の時また両方で行う場合がある。
・入渠1年前から板厚計測、タンクの点検を行っていて、不具合を早期に発見しDockで修理を行う会社がある。
(2)ESP
・現在のESPでは10年からの船が対象であるが、それでは遅いので5年過ぎから重要部材の板厚計測及びClose Up Surveyを実施し、悪いところを早期に見つけ修理している会社と規則通りに実施している会社がある。
(3)Ballast Tank
・OBM点検は半年に1巡するのが一般的。
(4)Cargo Tank
・一般にCargo Tankは毎航海荷役時に点検。用船者はできるだけバラスト航海を少なくするように配船しており、なかなかCargo Tankが空にならない。Cargo Tankは荷役終了で空になった時、荷役中などに点検するのが一般的。他船から損傷の情報があれば、航海中に点検する場合がある。
・長期のバラスト航海があれば錆打ち・塗装を実施。
(3)入渠地
(1)船が荷揚げしFreeになる場所近くの造船所。ヨーロッパを含めて全世界で実施。
(2)サンドブラストを打つ場合はベトナム、中国が多い。
(4)海外での船体関係PSC状況
(1)一般に証書、安全設備の検査が多いが、カナダ及び豪州では厳しい検査を経験している会社もある。例えば、甲板及びデッキの錆などのチェック、Holdのハッチを開け、内部デッキまでチェックの経験もある。PSCが船級の領域まで入ってくることがあり、その場合、PSCと船級とで話し合ってもらって対処しているとのこと。
(2)NKのPSCの検査内容の実績を参照している会社が多い。
(5)メジャー検船等
(1)用船者基準の検船がある。
(6)整備に参考とするガイダンス
(1)NKの船級ガイダンスを利用している。
・ばら積貨物船の点検ガイダンス 1993年 NK会誌 222号
・NK等の船級ガイダンス、NK 船主/オペレータの為の船級維持の手引き
・Guidance For The ClassNK Condition Assessment Program
・Thickness Measurement and Close-Up Survey of Hull Structural Members(船体構造部材の板厚計測及び精密検査)
(2)Guidelines for Surveys, Assessment and Repair of Hull Structure (By IACS)。
(3)NKのPSCの検査内容の実績。
(4)造船所技術資料。
(7)クラック、損傷の状況(過去、現在、注意点)は。
(1)Ballast Tank Side Longi.のクラック。
(2)Cargo Hold Bulk Head近傍のFrameにクラック。
(3)No.3、No.4、No.5 Midship Cargo Tank Longiのクラック。
(4)Cargo Hold Bulk Head Lower Stool & Upper Stool クラック。
(5)Hatch Coming Corner クラック。
(6)Trans.のStrutのクラック。
(7)Cargo Hold の下部Stool取り合い部クラック。
(8)Fore Peak Tank 内のStiffenerのクラック。
(9)Cargo HoldのFrameクラック。
(10)Double BottomのBallast Tankと燃料タンクのLongi.にクラック。
(8)タンク内部(貨物、バラストタンク)の塗装に関して
(1)Cargo Tank。
・Cargo Tankは塗装している。特に米国でGrainとか穀物を積む場合、FDA(Food & Drug Administration)の検査がある。キレイでなければ積めない。
・Holdは塗装しているが、カーゴによる損傷があり、5年位でサンドブラストの上再塗装。
(2)Ballast Tank。
・Ballast Tankは塗装(タールエポキシ)。
・当然乗組員による塗装も行っている。乾燥ができない、水洗いができない、運航スケジュールがタイト等で塗装ができない場合がある。タンクの錆の状況でアノードを追加している。
・錆が多い場合、次ぎのDockでサンドブラストを行う。
 
 前述の通りであるが、全社がISMコードで管理され、SMSマニュアルでコントロールされている。船体保全マニュアル及び記録に関しては以下の通り。
(1)船体保全に関するマニュアルはSMSマニュアルとそれで管理される何らかの船体保全マニュアル(保全指針、点検要領書、点検インターバル書)がある。
(2)記録に関して。
・ISMコードでは保全の記録管理を義務付けている。
・OBMに関する書類及び記録は全般的に同じである。ファイリング管理も規則通りにやられている。
(3)検査に関しての記録
 船級のSurvey Record、板厚計測の記録等で、基本的には船級からも管理に関して厳しい指導がある。
(4)入渠工事、沖修理業者(Runningでの保全)の記録内容及び管理方法は他社と同じである。
 
(1)日本の外航のオペレータ、船舶管理会社はグローバルスタンダードのISMコードに準拠した管理システムを持っており、管理方法はほぼ同じである。また、マニュアルに関してもほぼ同様なマニュアルを備えている。
 記録に関しても各社は同じような記録、報告書を備え、管理されている。
 管理状況のチェックには船級による監査があり、厳正に維持管理されている。
(2)500隻以上運航のオペレータは世界の海運の中で安全管理、品質管理面でも厳しい競争に曝されている。技術部門、安全管理部門があり、保全に関する基準を持っていて定期的に船舶管理会社及びチャータした船舶の検査を行っている。また、NK船級の技術情報、自社管理船のトラブル情報から技術資料をまとめ、管理会社を指導している。
(3)船舶の管理年数を決めている会社とそうではない会社がある。一般的には船種により何らかの目標管理年数があると思われる。
(4)船体の状況を良好に維持するにはOBMが重要との認識であり、航海中に徹底的に整備を行っている。
(5)船体整備において、船級規則の要求基準より厳しく点検を行う管理会社と船級規則に合わせた管理を行っている会社がある。
(6)船体保全マニュアルには、NK船級のガイダンス、OCIMF等、各業界団体のガイダンスを利用している。このように多くの船の状況からまとめたガイダンスは実用的で利用されている。
 NKのガイダンスでは、「船主/オペレータの為の船級維持の手引き」「Thickness Measurement and Close-Up Survey of Hull Structural Members(船体構造部材の板厚計測及び精密検査)」が共通的に利用されている。
(7)船体の損傷では、各船種毎に同様の損傷が発生している。大きくなる前に乗組員に発見され、Dockで適切に修理されている。船舶管理会社は乗組員による早期発見が重要という認識である。
 船体を良い状況に維持するには、的確な船体情報を得て、損傷が大きくなる前に対処することであるとの認識である。船舶は90%以上が洋上であり、これら保全作業を行うのは乗組員であり、乗組員へ的確な船体管理情報を与えること、また乗組員の教育は重要であるとの意見が多い。







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